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第2章:異端審問官の学び舎
21:ない光る物
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リリー、アイリスと入学に必要な概装天使との契約を続けて完了させ、残すはディアナのみとなった。
「さてディアナよ。最後はお主の番じゃ。芯の強いお主のことだ。案ずることはなかろう。」
「がっ、ガブリエル家の奴に心配されても、嬉しくないですよ・・・!」
「リリーの正体を知ってもなお、その威勢を崩さぬか。ははっ。中々に度胸があるのぅ。」
からかうようなマリアの口ぶりが酷く癪に障り、ディアナは一切返事を返すことなくアダミエルの結晶へと歩いた。
「ディアナ~!!頑張って~!!」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「ちょっ・・・!?」
リリーがエールを送った途端、ディアナは数秒静止し、かと思ったらつかつかとリリーのところまで歩いていって胸倉を掴んだ。
「やっ、止め、、、なよ・・・。」
「うるさいッッッ!!!」
マズいと思って恐る恐る止めに入ったアイリスに、ディアナは容赦ない怒声を浴びせた。
「いけしゃあしゃあとふざけた態度取って、ムカつくんですよ・・・!お前の考えてることなんか、わたくしには全部お見通しなんですからね。どれだけ友好的に振る舞ったところで、お前は魔女の娘。言うなればゴミの欠片みたいなものですよ?わたくしはお前なんかを、異端審問官とは・・・認めませんから!」
台所に沸いたゴキブリでも見るかのような冷徹極まりない眼差しと口調で、ディアナはリリーに言い放った。
胸倉を掴まれ、心無い言葉を浴びせられ、誰でも激昂し殴り合いに発展しかねない状況だが、リリーは良く解ってないと言わんばかりに目をまん丸にした。
「ゴミ?もしかして今のボク、臭い?まいったな~!一応昨日シャワー浴びたんだけどなぁ~。」
「くっ・・・!!」
胸倉を掴んだままリリーを投げ捨てようとしたディアナだったが、リリー自身はアイリスが咄嗟に受け止めたことで倒れずに済んだ。
「だい、、、じょうぶ・・・?」
「ディアナったらボクの何が気に入らないんだろうね~?」
「気に、、しない、方が、、、いいよ?」
「そりゃ~ダメでしょ!!ムカつくなんかをしてしまったらちゃんと謝る!人っていう喋れる動物ができる一番の歩み寄り!ってママも言ってたし。」
「ほんとに、、お母さん、好きなんだ、、ね。」
「ママはボクの一番のお手本だよ!?好きなのは当然っ!」
胸を張れるほど誇れる母への尊敬と、普通ならば気を荒げる侮辱と暴力にも一切動じない純粋さを見て、アイリスはリリーに脱帽せずにはいられなかった。
◇◇◇
アダミエルの結晶の前に着いたディアナは、堂々とした佇まいで結晶と相対した。
『ディアナ・ミカエル。』
「そうよ!わたくしは異端審問官の王家のミカエル家の人間です!礼を失することのないように!!」
本来ならば試験を受ける側であるはずのディアナは、試験を監督する立場にあるアダミエルに目上の者の言動を取った。
『ミカエル家の人間は、私がここに顕現してから多く見てきました。あなたも例に漏れず、高貴ですが傲慢な物言いをするのですね?』
「事実を言ったまでです。余計な勘違いをしないように!」
『分かりました。では、あなたの魂を垣間見た率直な意見を述べましょう。』
先の二人のように、アダミエルはディアナの魂から彼女の人物評価を行なった。
『あなたには・・・これといって光る物がありませんね。』
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「は?」
あまりにも淡白に告げられた評価に、ディアナは思わず固まってしまった。
「光る物がないって・・・どういうこと?」
『言葉の意味ですよ?あなたには異端審問官を志す核となる魂の清らかさや熱い信念がまるで感じられない。あなたの中にあるのは・・・承認欲と恐れのみ。由緒正しい家柄の娘として他の者に崇められたくて、家の名に傷を付け、泥を塗って失望させることを、死よりも怖がっている。見飽きるほど、凡百な魂。』
「ちょっ、ちょっと待ちなさいよッッッ!!!もう一度・・・もう一度よく見なさいよ!!わたくしの魂は、そんなにありふれた物じゃないわよッッッ!!!」
『いいえ。私の目は全ての人間の魂を見通せます。何より今のあなたの言動が如実に物語っています。』
辛辣な評価を投げられたディアナは、だらだらと冷や汗をかき、激しさを増す心臓の鼓動が肋骨の裏を打ちつける。
それはアダミエルが指摘した、格式高いミカエル家として畏敬の念を向けられるという彼女の常識が崩れ去る混乱と、一族の者から失望されることへの恐怖。
「そんな・・・!!こっ、こんなはずじゃ・・・!!」
動揺のあまり視界が定まらず、頭を抱えるディアナに、アダミエルは恐れていたトドメの一言を投げた。
