麗紗ちゃんは最狂メンヘラ

吉野かぼす

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私、やっと分かったんだよ麗紗

あるわけない

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「行っちまったか……」
「漢野さん……!」

 漢野が跳んでいった方向を見つめる二人。

「馬鹿な人……自分から死にに行くなんて」

 麗紗は俯きながら冷たく吐き捨てる。
 そんな麗紗に、耕一郎は薄く笑って言った。

「どうかな……あいつの事だ……本当に根性でどうにかしちまうかもしれねえぜ……」

「……確かにそうですね! 漢野さんの根性は天下一品……! きっと今の琥珀さんを止められるに違いありません!」

 耕一郎の言葉に、凍牙が目を輝かせて言う。

「ふっ。もしそうだったらどんなにいいかしらね。絶対にありえないけど」

 麗紗はそれを鼻で笑った。
 今の麗紗の辞書に希望という言葉は無かった。

「麗紗お前なあ……俺達は今の琥珀の強さなんざ知らねーけど、それを言ったらお前も漢野の本当の強さってヤツを知らねーだろ」

「……だから何? どうせたかが知れてるんでしょ?」
「お前……ッ!」

 耕一郎は、冷ややかな笑みを浮かべ続ける麗紗の襟首を掴み言い放った。

 彼の人生で一番大きな声で。

「いい加減にしろ! 今漢野はなあ……俺達の為に闘ってくれてんだよ! 確かに琥珀は滅茶苦茶強くなってるかもしれねえ! 勝てねえかもしれねえ! でもあいつは……何もかもを懸けて闘う! あいつの持ってるモン全部をな! そんな奴に……お前の態度は失礼にも程がある!」

「耕一郎……あなた……」

 初めて見る耕一郎の表情に、麗紗は愕然とする。

「いいか……お前が絶望すんのは勝手だ。全部お前の所為だしな。だがよ……前向いてる奴を悪く言うのは許さねえ。次言ったらぶちのめす」

「…………」

 耕一郎は麗紗の襟首から手を放し、千歳の体を担いで言う。

「俺はアイツが働いてる分、俺に出来る事をする。麗紗、てめえのケツくらい自分で拭け。そんくらいの事は出来るだろ。そうじゃなきゃお前、いよいよ終わってるぜ」

「……私はそれをやろうとして出来なかったのよ。どうしろって言うの?」

「知らねえよ。自分で考えろ。俺には俺の仕事がある」

 耕一郎は麗紗の問いを突き返し、足早に温室へと戻っていった。
 残された二人はその背中を静かに見送る。

「私は……どうしたらいいの……?」

 かき消えるような弱々しい声で、麗紗は凍牙に聞く。
 その問いに、凍牙は少し考え込んでから答えた。

「今自分に出来る最大限の事をすればいいのですよ」
「……じゃあ何もないじゃない」

「ありますよ。必ず」
「……あるわけないわ」

「いいえ、あります!」
「ないって言ってるでしょ!」

 麗紗は何度も凍牙の言葉を否定する。
 それでも凍牙は何度も麗紗に言葉を掛け続ける。

「何も出来ない人間はいません。誰であれ何か一つは出来る事、得意な事があるのです。千歳さんは科学、耕一郎さんは農業、私は料理というように……私をその事に気付かせて下さったのは、紛れもないあなたなのですよ、お嬢様」

「え……?」

 麗紗は、突然自分の事を指され困惑する。

「私が全てを失った時、あなたは私に行くべき道を照らして下さいました……あなたは確かに琥珀さんにあまりにも酷い事をしてしまった……しかし、少なくともあなたは私を救って下さった……!」

 凍牙は、麗紗をまっすぐな目で見つめて言う。

「そんなあなたに、出来る事はたくさんあるはずです。この私にもあるのですから!」

「……!?」

 屋敷の門へと足を向ける凍牙を、麗紗は慌てて引き止める。

「ま、待って! あなたじゃ……!」

「大丈夫です。私には秘策がありますから。もしかすると、私が漢野さんやお嬢様よりも先に琥珀さんを止めてしまうかもしれません」

 それに凍牙は、にっこりと笑って答える。

「お嬢様に二つ、大事な事をお伝えしておきます。一つ目は、お嬢様のお力は万能である事……糸というのは様々な形になる事が出来ます。それだけ、多くの可能性を秘めているのです」

「能力の……可能性……!?」

「そして二つ目は、今の琥珀さんには重大な弱点があるという事です」

「えっ……今の琥珀先輩に……!?」

 麗紗は耳を疑った。
 
 かつて琥珀だったものに弱点が存在するとは到底考えられない。
 麗紗はそう思わずにはいられなかった。

「どこに弱点があるのよ……? あなた……本気で言ってるの?」
「もちろん」

 凍牙は確信に満ちた表情で、麗紗に告げる。

「今の琥珀さんの弱点は――」







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