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第四章 プレゼントですよ先輩!
無価値な日
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晴衣が琥珀達の前に現れた頃。
「今度はあなたなのね、千歳」
「あら麗紗ちゃん、察しがいいわね♪」
麗紗は部屋に堂々と入ってきた千歳に呆れながらそう言った。
千歳はそんな彼女にパチンとウィンクしてにっこりと笑う。
「悪いけど、友達としてあなたの事を止めさせてもらうわ」
「その言葉、そっくりそのままあなたに返すわ、千歳」
「……凍牙も言ってたと思うけど、どうして日本を琥珀ちゃんの誕生日プレゼントにしたの?」
冷淡な態度の麗紗に、千歳は笑みを消し悲し気な顔で彼女に聞いた。
その質問に麗紗は間髪を入れずに即答する。
「琥珀先輩に全てを捧げる為よ。当たり前じゃない」
「じゃあ何であなた自身をプレゼントにしなかったのかしら? こんな国なんかを琥珀ちゃんにあげた所で全てを捧げた事にはならないと思うんだけど」
「……あなたは自分の誕生日にゴミを送り付けられて嬉しいの?」
「えっ……」
千歳の疑問に対し、麗紗は掠れるような声で答えた。
「こんな……こんなゴミでクズで無価値な私なんて琥珀先輩は貰っても嬉しくないに決まってるじゃない! 確かに優しい優しい琥珀先輩ならゴミでもゲロでも喜ぶふりをして受け取ってくれるでしょうね優しすぎるから! でもそんなの私許せない! 琥珀先輩の優しさに甘えるなんて大罪だわ死刑だわ禁忌だわ! 私は人間性が腐り切っているから何度も千歳が言ったような誘惑に駆られたわ。何度禁忌を犯してしまおうと思い上がった事か……あはは、私ってほんと終わってるわよね! でもほんの少し、ほんのちょっと少しだけ残ってた私の良心がその欲望を抑えてくれたのよ! こんな私でも良心ってあったの! 私もすっごく驚いたわ! どっちにしろそんな事考え付く時点でもう大罪なんだけど……とにかく、私は別の、もっといいものを差し上げる事にしたの。それで選んだのが日本よ。日本を皮切りに、毎年琥珀先輩がお誕生日を迎える度に世界中の国をどんどん手に入れて行ってプレゼントするの。そうしていずれは世界が琥珀先輩のモノになるの。どう? 私にしてはいいプレゼントでしょう? 私にしてはだけど」
「……っ」
千歳は麗紗の言葉に頭を抱えた。
麗紗の琥珀への愛は、千歳の想像を遥かに超えて歪んでいた。
千歳は、今の麗紗を絶対に止めなくてはならないと決意を更に固める。
そして、白衣のポケットから――赤い宝石を取り出した。
「どうしたの千歳? 黙りこくって……あら? その宝石綺麗ね。もしかして琥珀先輩のプレゼントかしら? いい心掛けよ」
「これは……琥珀ちゃんへのプレゼントじゃないわ。あなたへのプレゼントよ」
脳内琥珀塗れの麗紗に、千歳は声を低くしてそう言った。
麗紗は千歳の言葉に眉をひそめて喚く。
「……意味が分からないわ。私の誕生日に価値なんてない。むしろ一年で一番忌むべき日よ! 今年はもう終わったけどね!」
「そんな事無いわよッ!!!」
「えっ……」
千歳は、反射的にそう叫び赤い宝石、ではなく赤い宝石のようなデザインをした薬品を握り締める。
「あなたは私の友達になってくれた……! 科学しか取り柄の無かった私を変えてくれた……! だから、私があなたの価値をあなたに証明してみせる!」
千歳は、溢れる思いを胸に薬品を砕く。
「変身!」
赤い透明な破片が花弁のように散り、千歳の声に共鳴し彼女の体を包み込み光を放つ。
「こ、これは勝負服……!?」
麗紗は目の前に広がる光景に心当たりがあった。
しかし屋敷の外でそれを見るのは初めてだった。
もっとも、目の前の光景は麗紗にとって初めての体験となるのだが。
「さあ、行くわよ」
麗紗の前に、所々機械的な意匠が施されたピンク色のナース服を身に纏い、長さ70センチ、太さ七センチの太い注射器を構えた千歳が現れた。
「何でもいいわ。あなたも凍牙みたいに止めてあげる」
*
*
*
「あいつら上手くやってんのか……? 不安になってきたぜ……あ~どうしてこんなめんどくせえ事しねえといけないんだよ~もぐもぐ……」
耕一郎はNNN本社の一室で大量のおにぎりを片っ端から胃の中に収めながらそうぼやいた。
彼は今、怠けている訳ではない。
自身の力を全力で蓄えている最中なのである。
「アイツの計画……ほんとに上手くいくかね~凍牙は成功したみてえだけどよ~」
耕一郎は別行動を取っている弟子二人の事に思いを馳せる。
手塩に掛けた……という程ではないが一応は弟子だ。
あの麗紗が相手ともなると、流石の耕一郎も不安にもなる。
