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第3章:禁じられた魔女たち
65:誘いを呼ぶ想い
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「メェ~‥‥‥!(ほぇ~一昨日いなくなった婆さんかの~?)」
「そそっ。最後に見たんでしょ?」
街の北の畑に着いたリリーは、そこで飼われている老ヤギのジョージに一昨日いなくなった老婆の手がかりを聞き出していた。
「どこに行ったかって覚えてる?」
「メェ~‥‥‥(そうじゃのう~‥‥‥)」
首を傾げてジョージは彼女の記憶をどうにか辿る。
「メェ!(そうじゃ!)」
「何!?なんか思い出した!?」
「メェ~(ここから更に北に行ったところにある公園の方に歩いていったかの~)」
「真ん中に天使の噴水があるあの公園ね?OK助かった。」
リリーはジョージにお礼の最高級飼葉をやった。
「メェ~!!(おお~ありがとよ!!)」
「いいってこと。そんじゃボクはこれで。おじさん達によろしく。」
「メェ~‥‥‥(気を付けるんだよ~。)」
ジョージと別れ、リリーは街の一番北にある公園へと向かった。
◇◇◇
「ふぅ。着いた。」
公園にやってくると、夕刻なので閑散としていたが、遊具や広場でリリーより少し年上の子ども達のグループが遊んでいた。
噴水の前でリリーはフィンリーがどこからか入手した警察の捜査資料を取り出す。
失踪者のおよそ6割の最後の目撃情報が、この公園だった。
「ここで魔法に引っ掛かったんだ。」
見立てを立てたリリーはとりあえずベンチに座って、何か起こるか待ってみることにした。
「ん~‥‥‥」
『どうしたんだいリリー?』
頬に手をやって何か小難しく考え込むリリーにサクァヌエルが話しかける。
「ねぇサクァヌエル。死んじゃった人に会っちゃったら、簡単にホイホイ付いてくもんなの?」
答えの難しい質問を投げかけられ、サクァヌエルは困惑する。
『それに答えることはボクにはできないね。ボクには人の感情というのは分からないから。だけど一般論で考えるなら、そうなんじゃないかな?』
当たり障りない答えに、リリーは組んだ手を口元にやる。
「そうなんかな~‥‥‥」
『リリーにはいないの?そういう大切な人が。』
「ママ。」
『だと言うと思った。もしもだよ。もしもジャンヌが死んで、その後リリーの前に出てきたら、やっぱり嬉しい?』
「どうだろ?経験したことないことをイメージするのはムズイからなぁ~。でももし、ママが死んじゃったらって考えると‥‥‥」
リリーの心臓の鼓動が段々激しくなり、目も潤んできた。
もしママが死んだらと考えるだけで、リリーは恐ろしくて堪らない。
自然と泣きそうになる。
胸が張り裂けそうになる。
膝の震えが止まらなくなる。
嫌だそんなの。
ずっと会いたい会いたいって思ってたのに、死んじゃうなんてあんまりだ。
あんまりだ‥‥‥。
『‥‥‥この話はあまりしない方がいいね。』
リリーの感情を読み取ったサクァヌエルが話題を切る。
「うん‥‥‥ありがと‥‥‥」
リリーは流れかけていた涙を人差し指でそっと拭う。
「でも何となく分かったよ。大切な人が死んじゃった人の気持ちが。確かに付いてっちゃうわ。」
『そうかい。』
「だからねサクァヌエル。そんな人の気持ちを言い様に利用する今回の魔女に、段々ムカついてきた。」
契約者と感情の共有を行なっているから、リリーの怒りはサクァヌエルにも伝わってくる。
彼女は今、件の魔女をブッ飛ばしくて仕方がないのだ。
『絶対にブッ飛ばそうね。』
「うん。そうするわ。」
改めて決意を固めたリリーに、ある人達が目に入ってきた。
それは一組の夫婦だったが、どうもおかしい。
妻に手招きされた夫の目の焦点が合っておらず、緩んだ虚ろな笑みからはよだれが垂れている。
「ねぇあの人達!なんか様子おかしくない!?」
『ああ。そうだね。リリー、あの手招きしてる奥さんから何か感じるかい?』
リリーは妖艶な雰囲気を醸し出し、夫を招いている妻に目を凝らす。
彼女の身体の節々に、何やら赤い糸のような巻き付いていた。
それが公園の奥の森に向かって伸びている。
「あっ!」
