1 / 2
~第一章 金色の贈り物~
しおりを挟む「ユフィ様、本当ですか。他国へ嫁ぐなど……」
「本当よ。アスラ様を忘れなければならないもの。見てられないの」
幼い頃からずっと私を見てくれていたカナリアは一緒に泣いてくれた。
だって私は明日には隣国リーベに渡り、そこの王太子殿下に嫁ぐんだから。
~第一章 金色の贈り物~
リーベ王国王太子殿下に嫁いでもうすぐ三年。王太子妃としての立ち位置はまぁまぁ固めれたんじゃないかと思う。
今日も仕事がアホみたいに机の上にどか積みで、あれ? 王太子妃って本来書類仕事しましたっけ? って叫びたい。どっちかって言うと王太子妃といか高貴な方の妻ってお茶会とかで互いの腹の内を探り合うっていうのがメインのお仕事のような気がする。でも叫んだところで書類は一枚も片付かないのだから大人しく席に座る。
「おや、今日は早いですね」
「まぁねぇ。もうそろそろどなたかの生誕祭とかで忙しい時期ですからね」
「減らず口も相変わらずでお元気そうで何よりです」
同じくらい減らず口を叩く野郎に腹を立てながらペンを動かす。隣の席に座ってやがるのでペンを止めたらまた嫌味が飛んでくるからだ。ここ三年で対王太子戦については学んできたつもりだ。
けれど生誕祭の準備に追われているとこんな野郎と結婚して三年とか泣ける。
三年前、嫁いできて初めての仕事が王太子……夫の生誕祭の準備だった。嫁いできて初夜ともいうべき日に野郎と契約したのだ。
『貴女はメイスフィア国との同盟の証です。ですが妻として扱うつもりはありませんのでよろしくお願いします』
メイスフィア国の第二王女として嫁いできた私に言うセリフか、腹を立ててしまい負けず言い返してしまった。今思えば野郎に口で勝負してはいけないのに。戻れるなら過去に戻って、じゃあ置物にでもなっときますって言っとけって教えてあげたい。
『誰があんたみたいなヤツの妻になりたいものですか! 書類上でだけよ、現実では勘弁してほしいわ』
『おや。お元気な事ですね。ではタダ飯を食わせるつもりもありませんので、働いてくださいね、メイスフィア第二王女』
『もちろんよ。あんたに食べさせてもらうなんて気持ち悪い』
あれから本気で三年働かせてくれてるよ。どんどん積みあがる書類の束に吐き気を覚えたわ。最近では結婚して三年経つのに子が出来ないって事でお飾り王太子妃って呼ばれてるのを知っている。どうとも思わないからいいけどさ。悪口聞くのは気分いいものでもないんだよね。
私以上の書類の束と格闘している野郎に負けじと書類を片づけていると、ふっとある書類が目に留まった。
ほぉら、考えたらきてたよ。やっぱりね。
「どうかしましたか? 気になる書類でも」
「ええ。私に側妃について王太子に聞いて欲しいってさ。で、どうするの王太子サマ。さすがに私に子ども出来ないから焦ってきたみたいよぉー、たっくさんあるもん」
未処理の書類の束を漁れば一枚、二枚とどんどん同じような関連の書類が見つかる。
それを野郎の机の上の書類に足してやろうと王太子サマを見れば、お綺麗な顔の眉間に皺が寄っているではないか。そう言えば私には全然言ってこないが、この国の王妃様……野郎にとっては母親にあたる方は、そういった関連が大好きそうなご婦人だ。私には言わない分、息子に攻め寄っててもおかしくはないかもしれない。多方面から言われりゃ煩く思っても仕方がないかもしれないが、それも王太子の仕事。同情できる余地もあるが、頑張れとしか言ってやれない。
「他人事の様で楽しそうですね」
「他人事だもん。メイスフィアの意向でこの席に座ってるだけのお人形だし。あ、ないと思うけど私に気を使っていらないわよ。側妃、そろそろ召し上げたらいいんじゃないの?」
「まぁ堂々と宣言しますね。一応貴女の肩書は王太子妃なんですけどねぇ」
「一応、でしょ?」
