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第四章 恋愛、とやらをされたらしくて

好きな人

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 夏休みが明けて一ヶ月が経った。

放課後はよく四人で世間話をしてそれぞれ帰っていたのだが……

最近、ミラの様子が少しだけおかしい。

アーシャは気付いてないみたいだけどミレイもたまに首を傾げてるときがある。

そして、今日はそんなミラから相談に乗ってほしいと言われていた。

学校では話したくないなんて言うからカナに連絡を入れて俺の家に招待する。

ミレイとアーシャには何とか男同士の云々で誤魔化して学校で別れた。

俺の家に着いてミラを俺の部屋に入れ適当なところに座るよう促す。

ファインたちには念のため俺の部屋には近付かないように言っておいた。

ミラが座ったことを確認してから俺は口を開く。


「……それで?ミラが俺に相談だなんて珍しいじゃねぇか」


「いや、その……ミレイのこと、なんだけど……」


「は?ミレイ?ミレイのことを俺に相談してどうすんだよ?」


「そ、そうじゃなくて!シンヤはミレイが好きだから……」


「だから?」


「……好きってどんな感じなのかと……」


そう言いながらミラは顔を赤くして俯いてしまった。

俺は息を吐いて床に胡坐をかいて座りミラの顔を覗き込んだ。


「あのなー……好きの感じ方なんて人それぞれで説明出来ねぇっての」


俺がそう言うとミラは驚いたように顔を上げる。


「え?そうなの?」


「まぁ、共通してるのは気付けば相手のことを考えてるところじゃね?今、何してんのかなーとかさ」


「……相手のことを考える……シンヤはミレイのことを考えてる?」


「……まぁ、そう言うことになるな」



何だ、これ?

男同士で恋バナとかねぇだろ。

しかも、俺の相手はミラの妹だぞ?

気まずいったらないわ。



そんなことを考えてるとミラが口を開いた。


「……あのさ」


「何だよ?まさか、気になる奴でも出来たのか?」


俺がそう言うとミラの顔が一気に赤くなる。

さっきの非ではない。

その反応を見て思わずニヤリと笑い言葉を続けた。


「ほほーう?ミライヤくんにもついに春が来たってことかー」


「……シンヤ?春はとっくに過ぎたよ。今は秋と冬の中間だからまだ来ないし」


「……いや、そうなんだけどさ?え?何?ボケ?ボケなの?それともマジで言ってる?」


「大真面目だけど」


「……あー……マジかー……」


俺は頭を抱えながらため息を吐く。

その瞬間、ミラにベシッと一発叩かれる。


「いてぇっ!」


「そりゃあ、叩いたからね。シンヤの反応に腹が立ってつい」


「茶化したのは悪かったけど何も叩くことはないだろ!?」


「あーはいはい。悪かったよ」


「お前なぁ……っ!そもそも俺に相談に来たんだろ!早く相談しろよ!」


「もういいよ。シンヤに相談しようとした僕が馬鹿だった」


「何だよ、それ!言ってくれれば応援くらいするわ!相手は誰だよ?」


ミラは俺を睨み付けながらも相手のことを考えてるのか段々顔が赤くなってきて挙句の果てには顔を反らされた。


「おい。教えてくれねぇと協力も何も出来ないだろ」


俺がそう言うとミラはボソッと何かを呟いた。


「……………ア」


「え?聞こえなかった。もう一回」


「…………シア」


「ミラ、全然聞こえねぇ」


「~~ッ!アリシアだよっ!何回も言わすな!この馬鹿!!」



えぇっ!?

逆ギレかよ……

つーか、ミラがアーシャをねぇ……



思わずニヤニヤしてるとミラに睨まれる。


「……何か、言いたいことがあるならハッキリ言えば?」


「え、あ、いや!お似合いだと思うぜ!」


「……本当に思ってる?」


「あ、当たり前だろ!!だから、早くその物騒なもんを消せ!!」


俺がそう言うとミラはため息を吐きながら右手に発動していた雷の塊を消した。

それを見た俺は安堵して口を開く。


「それで?アーシャのどこが好きになったんだよ?」


「……好きって言うか、気になってるだけだよ。あんまり強くないくせに強がったり……ミレイもそう言うところあるけど何だかんだ言ってもミレイは強いし……なんか目が離せないんだよね」



それを好きって言うんだよ!!



とは言えず……

とにかくミラはアーシャをマジで好きっぽい。



これは親友である俺が何とか手を貸してやらねば!

ミラは恋には不器用そうだしなー

俺?

俺はそこまで不器用じゃねぇから大丈夫!のはず。



そこまで考えて俺はまた口を開いた。


「まぁ、アーシャと二人きりになれるように俺も協力してやるからさ。ミラも俺とミレイをくっ付ける手助けしろよ?」


「僕は手伝ってるつもりだったけど?」


「……そうだな、悪かったよ。だから、睨むなって」


「はぁ……相談相手、本当に間違えたかも……」


「……うん、あのな?そう言うこと思っても本人の前で言うなよ」


「あぁ、ごめん。つい本音が声に出た」


「それ!!それを止めろって言ってんの!!」


「え?どれ?」


「本音とか言うなって!!俺の心を抉って楽しいか!?」


「まぁ、八つ当たりには丁度良いよね」


「八つ当たりって言ってるじゃん!!つーか、扱いが酷い!!」


「え?いつも通りだよね?」


「いつも通り!?いつもはもっとマシな扱いされてるわ!!」


「それはシンヤの気のせいだよ」


「気のせい!?もう何でもいいわ!!ポジティブに考えるから!!」


「ふーん、まぁ、無理だろうけど頑張って?」


「おう!心配だから無理せず頑張れってことだよな!頑張るぜ!」


「あーはいはい。好きなように勝手に解釈しなよ」


その後もミラと色んな話をしている内に外はもう暗くなってしまって急遽ミラは泊まることになった。

ミラと一緒にご飯食べて先に風呂に入れる。

俺が風呂から上がり部屋に戻るとミラは俺のベッドを一人で占領しすでに寝ていた。

渋々、カナに布団を出してもらって床に敷いて俺も寝る。

翌朝、俺はミラに踏まれて起きるのであった――――
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