麗紗ちゃんは最狂メンヘラ

吉野かぼす

文字の大きさ
74 / 211
第三章 ちゃんと私を見てくださいよ先輩!

海でーとその3

しおりを挟む
 あ……確かに……。
 耕一郎も私達のいる所からだいぶ離れた所で泳いでいる。

 そしてはぁはぁと息を荒げている麗紗。
 これは……絶対何かされる奴じゃん! 

 私がそう思った時には、もう既に麗紗は私に飛びかかっていた。

「はぁはぁ……これで水着の琥珀先輩を独り占めできますっ! ふへへ……琥珀先輩の感触を私にたっぷりと堪能させてくださいぃ!」

「うわああああああ! 麗紗の理性が崩壊したぁーっ! 元からそんなに無いけど!」

 ヨダレを垂らしながら私の身体に手を回してぎゅっと抱きしめてくる麗紗。

 甘い匂いのする頭をすりすりと私の胸にこすりつけてくる。

 生暖かいぬるっとした肌の感触が水着越しに麗紗から伝わってきた。

 いつもは服を着てるから肌を直に感じる事はないけど、今は薄い布一枚しかないのだ。

 私は麗紗の感触をより濃密に、そして繊細に感じていた。そのせいかなんだか頭がクラクラする。

「ちょ、ちょっと麗紗……離れて……」
「嫌です……もっと……もっと堪能させてください……ふふふっ……骨の髄まで琥珀先輩を味わわないと気が済まないんです……はぁはぁ……!」

「も、もう……! 駄目だってぇ……」

 私が止めても麗紗は全く私から離れようとしない。
 それどころか私をもっと強く抱きしめてくる。

 完全に暴走してる! 
 これは不味い……なんか変な気分になってきたし! 

 どうやって止めたらいいんだ……ああ、頭が働いてくれない……。

「こはくせんぱい……いいにおい……ふへへ……」
「や、やめて! 私のにおい嗅がないで麗紗! くすぐったいってぇ……」

 麗紗が目をとろんとさせながら私のにおいをくんかくんかと嗅いできた。麗紗の息が私の肌をまさぐってくる。

 ど、どんどん行動がエスカレートしてない!? 
 このままじゃ……っ! でも全然離れてくれないっ!

 私がそう焦っていると、麗紗が興奮の絶頂を迎えた顔で――。

「こはくせんぱぁい……おいしそう……も、もうがまんできない……いただきまぁす……」

「――っ!?」

 私の肌を、ぺろりと舐めた。
 全身の神経が逆立ち、ぞわっと寒気が駆け巡る。

 これ以上はもうアウトだ! ていうか既にアウトだけど! 

 何としてでも麗紗を引き剥がさないと――! 

 私の貞操が危ない! 
 ていうか何でこんな事に……! 

「離れて麗紗! そらあっ!」
「ぺろぺろ……ちょっとしょっぱ――きゃっ!?」

 私は八重染琥珀で全身に勢いを付け、麗紗を引き剥がそうとした。

 だがそれでも麗紗は引っ付いたままだ。

「嘘でしょ!? あんっ! 今舐めないで! 制御があっ……」

「びっくりさせないでくらさいよぉ……ぺろぺろ……おいし――ひゃあっ!?」

 麗紗に舐められた刺激で八重染琥珀の制御が出来なくなってしまった。

 八重染琥珀の効果が切れ、私達は海の中にどぼんと落ちた。

「んぶっ……ぷはっ! おっ! 剥がれた……って麗紗!?」
「ぶくぶくぶく……」

 すると麗紗はようやく私を開放した。
 とまあ、そこまでは良かったんだけど麗紗が海の中で溺れてしまっている。

 あんだけ強いのに泳げないんかい! 
 さっきまでの出来事も忘れて私は慌てて麗紗を海の中から引き揚げた。

「ちょっと大丈夫!? ここ腰ぐらいの高さしか無いよ!?」
「ぷはっ……こはくせんぱぁい……ぎゅーっ」

「……オラァッ!」
「むー!」

 引き揚げた瞬間、麗紗は再び懲りずに抱き着いてきたので私はもう一度自分の身体ごと麗紗を海の中に漬けた。

 麗紗はまた溺れて私から手を放した。

 全く……頭の中お花畑すぎる……。
 私はすこし間を置いてから麗紗を救出した。

「これで頭は冷えた?」
「ご、ごめんなさい……」

 私が首ねっこを掴みながら麗紗にそう聞くと、麗紗は震え声で謝った。

 麗紗は水に弱いのか……これはいい事を知った。

 今度暴走した時には水を使おう。
 そんな事を考えていると、麗紗が涙目で顔を紅潮させながらこう言った。

「本当にすみませんでした琥珀先輩……思わず興奮してあんなはしたない事を……」
「はあ……びっくりしたよ全く……特に舐められた時は」

「わ、私が言うのも何ですけど掘り返さないでください!」
「うん、本当にあなたが言える事じゃないよそれは」

 私の嫌味に麗紗はさっきまで自分がしていた事を思い出して顔をさらに赤くした。

 一応反省してるかな……でも今ここで私が何か言った所でどうせまた暴走するだろう。
 麗紗とはそういう生き物だ。

 自信を持って言える。私はもう達観した。

「もう次からは絶対やらないでね」
「ゆ、許してくれるんですか琥珀先輩……ありがとうございますっ!」

 そう言って麗紗は私に抱き着いた。
 さっき私なんて言ったっけ……? 

「はいはい引っ付かないの。それより早く泳ぐよ……って麗紗あなた泳げないじゃん……」

「あっ、大丈夫ですよ! 別荘の中に浮き輪がありますから! 置いてきちゃったので取ってきますね」

「うん何でそんな大事な物忘れてきちゃったの?」
「琥珀先輩の水着姿でいっぱいいっぱいだったので。てへ☆」

「てへ☆、じゃないんだよ……」

 舌をペロリと出して別荘に戻る麗紗。
 何であんなに私の事を脳内に満たせられるのかな……。

 ふと私は麗紗にほぼ素肌で抱きしめられた感覚を思い出して身体が熱くなった。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

私がガチなのは内緒である

ありきた
青春
愛の強さなら誰にも負けない桜野真菜と、明るく陽気な此木萌恵。寝食を共にする幼なじみの2人による、日常系百合ラブコメです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

私と先輩のキス日和

壽倉雅
恋愛
出版社で小説担当の編集者をしている山辺梢は、恋愛小説家・三田村理絵の担当を新たにすることになった。公に顔出しをしていないため理絵の顔を知らない梢は、マンション兼事務所となっている理絵のもとを訪れるが、理絵を見た途端に梢は唖然とする。理絵の正体は、10年前に梢のファーストキスの相手であった高校の先輩・村田笑理だったのだ。笑理との10年ぶりの再会により、二人の関係は濃密なものになっていく。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

身体だけの関係です‐原田巴について‐

みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子) 彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。 ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。 その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。 毎日19時ごろ更新予定 「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。 良ければそちらもお読みください。 身体だけの関係です‐三崎早月について‐ https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060

処理中です...