「善処しましょう、と解答しておいてください。本気で煩いですから、側妃を迎えるかもしれませんが、貴女には迷惑をかけないように致しますので、そこはご安心ください」
「りょーかい。けどその方が王太子妃の位が欲しいって言ったら側妃に下げてもいいからね。お飾りなんだし、子ども三年も出来ないんだもん。メイスフィアだって妥当だって理解するよ」
そう言えば野郎は非常に微妙そうな顔をして、分かりましたとだけ呟いた。
一応三年隣にいるから友情くらいの情は持ってもらえたのかしら、と思う。でも王様がこの間私だけを呼び出して、もうそろそろ野郎……失礼、レオンに王位を譲渡しようかと思っている、これまで以上にレオンを支えてやってほしいと頭を下げてきた。一国の王としてではなく、一人の父として。さすがに貴方の息子さんの事愛してはいないんで、仕事だけでしたら頑張りますが以外は無理でーす、と言える雰囲気ではなかったので頷いといた。が、それを聞いたら尚更側妃様にその精神的支えってやつ? してもらった方がいいんじゃないのって思いがふつふつと湧き上がってきた。
いい傾向だ。野郎が善処するといった。後は腹黒いおじさん連中が、おススメの令嬢とやらをぶつけてくるだろうから好きなのを選ぶがいい。王様は本気で息子を心配してるんだから本気で孫作って安心させてあげなよね。
「あらまー、なくなっちゃった」
くだらない事考えてたら日が暮れる前に書類はすべて片付いてしまった。我ながら書類処理能力はびっくりするぐらいついたと思う。隣の野郎も驚いているではないか。
「流石に褒めないと駄目ですかね」
「いらないわよ。それよりそっちやってあげるからさ。確か夜からパーティでしょ。準備してきなさいよ。ついでにお気に入りの姫様でも見つけておいで」
「貴女は……」
「嫌味言われるだけのパーティって興味ないの。最近王太子妃様は体調が悪いの。どうやら風邪が長引いてるそうよ」
最近私はパーティに出ない。風邪を引いただの、熱が下がらないだの、大嘘付き放題だ。それが尚、側妃の話に繋がっているのも分かってるし、そうして欲しい故の行動だ。野郎は気にくわないが、義父・義母は気にいっている。その彼らが孫を望むのならば、そうしてあげたいのだ。
野郎の机の上の書類をすべて奪い、自分の机の上に置く。孫を作ってあげるには、一番は野郎の仕事大好き根性を治すところからだ。外交もしているが、必要最低限終わればまた執務室に戻ってきては出会いがない。おっさんと喋ってるだけだ。だから野郎の仕事を奪う事に決めたのだ。
「ほらいったいった。主役がいないと話になんないでしょ」
「貴女も主役でしょう。そちらの仕事は急ぎではありませんから支度を……」
「煩い! 私は高熱に魘されているのよ」
「大声張り上げている人が高熱とは嘘も大概にしてください」
「いいの。あんたがいれば話はまとまるのよ。私は邪魔だからいかないの。知ってるでしょう。私はお飾り。あんただけじゃないのよ、最近そう言うのは」
そう言えばいつも野郎は何も言えず大人しく支度へ行くのだ。本当に地味な嫌がらせ&嫌味を受けているので強く出られないらしい、野郎のウィークポイント。正直嫌味と嫌がらせは腹が立つが、こういった使い方も出来るので反撃はせずにいる。今日も嫌がらせを受けて奥に縮こまっている愚かな王太子妃を演じるのだ。おっさん連中は今日の側妃善処する、の言葉を聞けばさらに狂喜乱舞するだろう。
「言わせなければいい。どうして貴女は言い返さないのですか」
「言い返したって仕方がないでしょ。世間は世継ぎを望んているんだから、さっさと側妃選びなさいよ。そうしたら私だってパーティ出れるんだから」
「なら貴女が世継ぎを……」
「冗談なら寝て言ってちょうだい。ほら仕事やってあげるって言ってるんだから、仕事の事なんて忘れないさい」
ぐいぐい背中を押して執務室から追い出す。
珍しい事もあるもんだ。冗談なんていう性格じゃない癖に世継ぎを、なんて言いだすなんて。私が思っている以上に周りの攻めたてがきついのかもしれない。これはさっさと作戦を進めなければならないだろう。
