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第1章:魔女の王と娘
4:ろうそくに願いを
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家に帰り、夕食を兼ねたリリーの7歳の誕生日を開くことにした。
二人が住んでいるのは二階建てのドーム型のログハウス。
あまり大きいとはいえないが、テラス付きで、湖畔のすぐ隣という好立地なため、母娘は満足していた。
夏になったら湖で泳いだり、魚を獲ったり、夜になると庭でキャンプファイヤーやジャンヌの魔法の花火を一緒にやったりするのが定番の楽しみだ。
「ほら、できたぞ。」
ジャンヌが手料理を持ってきた。
冬野菜のサラダにフィッシュアンドチップス、鶏肉のアヒージョとバスケット。
そして、直径20cmほどのイチゴのムースケーキ。
その上には7本のろうそくが刺さっている。
「おお~気合い入ってるね~♪」
「娘の誕生日だからな。ではいただくとしよう。分かっていると思うが・・・。」
「ケーキは食後に・・・でしょ♪ボクだってもう7歳だよ?つまみ食いするワケないじゃ~ん。」
「一昨日私の干し桃をくすねたのは誰だったかな?」
「むっ・・・!?いっ、痛いトコついてくねママ・・・。」
◇◇◇
ご飯を平らげ、いよいよケーキを食べることになった。
「では、メインイベント。」
ジャンヌがパチンと指を鳴らすと、部屋の灯りが消えてろうそくに火が灯った。
「毎年思うけどさ、カッコ付けてない?指パッチンなくてもできるくね?」
「雰囲気づくりだ。特別な催しには周りの情景が何より見られる。」
「ママのそれは情景になってないと思うけど?」
「いいからろうそくを消せ。それともケーキを消すか?」
「待ち待ち待ち!!も~ママったらす~ぐにムキになるんだから。」
リリーがろうそくを吹き消そうとした時、ジャンヌが止めた。
「なに?」
「お前ももう7歳だ。この国で7歳というのはだな、自分の中の物心がはっきり形作られる、いわば門出年だ。7歳の誕生日の際にろうそくを消す時はな、自分が将来なりたい物への目標を思い浮かべながら、ろうそくを消すのが習わしだ。さすれば叶うと言われておるぞ?」
「ほんとにぃ?」
「やるだけやってみろ。願掛けだと思って。」
「ボクのなりたいもの・・・ねぇ~。」
リリーは頭の中で一つだけ思い浮かべて、ろうそくを勢いよく吹き消した。
その直後、ジャンヌが部屋の灯りを指を鳴らして点けた。
「おめでとう。」
「えへへ・・・♪ど~も~。」
リリーは照れ臭い笑顔をジャンヌに見せた。
ナイフで切り分けたケーキを、ジャンヌとリリーが頬張る。
「おいひ~♪」
「だろう?生命魔法で創造した農園で丹精込めて育てたからな。今日この日のために。」
「やっぱすごいな~ママは。早速さっきの自信なくなっちゃった・・・。」
「さっき?」
「ママみたいなすごい魔女になれますように。ろうそく消す時そう願いごとしたの。」
「・・・・・・・。」
フォークを皿に置き、ジャンヌはリリーをじっと見る。
「どしたの?」
「お前は私のようになる必要はないぞ、リリー。」
「なんで?」
「お前を産む前の私は無知だった。それ故愚かな行い重ねた。私がお前の年の頃は、全く利発的ではなかった。」
「りはつてき?」
「自分から何でもするような子ではなかった・・・という意味だ。」
「ボクのことワガママな子って思ってない?」
「そうでな・・・いや、確かにお前ほどワガママで行動力のある子はいないなぁ。」
「なにウンウンしてんの!?ボクだってガマンはできるよ!?」
「ははっ、そうだな。たまにではあるが、な。」
「も~!!」
話をはぐらかされたような気がして、リリーはガツガツとケーキを食べた。
「そういえば、今年の誕生日プレゼントは!?」
「あっ・・・。」
「なに❝あっ・・・。❞って?」
「ここ最近忙しく・・・。」
「ええっ!?用意してないのぉ~!?」
「悪い悪い。また明日、何か良い物をあげるからむくれるな。」
「むぅ・・・。6歳の時よりいいものあげてよね!?」
「分かった。約束す・・・ッッッ!!!」
突然ジャンヌがリリーを抱えて家を飛び出した。
その刹那、二人がさっきまでいた生家に雷が落ち、轟々と燃え盛る。
「あの不意打ちに対応するとはさすがじゃのう。」
雷を落としたと思しき者がジャンヌを褒め称えた。
紺のローブを着用した、リリーとは倍ほど年齢が離れた少女。
頬は少し痩せているが端正で、髪はグレーの癖毛。
手には自分の身長と同じくらいの、白く輝く剣が握らていた。
「いきなり無粋極まりないマネをするではないか小娘。」
