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私、やっと分かったんだよ麗紗
黒いモノ
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「何なの……あの人間、急に“上限”クラスの強さになったわ……!」
「やっぱりちゃんと能力を見るまでは強さは分からないわね……」
ソイアとピセッロは遠くから漢野とかつて琥珀だったものの戦いを観察していた。
二人は突如跳ね上がった漢野の戦闘力に驚きを隠せない。
「あの人間はさっきも能力っぽいの使ってたわよお姉様。あれ程では無かったけど。もちろんちゃんと見てたわよねお姉様?」
「ごっ、ごめんなさい! その時居眠りしちゃっ……ごふっ!」
「お姉様……? 今は任務中、よね……?」
ピセッロは姉の鳩尾に拳をめり込ませる。
ソイアは野太い声を上げて息を詰まらせ、掠れるような声で妹に懇願する。
「ああん何でもお仕置きしていいから許してぇ……むしろお仕置きしてぇ……私、もう我慢できないの……!」
「……吠えてんじゃないわよこの雌犬ッ! まだ躾が足りないの!?」
「うぐっ! おふっ! あ゛あ゛っ! ありがとうございますぅ……! ありがとうございますぅ……!」
ソイアは腹を抑えて蹲りながら興奮する。
ピセッロはそんな姉の醜態を見てため息をつく。
「はあ……お姉さ……この犬がここまで役立たずだったなんて期待外れだわ。犬の風上にも置けないわね」
「はぁぁぁぁ!!! 耳がしあわしぇ……! ソイアに日本語で罵って貰えるなんて……!」
「罵って“頂ける”でしょお姉様?」
「ああんご主人様ぁ!」
ソイアは歓喜の叫びを上げて妹の靴をべろべろと舐め始めた。
ピセッロはまたさらにため息をつく。
(お姉様にたくさん求められてるのは嬉しいんだけど……このままだとそろそろお仕置きのレパートリーが尽きちゃうわ……いやここで諦めちゃダメよ私! しっかりとお姉様の期待に応えなきゃ! 地球にもきっと勉強できる本があるはず……早く任務を終わらせて探さないと!)
姉の欲求を満たす手段が徐々に減ってきている事に。
ピセッロは愛する姉を楽しませる為に色々と勉強をしているのだ。
傍から見ればただの家庭内暴力だが、これも一つの愛の形なのである。
「……それにしてもあの人間と五分に戦ってるあの黒いヤツ……一体何なのかしら。あんなの見た事がないわ……ちょっと怖い……」
ピセッロはかつて琥珀だったものの異様な気配に戦慄する。
「そうね……何かとてつもない恐ろしさを感じる……あの黒いモノの事も報告しておきましょう」
「ええ……」
ソイアも靴を舐めるのを止めて妹に同意する。
そうして、ようやく二人が正常に仕事をし始めたその時。
『彼の様子はどうだい?』
二人の通信機器に、エリアの発信が届いた。
「はっ……! ただいま“上限”となり謎の黒いモノと戦っております」
ピセッロは即座に現在の状況を報告する。
するとエリアは不思議そうな口調で聞いた。
『黒いモノ……? それは何だ? ある種の人間なのか?』
「遠目ですので何とも……ただ言える事はとても恐ろしい存在であるという事だけでございます。今も“上限”と渡り合っています」
『なっ……そうか……』
エリアはピセッロの言葉に軽く驚きつつ、二人にこう命令した。
『それなら戦って詳しい事を調べてくれ。安全に気を付けた上でね』
「なっ……!? 良いのですか!?」
「正体が……」
『状況が変わった。正体を隠していられるような状況ではないという事だ。頼めるかな?』
「「はっ」」
二人はエリアの命令を引き受けた。
事の重大さを実感して。
『場合によっては“混色”をしても構わない。それじゃあ、頼んだよ』
「「はっ……!」」
エリアからの通信が切れ、二人はお互いの顔を見合わせる。
「大変な事になったわね、お姉様……」
「そうね……まさか“混色”まで許可されるだなんて思いもしなかったわ」
