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第2章:異端審問官の学び舎
13:棘だらけ天使令嬢
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リリーとアイリスの制服の着付けが終わって、五人は遅めの朝食をレストランで食べている。
「へぇ~ライラさんとルシールさんって、せんせいの学校の卒業生なんですか。」
アイリスの双子の姉のライラとルシールとも、リリーはすっかり打ち解けていた。
「もうスパルタスパルタで大っ変だったのよ!!」
「人を人として見てないね~。」
活発な性格な姉のライラと比べて妹のルシールはおっとりめだ。
「よく言うわい。真逆な性分なクセして馬が合い過ぎて手を焼かせたのはどこの二人じゃったかな?」
軽口を叩くマリアの口ぶりから、この双子がいかに問題児であったか読み取れる。
それでも決して邪険に接してないことから、マリアが二人に親しみを込めているのも分かる。
手を焼いた子ほどかわいいとはこのことか。
「お、おねえちゃん・・・。養成学校の、授業って、やっ、やっぱり・・・?」
「入学仕立ての頃は魔女が作ったアンデッドと戦わされるよ!!」
「そんで氷魔法の実習で氷漬け~。」
「いや~!!!怖い~!!!」
「二人とも!妹にホラを吹き込むでない!」
怖がるアイリスと叱るマリアをよそにライラとルシールはケラケラ笑った。
「ほっ、ホラ?」
「そんなんするワケないじゃ~ん!!」
「アイリスはおちょくり甲斐がある。面白い~。」
「もっ、もう~!!」
学長であるマリアから注釈を入れられて、アイリスはようやく自分が姉たちに脅かされていたことに気付き、プンプンと頬を膨らました。
「なんだ~。残念・・・。」
「「え???」」
何故か残念がるリリーに、悪ノリを楽しんでいた双子が目を大きく開いて驚いた。
◇◇◇
朝食を済ませ次は教科書と羽根ペン等の筆記用具の購入。
慣れない制服に着心地の悪さを感じつつも、リリーとアイリスは店を一緒に回った。
「えっ~と、どれにしよっかな~?」
羽根ペンペンを二本手に取って、リリーはそれらを見比べる。
「りっ、リリーはなにを考えて、選ぶの?」
「そ~ね~。やっぱボクが大事にするのは長持ちするかどうかかな?」
「長、持ち?」
「ほら羽根ペンってさ、使ってる内に先が丸っこくなるわ中が折れやすくなるわで、変えるのにキリがなくなんのよ~。それをちょっとでも少なくすんのに、慎重に選ぶの。」
「わっ、分かるの?」
「前に暮らしてた家で使うのが多かったから大体はね?」
「へっ、へぇ~・・・。」
「よし、こっちにしよっ。」
「もっ、もう決めた、の?」
「見てみ。こっちの方が白みが濃いでしょ?これって中に固いタンパク質が詰まってる証拠なんだ。こういうのって結構長持ちすんだよね~。」
今まで知らなかったことを説明するリリーに、アイリスは感心した。
「じゃあ、私も、これに、しよっかな?」
「うん。おすすめだよ。あとはインクだね~・・・ぅおっと!」
インクの棚に行こうとしたら、隣でペンを選んでいる女の子とぶつかった。
「あっ、ごめんなさい。見えなかったもんで・・・」
「気安く触れないで下さらない?下民。」
金髪の女の子は、端正な顔立ちについた鋭い目つきでリリーとアイリスを睨みつけた。
「げみんって、ボク達のこと?」
「他に誰がいるのですか?こんな苔みたいな汚らわしい髪して・・・まぁ~。」
リリーの髪の先をつまむ女の子の手を、アイリスは振り払った。
「ちょっ、ちょっと。やっ、やめなよ。」
頑張って抗議の声を上げたアイリスに、女の子は耳に手を当てて挑発した。
「きっ、聞いてるの・・・?」
「ごめんなさい。わたくし果物の言葉は分からないのですの。あなた新種の桃でしょ?」
「あっ、あのね・・・!!」
掴みかかろうとしたアイリスを見て、ひと悶着が起こっていると察したマリアとアイリスの双子の姉たちが駆けつけた。
「なんの騒ぎじゃ?」
「あっ、せんせい。」
「むっ。お主は・・・。」
女の子の顔にマリアは見覚えがあるようだった。
「これはこれは。ガブリエル家のご当主様ではありませんか。お会いできて光栄です。」
女の子はスカートの裾をたくし上げてマリアに挨拶した。
ライラとルシールを無視して。
「アタシらは眼中にないってことかねルシール?」
「クソガキ甚だしいね~ライラ。」
陰口を叩く二人に女の子は舌打ちをした。
「教養がない下民の分際でわたくしをバカにするなど・・・!!」
怒りを露わにする女の子の肩を、同じ金髪の男が押さえて制した。
「これディアナ失言は控えなさい。」
「おっ、お父様・・・。」
父親に諭され、ディアナは後ろに下がった。
「すまないマリア。娘がとんだ無礼を。」
「構わん。これから面倒を見る生徒の人となりを知るいい機会になった、ボレアリス。」
「ぼっ、ボレアリスってあの!?」
「げげ~。引くわ~。」
露骨に嫌悪感を見せるライラとルシールにリリーは聞いた。
「知ってる人ですか?」
「ミカエル家の当主だよ。」
「ミカエル家?」