『あなたには、天使を授けることはできませんね。』
それは、異端審問官養成学院への入学が叶わないことを意味していた。
「さてディアナよ。最後はお主の番じゃ。芯の強いお主のことだ。案ずることはなかろう。」
「がっ、ガブリエル家の奴に心配されても、嬉しくないですよ・・・!」
「リリーの正体を知ってもなお、その威勢を崩さぬか。ははっ。中々に度胸があるのぅ。」
からかうようなマリアの口ぶりが酷く癪に障り、ディアナは一切返事を返すことなくアダミエルの結晶へと歩いた。
「ディアナ~!!頑張って~!!」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「ちょっ・・・!?」
リリーがエールを送った途端、ディアナは数秒静止し、かと思ったらつかつかとリリーのところまで歩いていって胸倉を掴んだ。
「やっ、止め、、、なよ・・・。」
「うるさいッッッ!!!」
マズいと思って恐る恐る止めに入ったアイリスに、ディアナは容赦ない怒声を浴びせた。
「いけしゃあしゃあとふざけた態度取って、ムカつくんですよ・・・!お前の考えてることなんか、わたくしには全部お見通しなんですからね。どれだけ友好的に振る舞ったところで、お前は魔女の娘。言うなればゴミの欠片みたいなものですよ?わたくしはお前なんかを、異端審問官とは・・・認めませんから!」
台所に沸いたゴキブリでも見るかのような冷徹極まりない眼差しと口調で、ディアナはリリーに言い放った。
胸倉を掴まれ、心無い言葉を浴びせられ、誰でも激昂し殴り合いに発展しかねない状況だが、リリーは良く解ってないと言わんばかりに目をまん丸にした。
「ゴミ?もしかして今のボク、臭い?まいったな~!一応昨日シャワー浴びたんだけどなぁ~。」
「くっ・・・!!」
胸倉を掴んだままリリーを投げ捨てようとしたディアナだったが、リリー自身はアイリスが咄嗟に受け止めたことで倒れずに済んだ。
「だい、、、じょうぶ・・・?」
「ディアナったらボクの何が気に入らないんだろうね~?」
「気に、、しない、方が、、、いいよ?」
「そりゃ~ダメでしょ!!ムカつくなんかをしてしまったらちゃんと謝る!人っていう喋れる動物ができる一番の歩み寄り!ってママも言ってたし。」
「ほんとに、、お母さん、好きなんだ、、ね。」
「ママはボクの一番のお手本だよ!?好きなのは当然っ!」
胸を張れるほど誇れる母への尊敬と、普通ならば気を荒げる侮辱と暴力にも一切動じない純粋さを見て、アイリスはリリーに脱帽せずにはいられなかった。
◇◇◇
アダミエルの結晶の前に着いたディアナは、堂々とした佇まいで結晶と相対した。
『ディアナ・ミカエル。』
「そうよ!わたくしは異端審問官の王家のミカエル家の人間です!礼を失することのないように!!」
本来ならば試験を受ける側であるはずのディアナは、試験を監督する立場にあるアダミエルに目上の者の言動を取った。
『ミカエル家の人間は、私がここに顕現してから多く見てきました。あなたも例に漏れず、高貴ですが傲慢な物言いをするのですね?』
「事実を言ったまでです。余計な勘違いをしないように!」
『分かりました。では、あなたの魂を垣間見た率直な意見を述べましょう。』
先の二人のように、アダミエルはディアナの魂から彼女の人物評価を行なった。
『あなたには・・・これといって光る物がありませんね。』
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「は?」
あまりにも淡白に告げられた評価に、ディアナは思わず固まってしまった。
「光る物がないって・・・どういうこと?」
『言葉の意味ですよ?あなたには異端審問官を志す核となる魂の清らかさや熱い信念がまるで感じられない。あなたの中にあるのは・・・承認欲と恐れのみ。由緒正しい家柄の娘として他の者に崇められたくて、家の名に傷を付け、泥を塗って失望させることを、死よりも怖がっている。見飽きるほど、凡百な魂。』
「ちょっ、ちょっと待ちなさいよッッッ!!!もう一度・・・もう一度よく見なさいよ!!わたくしの魂は、そんなにありふれた物じゃないわよッッッ!!!」
『いいえ。私の目は全ての人間の魂を見通せます。何より今のあなたの言動が如実に物語っています。』
辛辣な評価を投げられたディアナは、だらだらと冷や汗をかき、激しさを増す心臓の鼓動が肋骨の裏を打ちつける。
それはアダミエルが指摘した、格式高いミカエル家として畏敬の念を向けられるという彼女の常識が崩れ去る混乱と、一族の者から失望されることへの恐怖。
「そんな・・・!!こっ、こんなはずじゃ・・・!!」
動揺のあまり視界が定まらず、頭を抱えるディアナに、アダミエルは恐れていたトドメの一言を投げた。
『あなたには、天使を授けることはできませんね。』
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