さぁ作戦その一、野郎の仕事を奪うべくさっさと書類整理に没頭した。
しかし野郎は超ハイスペック野郎で、急ぎではない仕事しか置いておらず、難しいのから処理する性格の為、簡単なものしか残ってなくて夕方ごろには終了してしまった。もともとパーティ出席予定だったからきちんとそれまでに終わるようにしていたのだろう。パーティ開始時刻まで後三十分ほどだ。
窓から外を覗けば何台もの馬車が向かってくる様子が見て取れる。当然、ここから人の顔を見ることは出来ないが、馬車の装飾や色合いなどから大体乗っている人が想像出来る。今日は王妃様主催のパーティで、来る貴族も名だたる貴族ばかりだったはずだ。出ないと思っていたから目を通さずにいた参加者名簿に、作戦二遂行のため目を通す。
当然おっさん共も私の許可があろうがなかろうが側妃に自分の娘をあげるべく、色んなお嬢様を連れ添っての参加だ。
(ふむふむ。一番有力はやっぱりワイマール公爵令嬢シルヴィア様かな、やっぱ)
作戦二とはどうせこういったことに関心を示さない上、書類上私という妻を持っているため堂々と出来ない事をやってあげよう大作戦だ。もちろん堂々と出来ない事は令嬢を城に招きイチャイチャすることだ。招くくらいは私がしてあげよう。後は頑張るがいい。
「……ニヤニヤと気持ちが悪いですね」
ふと名簿から目線を外し扉の方を見れば、着飾った王太子様が立っていた。こうして見れば高身長で顔が整っており、確かに書類仕事に追われているが、朝起きれば剣の練習を欠かさずしているため体も引き締まっている。眼鏡をかけているのも令嬢としてはキュンポイントになるのではないだろうか。
(性格さえ治せば絵本の王子様になれんじゃないの)
声には出さないがそう思っていると、怪訝な表情をしてくる。声には出してないのに。
「それは今日の出席者の名簿ですね」
「へ? あぁ……これね。どんな人がいらっしゃったっけーって見てただけ」
「分かりましたよ」
何が、という前に私の腕を引っ張って無理やり椅子から立ち上がらせてくる。朝からずっと執務室にいたんだから急に立ったら足とお尻がヒリヒリするんだからやめてほしい。
「ちょっとどこ連れてく気なのよ。もうそろそろパーティ始まるから廊下歩くのやなんだって」
腕を引っ張って無言で歩いていく野郎に徐々に腹が立ってくる。力で勝てないんだからついていくしかない。今歩いている場所は王族居住区だからいいが、うっかりパーティ会場近くなんかにいって貴族のおっさんに姿を見られたら風邪が嘘だってばれてしまうではないか。
抵抗しないのは嫌なので腕をブンブンと振る。
「やめてって。聞いてるの? パーティ始まっちゃうんだから行かないといけないんじゃないの?」
何を言っても無反応。何考えてんだか分からないのは今に始まった事ではないが、ここまで訳分かんない行動に出るのは初めてだ。仕事さえやってれば後は無関心な人なのに。
もう腕振って抵抗するのもしんどくて、大人しくついて歩けばある扉の前で止まる。
「……あれ? ここ王太子サマの部屋じゃないの」
隣には私の部屋があるのだから、間違いなく野郎の部屋だ。途中から部屋の方向だなってのは分かっていたが、なんで部屋まで引っ張っていくのだ、部屋に帰れって言ってくれれば引っ張られなくても一人で帰れるのに。
と思っていたらそのまま腕を引っ張られて王太子サマの部屋に入れられる。
そこは入るのが初めての場所だ。初夜ともいうべく日に妻として扱わない宣言された通り、所謂夜の生活はない。だから野郎の部屋に入るのも初めてだ。
「ね、どうしたのよ。急に変よ? 聞いてるの?」
部屋に入れば腕は解放されたのでちょっとほっとした。だが変わらず野郎は変なままで、無言状態は継続中である。きっともうすぐパーティは始まる。執務が終わった頃で三十分後に開始だったのは覚えているからきっと開始までもう十分もないはずだ。