「マリア先生と同じ異端審問官の七大名家の一個だよ。まぁだ~いぶ勘違い激しいけどね~。」
「勘違い?」
天使の血を引いていると謂われている異端審問官の七大名家の中で、ミカエル家は最も栄えた一族であり、異端審問官の王家を自称していた。
「へぇ~ライラさんとルシールさんって、せんせいの学校の卒業生なんですか。」
アイリスの双子の姉のライラとルシールとも、リリーはすっかり打ち解けていた。
「もうスパルタスパルタで大っ変だったのよ!!」
「人を人として見てないね~。」
活発な性格な姉のライラと比べて妹のルシールはおっとりめだ。
「よく言うわい。真逆な性分なクセして馬が合い過ぎて手を焼かせたのはどこの二人じゃったかな?」
軽口を叩くマリアの口ぶりから、この双子がいかに問題児であったか読み取れる。
それでも決して邪険に接してないことから、マリアが二人に親しみを込めているのも分かる。
手を焼いた子ほどかわいいとはこのことか。
「お、おねえちゃん・・・。養成学校の、授業って、やっ、やっぱり・・・?」
「入学仕立ての頃は魔女が作ったアンデッドと戦わされるよ!!」
「そんで氷魔法の実習で氷漬け~。」
「いや~!!!怖い~!!!」
「二人とも!妹にホラを吹き込むでない!」
怖がるアイリスと叱るマリアをよそにライラとルシールはケラケラ笑った。
「ほっ、ホラ?」
「そんなんするワケないじゃ~ん!!」
「アイリスはおちょくり甲斐がある。面白い~。」
「もっ、もう~!!」
学長であるマリアから注釈を入れられて、アイリスはようやく自分が姉たちに脅かされていたことに気付き、プンプンと頬を膨らました。
「なんだ~。残念・・・。」
「「え???」」
何故か残念がるリリーに、悪ノリを楽しんでいた双子が目を大きく開いて驚いた。
◇◇◇
朝食を済ませ次は教科書と羽根ペン等の筆記用具の購入。
慣れない制服に着心地の悪さを感じつつも、リリーとアイリスは店を一緒に回った。
「えっ~と、どれにしよっかな~?」
羽根ペンペンを二本手に取って、リリーはそれらを見比べる。
「りっ、リリーはなにを考えて、選ぶの?」
「そ~ね~。やっぱボクが大事にするのは長持ちするかどうかかな?」
「長、持ち?」
「ほら羽根ペンってさ、使ってる内に先が丸っこくなるわ中が折れやすくなるわで、変えるのにキリがなくなんのよ~。それをちょっとでも少なくすんのに、慎重に選ぶの。」
「わっ、分かるの?」
「前に暮らしてた家で使うのが多かったから大体はね?」
「へっ、へぇ~・・・。」
「よし、こっちにしよっ。」
「もっ、もう決めた、の?」
「見てみ。こっちの方が白みが濃いでしょ?これって中に固いタンパク質が詰まってる証拠なんだ。こういうのって結構長持ちすんだよね~。」
今まで知らなかったことを説明するリリーに、アイリスは感心した。
「じゃあ、私も、これに、しよっかな?」
「うん。おすすめだよ。あとはインクだね~・・・ぅおっと!」
インクの棚に行こうとしたら、隣でペンを選んでいる女の子とぶつかった。
「あっ、ごめんなさい。見えなかったもんで・・・」
「気安く触れないで下さらない?下民。」
金髪の女の子は、端正な顔立ちについた鋭い目つきでリリーとアイリスを睨みつけた。
「げみんって、ボク達のこと?」
「他に誰がいるのですか?こんな苔みたいな汚らわしい髪して・・・まぁ~。」
リリーの髪の先をつまむ女の子の手を、アイリスは振り払った。
「ちょっ、ちょっと。やっ、やめなよ。」
頑張って抗議の声を上げたアイリスに、女の子は耳に手を当てて挑発した。
「きっ、聞いてるの・・・?」
「ごめんなさい。わたくし果物の言葉は分からないのですの。あなた新種の桃でしょ?」
「あっ、あのね・・・!!」
掴みかかろうとしたアイリスを見て、ひと悶着が起こっていると察したマリアとアイリスの双子の姉たちが駆けつけた。
「なんの騒ぎじゃ?」
「あっ、せんせい。」
「むっ。お主は・・・。」
女の子の顔にマリアは見覚えがあるようだった。
「これはこれは。ガブリエル家のご当主様ではありませんか。お会いできて光栄です。」
女の子はスカートの裾をたくし上げてマリアに挨拶した。
ライラとルシールを無視して。
「アタシらは眼中にないってことかねルシール?」
「クソガキ甚だしいね~ライラ。」
陰口を叩く二人に女の子は舌打ちをした。
「教養がない下民の分際でわたくしをバカにするなど・・・!!」
怒りを露わにする女の子の肩を、同じ金髪の男が押さえて制した。
「これディアナ失言は控えなさい。」
「おっ、お父様・・・。」
父親に諭され、ディアナは後ろに下がった。
「すまないマリア。娘がとんだ無礼を。」
「構わん。これから面倒を見る生徒の人となりを知るいい機会になった、ボレアリス。」
「ぼっ、ボレアリスってあの!?」
「げげ~。引くわ~。」
露骨に嫌悪感を見せるライラとルシールにリリーは聞いた。
「知ってる人ですか?」
「ミカエル家の当主だよ。」
「ミカエル家?」
「マリア先生と同じ異端審問官の七大名家の一個だよ。まぁだ~いぶ勘違い激しいけどね~。」
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