「まあ……とにかく行くしかないわね……」
「ええ」
二人は戦場へと赴いた。
*
*
*
「ほ~ら麗紗天国だよぉ!」
「おっと危ねえ!」
漢野はかつて琥珀だったものの剣しゃがんで避け。
「お返しだ!」
その体勢のまま突きを入れる。
かつて琥珀だったものがその突きをひらりと避ける。
「カウンターも入んねえか! ならこれはどうだ?」
「麗紗ぁ!」
漢野はかつて琥珀だったものの振るった剣を跳んで躱し、空中から踵落としを放った。
漢野の踵と瘴気の剣がぶつかり合い、甲高い音を立てる。
「だと思ったぜ!」
それを見越していた漢野は踵を上げたままの体勢から横蹴りを入れ、また空を蹴って着地した。
しかしその蹴りも虚空を掠めただけだった。
「これも避けるか……まいったな……」
かつて琥珀だったものの強さに舌を巻く漢野。
「麗紗……! 麗紗……! 麗紗ぁ……! 麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗」
「ん?」
刹那、かつて琥珀だったものが瘴気の剣に手を添え麗紗の名前を唱え始めた。
かつて琥珀だったものの周囲が、瘴気に包み込まれる。
瘴気の剣に、さらに夥しい瘴気が纏わりつく。
「奥の手ってとこか……! 受けて立つぜ!」
漢野はどっしりと正面から待ち構える。
かつて琥珀だったものが瘴気の塊を大きく振った。
凄まじい瘴気の斬撃が、漢野を手に掛けようとする。
「おらぁ! すげえ力だな!」
漢野は赤い光を纏った両拳を突き出し、瘴気の斬撃を受け止める。
どちらも、一歩たりとも退かない。
「この程度で俺を……俺達を止められるとでも思ってんのか……!」
漢野の想いに呼応し、拳の輝きが増す。
徐々に瘴気の斬撃が押し返されていく。
「俺には、アイツらが付いてるんだぁ! うおおおおおおおおおおおお!!!」
拳が煌めき、斬撃が完全に押し返され掻き消えた。
「麗……紗……? れ、い、し、ゃ……?」
「これが俺達のド根性だ……! まだまだこんなモンじゃねえけどな……!」
漢野は再びニヤリと笑ってみせた。
その時だった。
「面白そうな事をやってるじゃない」
「私達も、入れて貰えるかしら?」
「なっ……何!?」
この戦いに、二人の乱入者が現れたのは。
「やっぱりちゃんと能力を見るまでは強さは分からないわね……」
ソイアとピセッロは遠くから漢野とかつて琥珀だったものの戦いを観察していた。
二人は突如跳ね上がった漢野の戦闘力に驚きを隠せない。
「あの人間はさっきも能力っぽいの使ってたわよお姉様。あれ程では無かったけど。もちろんちゃんと見てたわよねお姉様?」
「ごっ、ごめんなさい! その時居眠りしちゃっ……ごふっ!」
「お姉様……? 今は任務中、よね……?」
ピセッロは姉の鳩尾に拳をめり込ませる。
ソイアは野太い声を上げて息を詰まらせ、掠れるような声で妹に懇願する。
「ああん何でもお仕置きしていいから許してぇ……むしろお仕置きしてぇ……私、もう我慢できないの……!」
「……吠えてんじゃないわよこの雌犬ッ! まだ躾が足りないの!?」
「うぐっ! おふっ! あ゛あ゛っ! ありがとうございますぅ……! ありがとうございますぅ……!」
ソイアは腹を抑えて蹲りながら興奮する。
ピセッロはそんな姉の醜態を見てため息をつく。
「はあ……お姉さ……この犬がここまで役立たずだったなんて期待外れだわ。犬の風上にも置けないわね」
「はぁぁぁぁ!!! 耳がしあわしぇ……! ソイアに日本語で罵って貰えるなんて……!」
「罵って“頂ける”でしょお姉様?」
「ああんご主人様ぁ!」
ソイアは歓喜の叫びを上げて妹の靴をべろべろと舐め始めた。
ピセッロはまたさらにため息をつく。
(お姉様にたくさん求められてるのは嬉しいんだけど……このままだとそろそろお仕置きのレパートリーが尽きちゃうわ……いやここで諦めちゃダメよ私! しっかりとお姉様の期待に応えなきゃ! 地球にもきっと勉強できる本があるはず……早く任務を終わらせて探さないと!)
