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第二章 もう絶対に離しませんからね、先輩!
強行突破
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「ここか……」
私達は遂に識英天衣の居る支社へと辿り着いた。
十五階建ての高層ビルだ。
支社なのに凄いな……どんだけ儲かってんだ……。
「今からここを壊すんだな!? 燃えてきたぜ! さっさと中にお邪魔しようぜ!」
「ああ!」
おもちゃ売り場に来た子供のようにはしゃぐ漢野。
私は本当楽しそうだなコイツと思いながらも支社の中へと足を踏み入れた。
エントランスはだだっ広く、受付に綺麗なお姉さんが居て少し奥にエレベーターと階段がありそこら中にガードマンが配置されていた。
ざっと二十人位居る。多分まだ居そうな気がする。
黒萌の言ってた通り識英天衣の警戒心はもはや病気だ。
普通こんな取引先とかも呼ぶような所に直接ガードマン二十人も置く?
しかもこの人達皆思いっきり対特色者用レーザーガン持ってるし。
これどうしよう……。
漢野もこれは流石に予想外だったのか目を丸くしている。
私は困惑しながらも受付のお姉さんに聞いた。
「あの……すみません……識英社長に用があるのですが……」
「はい、アポはお取りになっていますか?」
「へ?」
一瞬思考が停止したけど、よくよく考えてみれば社長なんだからそりゃアポの一つも要るよね。
マズい。最初の一歩でつまずいた。
私が固まっていると、漢野が私の袖を引っ張って声を潜めて言う。
「おい! 殴り込むんじゃ無かったのか!? 何普通に入ろうとしてんだよ!」
「いや殴るべきなのは社長だけなんだから……出来るだけ社員には手を出したくないんだよ……」
「関係あるか! こういうのは強硬突破のが早いんだよ! 行くぞオラ!」
「ええ……」
漢野は話を止めて意気揚々とガードマンを殴り飛ばした。
「オラァッ!」
「がばっ!?」
ガードマンは漢野の一撃に天井まで吹き飛ばされそこに突き刺さった。
「なっ……! 撃てっ!」
その次の瞬間他のガードマンが漢野に向けて対特色者用レーザーガンを射出した。
対特色者用レーザーガンの威力は戦闘向きのレベル5特色者の破壊力と同等。
普通の特色者なら結構効く威力だ。
しかし漢野はその赤い光線をひらりと躱し残り十九人のガードマン全員を一瞬で片付けた。
恐ろしく速い鳩尾……私でなきゃ見逃がしちゃうね。
それにしても漢野も前戦った時よりかなり強くなってる気がする。筋トレでもしたのかな? いやそれにしては成長が早すぎる気がする。
男子三日会わざれば刮目して見よ、とは言うけどね。
「強い奴が居そうなのは上だな……なあ、ここは二手に分かれようぜ。俺は先に行ってここのボスをぶちのめしてくっからお前はゆっくり仲間を探し出して助けな!」
「それは悪くない作戦だけど……お前間違って私の仲間殴りそうで嫌……」
「……そういやそうだった。俺そいつの顔知らないんだった……どんな奴か教えてくれ」
「ああうん……識英凍牙って奴で水色の髪の毛の真面目そうなイケメンだよ」
「分かった、そいつは殴らないようにするぜ!」
「本当に大丈夫お前? 信じるよ?」
私は漢野の作戦に強く不安を感じつつも頷いた。
まあ切り込み隊長がアホって以外はいい作戦なんだ、うん。
漢野なりに考えてくれているんだろう。一人で暴れたいだけかもしれないが。
「それじゃあお先に行かせてもらうぜ! そりゃあ!」
漢野はそう言ってわざわざ天井を突き破り上の階へと昇っていった。いやエレベーターとか階段使えよ……あいつのアイデンティティなのか?
