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第三章 ちゃんと私を見てくださいよ先輩!
海でーとその5
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「お待たせ~。二人とも楽しんだ? こっちは終わったわよ~」
「あら、お帰りなさい千歳。もっと虐めてても良かったのよ?」
「え……千歳……本当に凍牙に何したの……」
「…………」
千歳が生気を完全に失った凍牙を引きずりながら戻ってきた。
こんな短時間でどうやってこうなるまで精神的に追い詰めたんだ……。
「虐めだなんて人聞きが悪いじゃない麗紗。私はただ、凍牙にちょっとおしおきしただけよ~」
「……怖っ」
死んだ魚のような目に早変わりするおしおきって何だ。
私には千歳のその手腕がたまらなく怖い。
精神攻撃の天才な麗紗と似通ったものがある。
千歳は絶対に怒らせないようにしよう……。
「まあそれはそれとして……二人とも何して遊んでたの? 教えられる範囲で教えて?」
「なによ教えられる範囲でって……単に能力で水鉄砲遊び的な事をして――っ!?」
にやにやと笑いながらそう聞いてくる千歳に私は率直に答えようとした。
しかしまたあの感触が蘇って言葉を詰まらせてしまう。
頼むから落ち着いて私の体――!!
私は体を両手で抑えてなんとか体の火照りを抑えようとする。
そんな私の様子を見た千歳は、なぜか満足したような顔をして――。
「ふ~ん……これ以上は言わなくてもいいわ琥珀ちゃん。勇気を出したのね麗紗ちゃん!」
「え? 何が?」
「……ち、違う! べ、別に何も無かったって!」
くっ……なんで顔に出るんだよ私!
まさか千歳はこれを誘導しようとしていたのか……!?
何という策士。さすがは天才科学者だ……。
でもそんな凄い才能をこんな所で使わないでほしい。
エクスカリバーで魚のウロコ取りするようなものだ。
おかげさまで効果はてきめんだけどね!
そう私が焦っていると、千歳が私に近寄って耳元でこう囁いた。
「麗紗の抱き心地はどうだった……? 琥珀ちゃん……?」
「……はぁっ!? 何で分かって……! って思い出させないでぇ!」
「あら、適当に言ってみたら当たったわ……さっきのお返しよ」
「性格ねじ曲がってるよ千歳は……」
「ふふっ、だから特色者なのよ?」
なぜか誇らしげにそんな事を言ってくる千歳。
それは確かにそうだけどさ!
「千歳……琥珀先輩に何を言ったの……? 私を差し置いてこんな恥ずかしがるような言葉を言ったの……? ねえ、どういう事? 琥珀先輩は私のモノなのに、どうしてそんな事を言うの? まさか私から琥珀先輩を取ろうだなんて考えてないわよね?」
「それは無いわ。私が好きなのは無乳の女の子かインドア派の男の子だけよ!」
「そ、そう……ならいいわ」
「へー……どっちもいけるんだ……」
目を剥きながら千歳に怨念を飛ばす麗紗。
しかし麗紗はきっぱりとした千歳の物言いに押されて怨念を止められてしまった。
それにしても無乳の女の子ってあたりに闇を感じる。
そんな失礼な事を考えていると、千歳が首を傾げて抑えきれていない瘴気を滲み出させながら私に聞いてくる。
「ん? 琥珀ちゃんどうしたの? 私怒らないから何でも言ってごらん?」
「それ絶対怒るやつだし何も言ってないのに圧掛けてくるのやめて……」
ほんと勘がいいなこの子……。
女の勘研ぎ澄まされすぎでしょ。
その勘はどこで培われたものなのだろう。
私も一応女だけどあんまりそういうのが無い。
友達がそんなに居ないせ……。
……悲しくなってくるからこれ以上は考えないようにしよう。
「浮かない顔をしてどうしたんですか琥珀先輩? お腹空いたんですか?」
「ああ……うんそうだよ……」
感情が顔に出やすい私を心配してくる麗紗に私は適当にそう答えた。
でもお腹は結構減ってる気がする。散々動いたからかな。
「じゃあそろそろ昼ご飯にしましょう。ほら、凍牙出番よ」
「……」
「返事をしなさい返事を。死んでる場合じゃないのよ」
「……」
「起きなさいよ! 琥珀先輩が昼ご飯を待ってるのよっ!」
麗紗は死んでただの屍になった凍牙に痺れを切らして凍牙に膝蹴りを放った。
これが死体蹴りか……なんて感心してる場合じゃない!
たかが昼ご飯のためにやる事じゃないよ!
「やめなよ麗紗……さすがにやり過ぎだしそれで凍牙が昼ご飯作れなくなったらどうするの……」
「あっ……確かにそうですね……すみませんでした琥珀先輩。別の方法にしますね。そっちの方が早いですし」
麗紗は止める私にそう言って恋色紗織を出し凍牙に巻き付ける。
別の方法……? どうする気なんだ……?