「小娘・・・か。人を見かけで判断せぬ方が良いぞ?」
「まぁいい。お前は誰で、何用だ?」
「聖天教会庁魔祓い部東方主任異端審問官マリア・ガブリエル。命によりお前を討伐に来た。魔女ジャンヌ。」
二人が住んでいるのは二階建てのドーム型のログハウス。
あまり大きいとはいえないが、テラス付きで、湖畔のすぐ隣という好立地なため、母娘は満足していた。
夏になったら湖で泳いだり、魚を獲ったり、夜になると庭でキャンプファイヤーやジャンヌの魔法の花火を一緒にやったりするのが定番の楽しみだ。
「ほら、できたぞ。」
ジャンヌが手料理を持ってきた。
冬野菜のサラダにフィッシュアンドチップス、鶏肉のアヒージョとバスケット。
そして、直径20cmほどのイチゴのムースケーキ。
その上には7本のろうそくが刺さっている。
「おお~気合い入ってるね~♪」
「娘の誕生日だからな。ではいただくとしよう。分かっていると思うが・・・。」
「ケーキは食後に・・・でしょ♪ボクだってもう7歳だよ?つまみ食いするワケないじゃ~ん。」
「一昨日私の干し桃をくすねたのは誰だったかな?」
「むっ・・・!?いっ、痛いトコついてくねママ・・・。」
◇◇◇
ご飯を平らげ、いよいよケーキを食べることになった。
「では、メインイベント。」
ジャンヌがパチンと指を鳴らすと、部屋の灯りが消えてろうそくに火が灯った。
「毎年思うけどさ、カッコ付けてない?指パッチンなくてもできるくね?」
「雰囲気づくりだ。特別な催しには周りの情景が何より見られる。」
「ママのそれは情景になってないと思うけど?」
「いいからろうそくを消せ。それともケーキを消すか?」
「待ち待ち待ち!!も~ママったらす~ぐにムキになるんだから。」
リリーがろうそくを吹き消そうとした時、ジャンヌが止めた。
「なに?」
「お前ももう7歳だ。この国で7歳というのはだな、自分の中の物心がはっきり形作られる、いわば門出年だ。7歳の誕生日の際にろうそくを消す時はな、自分が将来なりたい物への目標を思い浮かべながら、ろうそくを消すのが習わしだ。さすれば叶うと言われておるぞ?」
「ほんとにぃ?」
「やるだけやってみろ。願掛けだと思って。」
「ボクのなりたいもの・・・ねぇ~。」
リリーは頭の中で一つだけ思い浮かべて、ろうそくを勢いよく吹き消した。
その直後、ジャンヌが部屋の灯りを指を鳴らして点けた。
「おめでとう。」
「えへへ・・・♪ど~も~。」
リリーは照れ臭い笑顔をジャンヌに見せた。
ナイフで切り分けたケーキを、ジャンヌとリリーが頬張る。
「おいひ~♪」
「だろう?生命魔法で創造した農園で丹精込めて育てたからな。今日この日のために。」
「やっぱすごいな~ママは。早速さっきの自信なくなっちゃった・・・。」
「さっき?」
「ママみたいなすごい魔女になれますように。ろうそく消す時そう願いごとしたの。」
「・・・・・・・。」
フォークを皿に置き、ジャンヌはリリーをじっと見る。
「どしたの?」
「お前は私のようになる必要はないぞ、リリー。」
「なんで?」
「お前を産む前の私は無知だった。それ故愚かな行い重ねた。私がお前の年の頃は、全く利発的ではなかった。」
「りはつてき?」
「自分から何でもするような子ではなかった・・・という意味だ。」
「ボクのことワガママな子って思ってない?」
「そうでな・・・いや、確かにお前ほどワガママで行動力のある子はいないなぁ。」
「なにウンウンしてんの!?ボクだってガマンはできるよ!?」
「ははっ、そうだな。たまにではあるが、な。」
「も~!!」
話をはぐらかされたような気がして、リリーはガツガツとケーキを食べた。
「そういえば、今年の誕生日プレゼントは!?」
「あっ・・・。」
「なに❝あっ・・・。❞って?」
「ここ最近忙しく・・・。」
「ええっ!?用意してないのぉ~!?」
「悪い悪い。また明日、何か良い物をあげるからむくれるな。」
「むぅ・・・。6歳の時よりいいものあげてよね!?」
「分かった。約束す・・・ッッッ!!!」
突然ジャンヌがリリーを抱えて家を飛び出した。
その刹那、二人がさっきまでいた生家に雷が落ち、轟々と燃え盛る。
「あの不意打ちに対応するとはさすがじゃのう。」
雷を落としたと思しき者がジャンヌを褒め称えた。
紺のローブを着用した、リリーとは倍ほど年齢が離れた少女。
頬は少し痩せているが端正で、髪はグレーの癖毛。
手には自分の身長と同じくらいの、白く輝く剣が握らていた。
「いきなり無粋極まりないマネをするではないか小娘。」
「小娘・・・か。人を見かけで判断せぬ方が良いぞ?」
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