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私も載ってる
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「母上、見つけました」
私が衝撃を受けている間に、兄さまが紋章一覧から葉っぱを見つける。
「まあ、良く見つけたわね、シオンありがとう」
母さまは、紋章の下に書かれていたページを開く。
「ほら、シオンとデイジーの名前もここにありますよ」
家系図の一番下の段を指差す。
「わぁ」
私の名前が、貴族年鑑に載っているという感動にひとしきり浸ってから、家系図を辿る。父さまと母さまは従兄妹同士なので、割とシンプルである。
ふむふむ、お祖父さまの妹がタールベルク子爵さまに嫁いで母さまが生まれたのね、とか、スペースの都合なのか四世代分しか載っていないので高祖母さまのお名前はないけれど、その娘である曾祖母さまは一人娘で婿を取ったのね、などということが読み取れる。
この情報の宝庫である貴族年鑑、手に入れられないまでも、見たいときに見られるようにしたいなあ。
「父さまお帰りなさい!」
善は急げなので、帰宅した父さまに駆け寄って、抱きつこうとぴょんと飛び上がる。
「ミャッ(しまった)」
ちょっと勢いがつき過ぎていた所為で、私を迎え入れるために屈み込もうとした父さまの膝に激突した。当然のように呪いが発動する。
「ただいまデイジー……大丈夫か? 痛くしなかったか?」
猫の私を抱き上げて鼻を撫でてくれる父さま。
「ミャー(痛いー)」
膝蹴りを食らったようなものである。飛び込んだの私だけど。
「あのね父さま、貴族年鑑が欲しいの」
一度部屋に戻って母さまにキスで人間に戻してもらった。身なりを整えて仕切り直しだ。
「貴族年鑑?」
五歳の娘にそんな要求をされた父さまは、目を瞬かせる。
「気に入ったみたいなのよ」
母さまが、父さまにざっくりと経緯を説明してくれた。
「気に入ったと言われても、これはいろいろなことに必要な資料だしね……」
あげる訳には、と父さまが困っている。
「ねえ父さま、どうしても、だめ?」
必殺の上目遣いで首を傾げる。傾ける角度も重要である。
「うっ」
私の可愛さに、父さまが胸を押さえる。
「何がそんなに気に入ったんだい?」
「えっとね、紋章? ハンカチに紋章が刺繍してあったの」
本当は貴族の情報が詰まっているところだが、それを五歳児が正直に言うと不審がられてしまう。紋章一覧のページを思い出して、それで押し切ることにする。
「ああ、ハンカチか。ハルシャは私のハンカチにも刺繍してくれているよ」
ほらね、と父さまが上着から取り出したハンカチにも、我が家の紋章が刺繍されている。もしかして紋章を刺繍するのって当主夫人の嗜みなのかな。
持ち物に名前を書くようなものなのかも。紋章が入っていれば、落としても『この紋章はアスター伯爵家の』と戻って来そうだ。
実用性だけではなく、落としたハンカチを拾ったことからロマンスが始まったり、紛失したハンカチが犯行現場で見つかって捕縛されたりなんてこともあるかも。ハンカチ一枚で意外なほどに妄想が捗る。
うちの紋章みたいに植物系だと、紋章だって気付かない可能性の方が高い気がするけどね! ニュースソースは私。
私が衝撃を受けている間に、兄さまが紋章一覧から葉っぱを見つける。
「まあ、良く見つけたわね、シオンありがとう」
母さまは、紋章の下に書かれていたページを開く。
「ほら、シオンとデイジーの名前もここにありますよ」
家系図の一番下の段を指差す。
「わぁ」
私の名前が、貴族年鑑に載っているという感動にひとしきり浸ってから、家系図を辿る。父さまと母さまは従兄妹同士なので、割とシンプルである。
ふむふむ、お祖父さまの妹がタールベルク子爵さまに嫁いで母さまが生まれたのね、とか、スペースの都合なのか四世代分しか載っていないので高祖母さまのお名前はないけれど、その娘である曾祖母さまは一人娘で婿を取ったのね、などということが読み取れる。
この情報の宝庫である貴族年鑑、手に入れられないまでも、見たいときに見られるようにしたいなあ。
「父さまお帰りなさい!」
善は急げなので、帰宅した父さまに駆け寄って、抱きつこうとぴょんと飛び上がる。
「ミャッ(しまった)」
ちょっと勢いがつき過ぎていた所為で、私を迎え入れるために屈み込もうとした父さまの膝に激突した。当然のように呪いが発動する。
「ただいまデイジー……大丈夫か? 痛くしなかったか?」
猫の私を抱き上げて鼻を撫でてくれる父さま。
「ミャー(痛いー)」
膝蹴りを食らったようなものである。飛び込んだの私だけど。
「あのね父さま、貴族年鑑が欲しいの」
一度部屋に戻って母さまにキスで人間に戻してもらった。身なりを整えて仕切り直しだ。
「貴族年鑑?」
五歳の娘にそんな要求をされた父さまは、目を瞬かせる。
「気に入ったみたいなのよ」
母さまが、父さまにざっくりと経緯を説明してくれた。
「気に入ったと言われても、これはいろいろなことに必要な資料だしね……」
あげる訳には、と父さまが困っている。
「ねえ父さま、どうしても、だめ?」
必殺の上目遣いで首を傾げる。傾ける角度も重要である。
「うっ」
私の可愛さに、父さまが胸を押さえる。
「何がそんなに気に入ったんだい?」
「えっとね、紋章? ハンカチに紋章が刺繍してあったの」
本当は貴族の情報が詰まっているところだが、それを五歳児が正直に言うと不審がられてしまう。紋章一覧のページを思い出して、それで押し切ることにする。
「ああ、ハンカチか。ハルシャは私のハンカチにも刺繍してくれているよ」
ほらね、と父さまが上着から取り出したハンカチにも、我が家の紋章が刺繍されている。もしかして紋章を刺繍するのって当主夫人の嗜みなのかな。
持ち物に名前を書くようなものなのかも。紋章が入っていれば、落としても『この紋章はアスター伯爵家の』と戻って来そうだ。
実用性だけではなく、落としたハンカチを拾ったことからロマンスが始まったり、紛失したハンカチが犯行現場で見つかって捕縛されたりなんてこともあるかも。ハンカチ一枚で意外なほどに妄想が捗る。
うちの紋章みたいに植物系だと、紋章だって気付かない可能性の方が高い気がするけどね! ニュースソースは私。
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