「凍牙は千歳に虐められたせいで怖いのよね? ならそれを無くしてあげるわ」
優しげな口調で凍牙に呼び掛ける麗紗。
すると次の瞬間、凍牙の目に生気が戻った。
「あれ……どうしたんですか皆さん。何かありましたか?」
「凍牙、お腹空いちゃったから昼ご飯を作って頂戴」
「は、はあ……分かりました」
凍牙はまるでさっきまでの出来事を完全に忘れてしまったかのようにぽかんとした表情を浮かべながら別荘に入っていった。
え……何今の……怖っ……。
私は得体の知れない麗紗の恋色紗織に戦慄したのであった。
「あら、お帰りなさい千歳。もっと虐めてても良かったのよ?」
「え……千歳……本当に凍牙に何したの……」
「…………」
千歳が生気を完全に失った凍牙を引きずりながら戻ってきた。
こんな短時間でどうやってこうなるまで精神的に追い詰めたんだ……。
「虐めだなんて人聞きが悪いじゃない麗紗。私はただ、凍牙にちょっとおしおきしただけよ~」
「……怖っ」
死んだ魚のような目に早変わりするおしおきって何だ。
私には千歳のその手腕がたまらなく怖い。
精神攻撃の天才な麗紗と似通ったものがある。
千歳は絶対に怒らせないようにしよう……。
「まあそれはそれとして……二人とも何して遊んでたの? 教えられる範囲で教えて?」
「なによ教えられる範囲でって……単に能力で水鉄砲遊び的な事をして――っ!?」
にやにやと笑いながらそう聞いてくる千歳に私は率直に答えようとした。
しかしまたあの感触が蘇って言葉を詰まらせてしまう。
頼むから落ち着いて私の体――!!
私は体を両手で抑えてなんとか体の火照りを抑えようとする。
そんな私の様子を見た千歳は、なぜか満足したような顔をして――。
「ふ~ん……これ以上は言わなくてもいいわ琥珀ちゃん。勇気を出したのね麗紗ちゃん!」
「え? 何が?」
「……ち、違う! べ、別に何も無かったって!」
くっ……なんで顔に出るんだよ私!
まさか千歳はこれを誘導しようとしていたのか……!?
何という策士。さすがは天才科学者だ……。
でもそんな凄い才能をこんな所で使わないでほしい。
エクスカリバーで魚のウロコ取りするようなものだ。
おかげさまで効果はてきめんだけどね!
そう私が焦っていると、千歳が私に近寄って耳元でこう囁いた。
「麗紗の抱き心地はどうだった……? 琥珀ちゃん……?」
「……はぁっ!? 何で分かって……! って思い出させないでぇ!」
「あら、適当に言ってみたら当たったわ……さっきのお返しよ」
「性格ねじ曲がってるよ千歳は……」
「ふふっ、だから特色者なのよ?」
なぜか誇らしげにそんな事を言ってくる千歳。
それは確かにそうだけどさ!
「千歳……琥珀先輩に何を言ったの……? 私を差し置いてこんな恥ずかしがるような言葉を言ったの……? ねえ、どういう事? 琥珀先輩は私のモノなのに、どうしてそんな事を言うの? まさか私から琥珀先輩を取ろうだなんて考えてないわよね?」
「それは無いわ。私が好きなのは無乳の女の子かインドア派の男の子だけよ!」
「そ、そう……ならいいわ」
「へー……どっちもいけるんだ……」
目を剥きながら千歳に怨念を飛ばす麗紗。
しかし麗紗はきっぱりとした千歳の物言いに押されて怨念を止められてしまった。
それにしても無乳の女の子ってあたりに闇を感じる。
そんな失礼な事を考えていると、千歳が首を傾げて抑えきれていない瘴気を滲み出させながら私に聞いてくる。
「ん? 琥珀ちゃんどうしたの? 私怒らないから何でも言ってごらん?」
「それ絶対怒るやつだし何も言ってないのに圧掛けてくるのやめて……」
ほんと勘がいいなこの子……。
女の勘研ぎ澄まされすぎでしょ。
その勘はどこで培われたものなのだろう。
私も一応女だけどあんまりそういうのが無い。
友達がそんなに居ないせ……。
……悲しくなってくるからこれ以上は考えないようにしよう。
「浮かない顔をしてどうしたんですか琥珀先輩? お腹空いたんですか?」
「ああ……うんそうだよ……」
感情が顔に出やすい私を心配してくる麗紗に私は適当にそう答えた。
でもお腹は結構減ってる気がする。散々動いたからかな。
「じゃあそろそろ昼ご飯にしましょう。ほら、凍牙出番よ」
「……」
「返事をしなさい返事を。死んでる場合じゃないのよ」
「……」
「起きなさいよ! 琥珀先輩が昼ご飯を待ってるのよっ!」
麗紗は死んでただの屍になった凍牙に痺れを切らして凍牙に膝蹴りを放った。
これが死体蹴りか……なんて感心してる場合じゃない!
たかが昼ご飯のためにやる事じゃないよ!
「やめなよ麗紗……さすがにやり過ぎだしそれで凍牙が昼ご飯作れなくなったらどうするの……」
「あっ……確かにそうですね……すみませんでした琥珀先輩。別の方法にしますね。そっちの方が早いですし」
麗紗は止める私にそう言って恋色紗織を出し凍牙に巻き付ける。
別の方法……? どうする気なんだ……?
「凍牙は千歳に虐められたせいで怖いのよね? ならそれを無くしてあげるわ」
優しげな口調で凍牙に呼び掛ける麗紗。
すると次の瞬間、凍牙の目に生気が戻った。
「あれ……どうしたんですか皆さん。何かありましたか?」
「凍牙、お腹空いちゃったから昼ご飯を作って頂戴」
「は、はあ……分かりました」
凍牙はまるでさっきまでの出来事を完全に忘れてしまったかのようにぽかんとした表情を浮かべながら別荘に入っていった。
え……何今の……怖っ……。
私は得体の知れない麗紗の恋色紗織に戦慄したのであった。
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