「まっ、しくじってもあのバカが居ればどうにかなるか~!」
それでも耕一郎は気楽に考える事にしておにぎりを貪った。
「今度はあなたなのね、千歳」
「あら麗紗ちゃん、察しがいいわね♪」
麗紗は部屋に堂々と入ってきた千歳に呆れながらそう言った。
千歳はそんな彼女にパチンとウィンクしてにっこりと笑う。
「悪いけど、友達としてあなたの事を止めさせてもらうわ」
「その言葉、そっくりそのままあなたに返すわ、千歳」
「……凍牙も言ってたと思うけど、どうして日本を琥珀ちゃんの誕生日プレゼントにしたの?」
冷淡な態度の麗紗に、千歳は笑みを消し悲し気な顔で彼女に聞いた。
その質問に麗紗は間髪を入れずに即答する。
「琥珀先輩に全てを捧げる為よ。当たり前じゃない」
「じゃあ何であなた自身をプレゼントにしなかったのかしら? こんな国なんかを琥珀ちゃんにあげた所で全てを捧げた事にはならないと思うんだけど」
「……あなたは自分の誕生日にゴミを送り付けられて嬉しいの?」
「えっ……」
千歳の疑問に対し、麗紗は掠れるような声で答えた。
「こんな……こんなゴミでクズで無価値な私なんて琥珀先輩は貰っても嬉しくないに決まってるじゃない! 確かに優しい優しい琥珀先輩ならゴミでもゲロでも喜ぶふりをして受け取ってくれるでしょうね優しすぎるから! でもそんなの私許せない! 琥珀先輩の優しさに甘えるなんて大罪だわ死刑だわ禁忌だわ! 私は人間性が腐り切っているから何度も千歳が言ったような誘惑に駆られたわ。何度禁忌を犯してしまおうと思い上がった事か……あはは、私ってほんと終わってるわよね! でもほんの少し、ほんのちょっと少しだけ残ってた私の良心がその欲望を抑えてくれたのよ! こんな私でも良心ってあったの! 私もすっごく驚いたわ! どっちにしろそんな事考え付く時点でもう大罪なんだけど……とにかく、私は別の、もっといいものを差し上げる事にしたの。それで選んだのが日本よ。日本を皮切りに、毎年琥珀先輩がお誕生日を迎える度に世界中の国をどんどん手に入れて行ってプレゼントするの。そうしていずれは世界が琥珀先輩のモノになるの。どう? 私にしてはいいプレゼントでしょう? 私にしてはだけど」
「……っ」
千歳は麗紗の言葉に頭を抱えた。
麗紗の琥珀への愛は、千歳の想像を遥かに超えて歪んでいた。
千歳は、今の麗紗を絶対に止めなくてはならないと決意を更に固める。
そして、白衣のポケットから――赤い宝石を取り出した。
「どうしたの千歳? 黙りこくって……あら? その宝石綺麗ね。もしかして琥珀先輩のプレゼントかしら? いい心掛けよ」
「これは……琥珀ちゃんへのプレゼントじゃないわ。あなたへのプレゼントよ」
脳内琥珀塗れの麗紗に、千歳は声を低くしてそう言った。
麗紗は千歳の言葉に眉をひそめて喚く。
「……意味が分からないわ。私の誕生日に価値なんてない。むしろ一年で一番忌むべき日よ! 今年はもう終わったけどね!」
「そんな事無いわよッ!!!」
「えっ……」
千歳は、反射的にそう叫び赤い宝石、ではなく赤い宝石のようなデザインをした薬品を握り締める。
「あなたは私の友達になってくれた……! 科学しか取り柄の無かった私を変えてくれた……! だから、私があなたの価値をあなたに証明してみせる!」
千歳は、溢れる思いを胸に薬品を砕く。
「変身!」
赤い透明な破片が花弁のように散り、千歳の声に共鳴し彼女の体を包み込み光を放つ。
「こ、これは勝負服……!?」
麗紗は目の前に広がる光景に心当たりがあった。
しかし屋敷の外でそれを見るのは初めてだった。
もっとも、目の前の光景は麗紗にとって初めての体験となるのだが。
「さあ、行くわよ」
麗紗の前に、所々機械的な意匠が施されたピンク色のナース服を身に纏い、長さ70センチ、太さ七センチの太い注射器を構えた千歳が現れた。
「何でもいいわ。あなたも凍牙みたいに止めてあげる」
*
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「あいつら上手くやってんのか……? 不安になってきたぜ……あ~どうしてこんなめんどくせえ事しねえといけないんだよ~もぐもぐ……」
耕一郎はNNN本社の一室で大量のおにぎりを片っ端から胃の中に収めながらそうぼやいた。
彼は今、怠けている訳ではない。
自身の力を全力で蓄えている最中なのである。
「アイツの計画……ほんとに上手くいくかね~凍牙は成功したみてえだけどよ~」
耕一郎は別行動を取っている弟子二人の事に思いを馳せる。
手塩に掛けた……という程ではないが一応は弟子だ。
あの麗紗が相手ともなると、流石の耕一郎も不安にもなる。
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