それが見えたリリーは急いでベンチから立ち上がり、気付かれないように後を付け始めた。
『アタリだったみたいだね。』
「考えられる魔法は一つしかない!だけどあんなに凄いのは見たことないよ!急いで追いかけよう!!」
「そそっ。最後に見たんでしょ?」
街の北の畑に着いたリリーは、そこで飼われている老ヤギのジョージに一昨日いなくなった老婆の手がかりを聞き出していた。
「どこに行ったかって覚えてる?」
「メェ~‥‥‥(そうじゃのう~‥‥‥)」
首を傾げてジョージは彼女の記憶をどうにか辿る。
「メェ!(そうじゃ!)」
「何!?なんか思い出した!?」
「メェ~(ここから更に北に行ったところにある公園の方に歩いていったかの~)」
「真ん中に天使の噴水があるあの公園ね?OK助かった。」
リリーはジョージにお礼の最高級飼葉をやった。
「メェ~!!(おお~ありがとよ!!)」
「いいってこと。そんじゃボクはこれで。おじさん達によろしく。」
「メェ~‥‥‥(気を付けるんだよ~。)」
ジョージと別れ、リリーは街の一番北にある公園へと向かった。
◇◇◇
「ふぅ。着いた。」
公園にやってくると、夕刻なので閑散としていたが、遊具や広場でリリーより少し年上の子ども達のグループが遊んでいた。
噴水の前でリリーはフィンリーがどこからか入手した警察の捜査資料を取り出す。
失踪者のおよそ6割の最後の目撃情報が、この公園だった。
「ここで魔法に引っ掛かったんだ。」
見立てを立てたリリーはとりあえずベンチに座って、何か起こるか待ってみることにした。
「ん~‥‥‥」
『どうしたんだいリリー?』
頬に手をやって何か小難しく考え込むリリーにサクァヌエルが話しかける。
「ねぇサクァヌエル。死んじゃった人に会っちゃったら、簡単にホイホイ付いてくもんなの?」
答えの難しい質問を投げかけられ、サクァヌエルは困惑する。
『それに答えることはボクにはできないね。ボクには人の感情というのは分からないから。だけど一般論で考えるなら、そうなんじゃないかな?』
当たり障りない答えに、リリーは組んだ手を口元にやる。
「そうなんかな~‥‥‥」
『リリーにはいないの?そういう大切な人が。』
「ママ。」
『だと言うと思った。もしもだよ。もしもジャンヌが死んで、その後リリーの前に出てきたら、やっぱり嬉しい?』
「どうだろ?経験したことないことをイメージするのはムズイからなぁ~。でももし、ママが死んじゃったらって考えると‥‥‥」
リリーの心臓の鼓動が段々激しくなり、目も潤んできた。
もしママが死んだらと考えるだけで、リリーは恐ろしくて堪らない。
自然と泣きそうになる。
胸が張り裂けそうになる。
膝の震えが止まらなくなる。
嫌だそんなの。
ずっと会いたい会いたいって思ってたのに、死んじゃうなんてあんまりだ。
あんまりだ‥‥‥。
『‥‥‥この話はあまりしない方がいいね。』
リリーの感情を読み取ったサクァヌエルが話題を切る。
「うん‥‥‥ありがと‥‥‥」
リリーは流れかけていた涙を人差し指でそっと拭う。
「でも何となく分かったよ。大切な人が死んじゃった人の気持ちが。確かに付いてっちゃうわ。」
『そうかい。』
「だからねサクァヌエル。そんな人の気持ちを言い様に利用する今回の魔女に、段々ムカついてきた。」
契約者と感情の共有を行なっているから、リリーの怒りはサクァヌエルにも伝わってくる。
彼女は今、件の魔女をブッ飛ばしくて仕方がないのだ。
『絶対にブッ飛ばそうね。』
「うん。そうするわ。」
改めて決意を固めたリリーに、ある人達が目に入ってきた。
それは一組の夫婦だったが、どうもおかしい。
妻に手招きされた夫の目の焦点が合っておらず、緩んだ虚ろな笑みからはよだれが垂れている。
「ねぇあの人達!なんか様子おかしくない!?」
『ああ。そうだね。リリー、あの手招きしてる奥さんから何か感じるかい?』
リリーは妖艶な雰囲気を醸し出し、夫を招いている妻に目を凝らす。
彼女の身体の節々に、何やら赤い糸のような巻き付いていた。
それが公園の奥の森に向かって伸びている。
「あっ!」
それが見えたリリーは急いでベンチから立ち上がり、気付かれないように後を付け始めた。
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