私、これからいきます。

蓮ヶ崎 漣

文字の大きさ
7 / 66

幽霊

しおりを挟む
生きるのを諦めた瞬間、大きな声で叫ばれる。
 
「手を伸ばせ!」
 
驚いて目を開けると目の前には手が伸ばされていた。
私は必死でその手を掴んだ。
手を掴むとものすごい力で引っ張られる。
ドスッという鈍い音がして、私は屋上に戻ったことを認識した。
その手はすごく冷たくて、でも力強さから男だと分かる。
 
「間に合った……」
 
「……あ、貴方、どうして私を助けたの?」
 
「どうしてって……人を助けるのに理由が必要?」
 
「それは……」
 
「でも、そうだな……あえて理由を言うとしたらアンタが必ず後悔するから、かな」
 
「ど、どうして貴方にそんなことが分かるのよ?」
 
「分かるよ。だって俺、幽霊だから」
 
「えっ……」
 
確かに手は冷たかったけど……
でも、掴めたわよ!?
 
「それに、さっき飛ばされたとき、死にたくないって思ったでしょ?」
 
「そ、それはそうだけど!でも、貴方が幽霊なんて信じられないわ!」
 
「なら、信じなければいいんじゃない?」
 
「うっ……」
 
なんか自称幽霊に正論を言われてちょっとだけ悔しい。
 
「か、仮に貴方が幽霊だったとして!なんでここにいるの?」
 
「え?そんなの簡単でしょ?俺がここで自殺したから」
 
「なっ!?」
 
自分は自殺したくせに人には自殺するなって言っていたってこと!?
 
「説得力ないじゃない!」
 
「えー?あるよ。自殺したことを俺が後悔してるから、せめて他の人が自殺して後悔にしないようにって。ど?これ以上の説得力はないと思うけど?」
 
「くっ……」
 
こんな奴が幽霊なんて思いたくない。
というか、幽霊に触れて話しているなんて認めたくないわ!
 
「な、名前!そうよ!名前教えて!」
 
「え?知ったところでどうするの?」
 
「探すわよ!貴方が幽霊じゃないって確認するために!」
 
そう言ったら自称幽霊は笑い出した。
 
「ははっ!なんだそれ?まぁ、それで自殺を止められるのなら喜んで教えるけど。俺の名前は結城大虎ゆうきたいが
 
「……漢字は?」
 
「えぇ?そこまで?本当に変な人だなぁ……結城は結ぶ土に成る城で、大虎はそのまま大きい虎だよ」
 
「結城大虎……覚えたわ。私の名前は栗山莉恵。助けてくれてありがとう。それと……」
 
私は立ち上がり靴を履き、自称幽霊こと結城大虎を振り返る。
 
「自殺を止めてくれてありがとう。また会いましょう」
 
そう言ってその場を去った。
家に帰ってすぐに遺書を取り出して破り捨てる。
これを書いた私はあの強風で飛ばされて死んだわ。
今の私には新しい目標が出来たからもう大丈夫。
まずは結城大虎を探す。
見つけたら、今度は私がお説教してあげるから。
覚悟していなさい!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ソツのない彼氏とスキのない彼女

吉野 那生
恋愛
特別目立つ訳ではない。 どちらかといえば地味だし、バリキャリという風でもない。 だけど…何故か気になってしまう。 気がつくと、彼女の姿を目で追っている。 *** 社内でも知らない者はいないという程、有名な彼。 爽やかな見た目、人懐っこく相手の懐にスルリと入り込む手腕。 そして、華やかな噂。 あまり得意なタイプではない。 どちらかといえば敬遠するタイプなのに…。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

【完結】僕ら二度目のはじめまして ~オフィスで再会した、心に残ったままの初恋~

葉影
恋愛
高校の頃、誰よりも大切だった人。 「さ、最近はあんまり好きじゃないから…!」――あの言葉が、最後になった。 小島久遠は、新たな職場で、元カレとまさかの再会を果たす。 若くしてプロジェクトチームを任される彼は、 かつて自分だけに愛を囁いてくれていたことが信じられないほど、 遠く、眩しい存在になっていた。 優しかったあの声は、もう久遠の名前を呼んでくれない。 もう一度“はじめまして”からやり直せたら――そんなこと、願ってはいけないのに。 それでも—— 8年越しのすれ違いは、再会から静かに動き出す。 これは、終わった恋を「もう一度はじめる」までの物語。

ハメられ婚〜最低な元彼とでき婚しますか?〜

鳴宮鶉子
恋愛
久しぶりに会った元彼のアイツと一夜の過ちで赤ちゃんができてしまった。どうしよう……。

好きな人の好きな人

ぽぽ
恋愛
"私には何年も思い続ける初恋相手がいる。" 初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。 恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。 そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。

君が見た春をもう一度

sika
恋愛
高校時代、ひとつの誤解で離れた二人。 十年後、東京で再会した彼女は、もう誰かの「恋人」になっていた。 置き去りにした想い、やり直せない時間、そしてそれでも止まらない心。 恋と人生のすれ違いを描く、切なくも温かい再会ラブストーリー。

睡蓮

樫野 珠代
恋愛
入社して3か月、いきなり異動を命じられたなぎさ。 そこにいたのは、出来れば会いたくなかった、会うなんて二度とないはずだった人。 どうしてこんな形の再会なの?

先輩、お久しぶりです

吉生伊織
恋愛
若宮千春 大手不動産会社 秘書課 × 藤井昂良 大手不動産会社 経営企画本部 『陵介とデキてたんなら俺も邪魔してたよな。 もうこれからは誘わないし、誘ってこないでくれ』 大学生の時に起きたちょっとした誤解で、先輩への片想いはあっけなく終わってしまった。 誤解を解きたくて探し回っていたが見つけられず、そのまま音信不通に。 もう会うことは叶わないと思っていた数年後、社会人になってから偶然再会。 ――それも同じ会社で働いていた!? 音信不通になるほど嫌われていたはずなのに、徐々に距離が縮む二人。 打ち解けあっていくうちに、先輩は徐々に甘くなっていき……

処理中です...