姉の欲求を満たす手段が徐々に減ってきている事に。
ピセッロは愛する姉を楽しませる為に色々と勉強をしているのだ。
傍から見ればただの家庭内暴力だが、これも一つの愛の形なのである。
「……それにしてもあの人間と五分に戦ってるあの黒いヤツ……一体何なのかしら。あんなの見た事がないわ……ちょっと怖い……」
ピセッロはかつて琥珀だったものの異様な気配に戦慄する。
「そうね……何かとてつもない恐ろしさを感じる……あの黒いモノの事も報告しておきましょう」
「ええ……」
ソイアも靴を舐めるのを止めて妹に同意する。
そうして、ようやく二人が正常に仕事をし始めたその時。
『彼の様子はどうだい?』
二人の通信機器に、エリアの発信が届いた。
「はっ……! ただいま“上限”となり謎の黒いモノと戦っております」
ピセッロは即座に現在の状況を報告する。
するとエリアは不思議そうな口調で聞いた。
『黒いモノ……? それは何だ? ある種の人間なのか?』
「遠目ですので何とも……ただ言える事はとても恐ろしい存在であるという事だけでございます。今も“上限”と渡り合っています」
『なっ……そうか……』
エリアはピセッロの言葉に軽く驚きつつ、二人にこう命令した。
『それなら戦って詳しい事を調べてくれ。安全に気を付けた上でね』
「なっ……!? 良いのですか!?」
「正体が……」
『状況が変わった。正体を隠していられるような状況ではないという事だ。頼めるかな?』
「「はっ」」
二人はエリアの命令を引き受けた。
事の重大さを実感して。
『場合によっては“混色”をしても構わない。それじゃあ、頼んだよ』
「「はっ……!」」
エリアからの通信が切れ、二人はお互いの顔を見合わせる。
「大変な事になったわね、お姉様……」
「そうね……まさか“混色”まで許可されるだなんて思いもしなかったわ」
「まあ……とにかく行くしかないわね……」
「ええ」
二人は戦場へと赴いた。
*
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「ほ~ら麗紗天国だよぉ!」
「おっと危ねえ!」
漢野はかつて琥珀だったものの剣しゃがんで避け。
「お返しだ!」
その体勢のまま突きを入れる。
かつて琥珀だったものがその突きをひらりと避ける。
「カウンターも入んねえか! ならこれはどうだ?」
「麗紗ぁ!」
漢野はかつて琥珀だったものの振るった剣を跳んで躱し、空中から踵落としを放った。
漢野の踵と瘴気の剣がぶつかり合い、甲高い音を立てる。
「だと思ったぜ!」
それを見越していた漢野は踵を上げたままの体勢から横蹴りを入れ、また空を蹴って着地した。
しかしその蹴りも虚空を掠めただけだった。
「これも避けるか……まいったな……」
かつて琥珀だったものの強さに舌を巻く漢野。
「麗紗……! 麗紗……! 麗紗ぁ……! 麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗麗紗」
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刹那、かつて琥珀だったものが瘴気の剣に手を添え麗紗の名前を唱え始めた。
かつて琥珀だったものの周囲が、瘴気に包み込まれる。
瘴気の剣に、さらに夥しい瘴気が纏わりつく。
「奥の手ってとこか……! 受けて立つぜ!」
漢野はどっしりと正面から待ち構える。
かつて琥珀だったものが瘴気の塊を大きく振った。
凄まじい瘴気の斬撃が、漢野を手に掛けようとする。
「おらぁ! すげえ力だな!」
漢野は赤い光を纏った両拳を突き出し、瘴気の斬撃を受け止める。
どちらも、一歩たりとも退かない。
「この程度で俺を……俺達を止められるとでも思ってんのか……!」
漢野の想いに呼応し、拳の輝きが増す。
徐々に瘴気の斬撃が押し返されていく。
「俺には、アイツらが付いてるんだぁ! うおおおおおおおおおおおお!!!」
拳が煌めき、斬撃が完全に押し返され掻き消えた。
「麗……紗……? れ、い、し、ゃ……?」
「これが俺達のド根性だ……! まだまだこんなモンじゃねえけどな……!」
漢野は再びニヤリと笑ってみせた。
その時だった。
「面白そうな事をやってるじゃない」
「私達も、入れて貰えるかしら?」
「なっ……何!?」
この戦いに、二人の乱入者が現れたのは。
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