受付のお姉さん唖然としてるぞ。
私は不思議に思いつつもエレベーターのボタンを押した。
……ボタンが光らない。
私達が侵入したのが分かって停止させたのか。
しょうがない……階段で行こう……。
そうして階段を駆け上って二階に行くと、また対特色者用レーザーガンを構えているガードマンが控えていた。
しかも今度は三十人ぐらい居る。
床に大きな穴が開いてるけどそこは気にしない。
ガードマンの一人が私に気付き銃口を向ける。
「侵入者! 撃て!」
「うおっ!?」
レーザーが一瞬で私に向けて放たれた。私は八重染琥珀を足に掛け回避する。
「なっ……速い……!」
「怯むな! 撃てっ!」
典型的なやられ役の台詞を吐きながら光線を撃つガードマン達。
私は光線を八重染琥珀で躱しながらガードマンの一人を掴み、他のガードマンに投げた。
「おりゃ!」
「「「どわああああああああ!」」」
ガードマンがまるでボウリングのピンのように薙ぎ倒される。
私は更に他のガードマンを掴んでは投げ、掴んでは投げを繰り返した。
「「「ぐわあああああああああ!」」」
ガードマンは全員床に倒れ込んだ。
これで凍牙を探せるな。
二階は一階と同じように広く、机がずらっと並んでいる。よく見たら天井に穴が開いている。あいつよくガードマンにレーザーガン撃たれなかったな……。上手く避けたのかな?
至って普通のオフィスって感じ。人を隠せられる場所は無い。
ここには凍牙は居なさそうだ。
「次は三階だな……」
そうして階段の方に行こうとした時だった。
ふと階段から拍手が聞こえてくる。
パチパチパチ……。
私は新手かと咄嗟に身構えた。
「これだけの数のガードマンを倒すなんてやるじゃない。子供にしては」
「アンタは……!」
階段から下りてきたのは何とこの前凍牙に襲い掛かっていた童顔だった。
「凍牙はどこに居るの?」
「上よ。ちゃんと社長室に居るから安心して帰りなさい」
「ふざけないで……! あんなクズ野郎とあいつが一緒に居て安心出来る訳ないでしょ……! 悪いけど私は帰らない。そこを通らせて貰うよ」
私のその台詞を童顔は鼻で笑った。
「ふんっ、やれるものならやってみなさいよ、クソガキが!」
「はっ、その性格じゃ万年独身でしょうね!」
私はおそらく本人が一番気にしているであろう所を突いた。指輪してないし多分そうだろう。
すると童顔は顔を真っ赤に染めて怒り狂った。
「……クソガキが……! 嬲り殺してやるッ!」
「やってみな独身貴族!」
女の戦いが今、火蓋を切った。
私達は遂に識英天衣の居る支社へと辿り着いた。
十五階建ての高層ビルだ。
支社なのに凄いな……どんだけ儲かってんだ……。
「今からここを壊すんだな!? 燃えてきたぜ! さっさと中にお邪魔しようぜ!」
「ああ!」
おもちゃ売り場に来た子供のようにはしゃぐ漢野。
私は本当楽しそうだなコイツと思いながらも支社の中へと足を踏み入れた。
エントランスはだだっ広く、受付に綺麗なお姉さんが居て少し奥にエレベーターと階段がありそこら中にガードマンが配置されていた。
ざっと二十人位居る。多分まだ居そうな気がする。
黒萌の言ってた通り識英天衣の警戒心はもはや病気だ。
普通こんな取引先とかも呼ぶような所に直接ガードマン二十人も置く?