「……レオンハルトですよ。名前も覚えられませんか、貴女は」
「口を開いたかと思えば……。覚えてはいるわよ。あんただって私の名前、覚えてるの?」
「ユフィ―リア・フォン・リーベントでしょう。覚えていますよ。ずっと蔑ろにしていたのは俺だ。だからユフィ―リアは名前を名乗らない。パーティにも出ない。仕事ばかりしている。お飾りだと笑われる。全部俺のせいだ」
もう一回腕を引っ張られたと思えば抱きしめられた。ふわっと香るのはリーベの花の匂いで、執務室の匂いと別名勝手に付けた匂いだ。抱きしめられるのは初めてでやっぱりちょっと鍛えているから硬いなと思う。
「好き勝手言ってくれるんじゃないの。全部あんたのせいじゃないんだから、気にしなくていいわ。けど気にしてくれてありがとう。それだけで嬉しいわ。だからもうパーティ行ってきて」
「覚えていると言った傍から言えないとはそこまでおバカでしたか?」
「はぁ? 何が言いたいの?」
「雰囲気も読めず、覚えも悪いユフィ―リア・フォン・リーベントを馬鹿にしているだけです」
私を抱きしめている野郎の腕の力が少し強まったのを感じた。あと少し強められたら苦しそうだから抗議しよう。
「ユフィ―リア、ユフィ―リアと煩いわね。ってああ! レオンハルトって呼ばないから怒ってるの? あんたも貴女って私の事呼ぶからいいじゃない。お互い名前長いし」
「では愛称で呼べばいいでしょう。貴女の事はこれからユフィと呼びますから、ユフィは俺をレオンと呼んでください。同じ三文字ですからこれでいいでしょう」
なんだそれは、といいたい。心の中では王太子様やあんたって名前よりひどい、野郎と呼んでいる事はバレてはいけない気がした。いや、気じゃなくてバレてはいけない。
「いやっていうかなんで今更呼び方? 別に今まで困らなかったんだからこれまで通りでいいじゃない」
「ふぅ……雰囲気は本当に読めませんねぇ。これでも俺なりには頑張ったつもりなんですが。でもそれがユフィなのだから仕方がないでしょう。そうですね、簡単に言いましょうか」
「で? 理由は?」
「側妃を迎えるのは面倒事を背負い込むリスクがあると気が付きましたので、なら慣れている貴女で手を討とうと思ったのですよ。父や母が、どうしてユフィーちゃんがいないの、お前が情けないからだと煩くて仕方がありません。さらに側妃を迎えれば煩さが二倍になりそうでしてね」
手を打つってなんだ、もしかして子どもを産んで欲しいとか本気で勘弁してほしい。
「絶対嫌よ。仕事のパートナーよ。それ以外はないわ」
「仮にも夫に対する言葉ですか。誰も子を産めとか言いませんよ。俺には弟がいます。弟が結婚して子どもを作るまで我慢したらいいのです。その子どもを次期王太子にすればいい。それまでカモフラージュで貴女と仲良くしているフリをしたいのです」
「何で部屋まで引っ張ったの?」
「最近急に仲良くなったようだと噂が広まれば、側妃の話も断りやすくなるでしょう」
そんなに嫌か側妃を持つことが、と言いたいのを抑えた。どうやら野郎の行動を見るにきっと義父・義母の圧力が掛かっていたに違いない。そこで血迷って子どもを産めとか言って来たら引っぱたいてやるが、弟の子どもを世継ぎにとは中々良い案の気がする。
野郎の弟は良い奴だ。物語なら兄を引きずって自分が王位継承者に、という悪役ポジションだが実際は王位なんていーらないって言っちゃう人だ。きっと彼の子どもなら良い奴に育つに違いない。これは作戦変更して、義弟のお見合いを整えてあげる方がいいのかもしれない。
「あ、違う違う」
「何がです?」
「世継ぎはそれでいいとして、精神的支えの件が片付いてないわ」
そうだ。王様に頼まれた野郎を支えるポジションが空白なのには変わりがないではないか。やはり側妃は必要だ。うん。
「は?」
「こっちの問題よ。やっぱり側妃は必要よ。だって義弟なんて子供どころか結婚からでしょうが」
一瞬義弟子ども世継ぎ作戦はありかと思ったが、なしだ。精神的支えポジションの側妃様と野郎の間に子どもが出来た場合、争いごとのタネになりうるからだ。それに義弟は言った通り王位継承に興味がない。むしろ兄を立てる傾向にある彼では、もしかしたら兄夫婦に子どもが出来ないと結婚しないとか言いだしそうだ。うん、絶対言うよ。兄命だからね。
すっごい睨んでくる野郎に、同じくらい睨み返してやった。
本当にいつまで抱きしめているつもりなんだ。もういい加減離れたい。それこそ人目もないんだから抱き着こうが、胡坐かこうが、誰も見ていないんだから変わりはしない。
「ジェラールは嘘つきですね。ユフィにはどうやら無意味の様です」
パッ拘束が解除され、取りあえず一歩後ずさって野郎との距離を開ける。
「ジェラールってジェラール・ワイマール公爵子息の事?」
「おや、名前を聞いただけで分かりますか」
「貴族に何人かジェラールって名前の人はいるけど、貴方の周りってなると彼が一番近いかなって思っただけよ」
「いえね、そのジェラールがどんな女性でも抱きしめてプレゼントを渡せばいう事を聞いてくれるんだって言ってましたから、貴女にカモフラージュを協力願うために試してみたのですよ」
確かジェラールは今騎士団の一部隊を任せられている隊長だったはずだが、さっぱり夜会に出ない私には人となりが全然浮かばない。この世継ぎ&支えポジションの問題が片付いたら夜会には参加してちゃんと人の顔覚えなきゃと再認識した。
「抱きしめ、はやってたからいいけどプレゼントがないわよ」
「用意してますよ」
ポッケから小さな箱を出した野郎は私に渡してくるので受け取って中身を開いた。
「……なんで私にこれ! これ違う子にやってくれたら後は話まとめるのに!」
脱力した。信じられないセンスの持ち主だ。しかしこれを夜会とか人目があるところで違う子にうっかりしてくれていたら、問題は一気に片付いたのに。いや、今は人目がない。私が見た事実を知るのは私と野郎だけ。閉じれば問題なしだ。未開封のプレゼントと言い張ろう。
パカっともう一回閉じた。
「何で閉じたんです?」
「これもう一回ポッケに戻させて」
「嫌ですよ。作戦は失敗しましたが貴女へのプレゼントですから受け取ってください」
「いいからもう一回持っときなさいよ」
「なんでですか。俺が持ってても意味がないですから」
「あるのよ。私じゃない他の令嬢に同じことしてジェラールが正しいかどうか確かめてらっしゃい」
「それこそなんでですか……。ユフィ以外にすることに意味なんかありません」
「大ありよ。いいからほらっ、抵抗しないでよ」
二人で小さな箱を持って押し付け合いをしていると、ノックもなしに野郎の部屋の扉が開く。そこには野郎の執事が立っていて、この状況に顔色一つ変えず頭を下げる。
「お邪魔して申し訳ありませんが、パーティの時刻を一刻は過ぎております」
瞬間、頭の中がさっと白くなる。やっちまったー。途中からパーティの事なんて消し飛んでいた。
「ほら、これは貴女が持っていてください。いらなければ貴女が捨ててください」
そう言って小さな箱を押し付けて足早に野郎は部屋を出て行った。
なんか取りあえず作戦をきちんと練って野郎に側妃を持ってもらわなければいけまい。
小さな箱をもう一回開けるとそこには金色に輝く指輪がある。デザインはシンプルだが、ワンポイントとして紅く輝く宝石が施されており、まぁ趣味は悪くないんじゃないかと思う。
(他の子に渡してくれればプロポーズみたいだったのに……)
本当、他の子にしててくれたら腹黒いおっさん共と共闘して側妃に召し上げられたのに、残念すぎるわ……。
0
あなたにおすすめの小説
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