しかもこの人達皆思いっきり対特色者用レーザーガン持ってるし。
これどうしよう……。
漢野もこれは流石に予想外だったのか目を丸くしている。
私は困惑しながらも受付のお姉さんに聞いた。
「あの……すみません……識英社長に用があるのですが……」
「はい、アポはお取りになっていますか?」
「へ?」
一瞬思考が停止したけど、よくよく考えてみれば社長なんだからそりゃアポの一つも要るよね。
マズい。最初の一歩でつまずいた。
私が固まっていると、漢野が私の袖を引っ張って声を潜めて言う。
「おい! 殴り込むんじゃ無かったのか!? 何普通に入ろうとしてんだよ!」
「いや殴るべきなのは社長だけなんだから……出来るだけ社員には手を出したくないんだよ……」
「関係あるか! こういうのは強硬突破のが早いんだよ! 行くぞオラ!」
「ええ……」
漢野は話を止めて意気揚々とガードマンを殴り飛ばした。
「オラァッ!」
「がばっ!?」
ガードマンは漢野の一撃に天井まで吹き飛ばされそこに突き刺さった。
「なっ……! 撃てっ!」
その次の瞬間他のガードマンが漢野に向けて対特色者用レーザーガンを射出した。
対特色者用レーザーガンの威力は戦闘向きのレベル5特色者の破壊力と同等。
普通の特色者なら結構効く威力だ。
しかし漢野はその赤い光線をひらりと躱し残り十九人のガードマン全員を一瞬で片付けた。
恐ろしく速い鳩尾……私でなきゃ見逃がしちゃうね。
それにしても漢野も前戦った時よりかなり強くなってる気がする。筋トレでもしたのかな? いやそれにしては成長が早すぎる気がする。
男子三日会わざれば刮目して見よ、とは言うけどね。
「強い奴が居そうなのは上だな……なあ、ここは二手に分かれようぜ。俺は先に行ってここのボスをぶちのめしてくっからお前はゆっくり仲間を探し出して助けな!」
「それは悪くない作戦だけど……お前間違って私の仲間殴りそうで嫌……」
「……そういやそうだった。俺そいつの顔知らないんだった……どんな奴か教えてくれ」
「ああうん……識英凍牙って奴で水色の髪の毛の真面目そうなイケメンだよ」
「分かった、そいつは殴らないようにするぜ!」
「本当に大丈夫お前? 信じるよ?」
私は漢野の作戦に強く不安を感じつつも頷いた。
まあ切り込み隊長がアホって以外はいい作戦なんだ、うん。
漢野なりに考えてくれているんだろう。一人で暴れたいだけかもしれないが。
「それじゃあお先に行かせてもらうぜ! そりゃあ!」
漢野はそう言ってわざわざ天井を突き破り上の階へと昇っていった。いやエレベーターとか階段使えよ……あいつのアイデンティティなのか?
受付のお姉さん唖然としてるぞ。
私は不思議に思いつつもエレベーターのボタンを押した。
……ボタンが光らない。
私達が侵入したのが分かって停止させたのか。
しょうがない……階段で行こう……。
そうして階段を駆け上って二階に行くと、また対特色者用レーザーガンを構えているガードマンが控えていた。
しかも今度は三十人ぐらい居る。
床に大きな穴が開いてるけどそこは気にしない。
ガードマンの一人が私に気付き銃口を向ける。
「侵入者! 撃て!」
「うおっ!?」
レーザーが一瞬で私に向けて放たれた。私は八重染琥珀を足に掛け回避する。
「なっ……速い……!」
「怯むな! 撃てっ!」
典型的なやられ役の台詞を吐きながら光線を撃つガードマン達。
私は光線を八重染琥珀で躱しながらガードマンの一人を掴み、他のガードマンに投げた。
「おりゃ!」
「「「どわああああああああ!」」」
ガードマンがまるでボウリングのピンのように薙ぎ倒される。
私は更に他のガードマンを掴んでは投げ、掴んでは投げを繰り返した。
「「「ぐわあああああああああ!」」」
ガードマンは全員床に倒れ込んだ。
これで凍牙を探せるな。
二階は一階と同じように広く、机がずらっと並んでいる。よく見たら天井に穴が開いている。あいつよくガードマンにレーザーガン撃たれなかったな……。上手く避けたのかな?
至って普通のオフィスって感じ。人を隠せられる場所は無い。
ここには凍牙は居なさそうだ。
「次は三階だな……」
そうして階段の方に行こうとした時だった。
ふと階段から拍手が聞こえてくる。
パチパチパチ……。
私は新手かと咄嗟に身構えた。
「これだけの数のガードマンを倒すなんてやるじゃない。子供にしては」
「アンタは……!」
階段から下りてきたのは何とこの前凍牙に襲い掛かっていた童顔だった。
「凍牙はどこに居るの?」
「上よ。ちゃんと社長室に居るから安心して帰りなさい」
「ふざけないで……! あんなクズ野郎とあいつが一緒に居て安心出来る訳ないでしょ……! 悪いけど私は帰らない。そこを通らせて貰うよ」
私のその台詞を童顔は鼻で笑った。
「ふんっ、やれるものならやってみなさいよ、クソガキが!」
「はっ、その性格じゃ万年独身でしょうね!」
私はおそらく本人が一番気にしているであろう所を突いた。指輪してないし多分そうだろう。
すると童顔は顔を真っ赤に染めて怒り狂った。
「……クソガキが……! 嬲り殺してやるッ!」
「やってみな独身貴族!」
女の戦いが今、火蓋を切った。
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