政略結婚のはずでしたが、黒の公爵に「君を愛するつもりしかない」と言われました。
ちよこ
恋愛
没落寸前のエーデル伯爵家の令嬢ルイーズは、この国最大の権勢を誇る黒の公爵エルハルトと政略婚を結ぶことになった。
釣り合わない縁談に社交界はざわめいたが、ルイーズは「家同士の利害が一致した取引に過ぎない」と割り切っていた。
ところが初夜、公爵は開口一番こう言った。
「私は君を愛するつもりしかない」
政略婚のつもりでいた令嬢と、最初から決めていた公爵の、少し不器用な初夜の話。
【王国内屈指の公爵家の令嬢ですが、婚約破棄される前に婚約破棄しました。元婚約者は没落したそうですが、そんなの知りません】
はくら(仮名)
恋愛
更新はマイペースです。
本作は別名義で『小説家になろう』にも掲載しています。
不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない
翠月 瑠々奈
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。
始めは夜会での振る舞いからだった。
それがさらに明らかになっていく。
機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。
おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。
そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?
「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」
まさき
恋愛
社畜OLの白瀬凛は、過労死した翌朝、異世界の侯爵令嬢アリア・ヴェルナーとして目を覚ました。
転生初日。
婚約者であるシュルツ公爵令息から、一方的に告げられる。
「君は無能だ。この婚約は破棄する」
行き場を失ったアリアが選んだのは、王城のメイドに志願すること。
前世でブラック企業に鍛えられた凛には、武器があった。
——人を動かす技術。業務を改善する知識。そして、折れない心。
雑用メイドからスタートした凛は、現代の知識を武器に王城を変えていく。
サボり魔、問題児、落ちこぼれ——誰もが見捨てたメイドたちが、次々と凛に懐いていく。
そして転生からわずか一年。
凛は王城に仕える500人のメイドを束ねる、史上最年少メイド長となっていた。
「——なぜ、君がここに」
国王主催の晩餐会。
青ざめた顔で立ち尽くす元婚約者の前で、500人のメイドたちが一斉に頭を下げる。
「アリア・ヴェルナー・メイド長。晩餐会の準備が整いました」
私を捨てたあの日、あなたの後悔も始まっていたのです。
——もう、遅いですけれど。
断罪予定の悪役令嬢ですが、王都でカフェを開いたら婚約者の王太子が常連になりました
由香
恋愛
公爵令嬢エリザベートは、自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生していることに気付く。
このままでは一年後の夜会で婚約破棄され、断罪された上で国外追放されてしまう運命だ。
「――だったら、その前に稼げばいいわ!」
前世の記憶を頼りに、王都の裏通りで小さなカフェを開くことにしたエリザベート。
コーヒーやケーキは評判となり、店は少しずつ人気店へと成長していく。
そんなある日、店に一人の青年が現れる。
落ち着いた雰囲気のその客は、毎日のように通う常連になった。
しかし彼の正体は――なんと婚約者である王太子レオンハルトだった!?
破滅回避のために始めたカフェ経営が、やがて運命を変えていく。
これは、悪役令嬢が小さなカフェから幸せを掴む
ほのぼのカフェ経営×溺愛ロマンスストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる