上 下
5 / 15
第一章 「村開拓とモブ対抗戦」

第6世 「訪問」

しおりを挟む





 明らかなゾンビの声に加えて、
 「ハァーン」
 同時に、少し低い村人の声がする。

 「ん?なんだ?村人?」
声のする方をみると、森の奥に、
おのを持ち、背中に大きな旗を掲げる怪しい村人がいた。

 「なんだあれ、あんな場所にいて大丈夫なのか?」

 「創夢様お気をつけ下さい。」
するとその村人が斧を持つ手を高く上げ、こちらに走ってきた。

 「ハァーン」

 「やばいやばいやばい、
なんだあれ!逃げ…」

 「ヴゥー」
逃げようとした時、少し前の木陰こかげに隠れていたゾンビがその村人に襲いかかった。
 「おいおい、どーゆー状況だよ、なんの味方をすれば良い?」

 「あの村人、コピーいたしますか?」

 「コピー?したらどうなる?」

 「もし倒されてももう一度複製が可能です。」

 「分かった、頼んだ、
多分敵だろうし、一生複製しないだろうけど…
とにかく、今がチャンスだよな」
 襲いかかったはずのゾンビが押されてるのを見た感じゾンビより強い。
そんで、いつでも複製できるなら、ゾンビに手を取られてる今、先にあいつを倒すしかない…。

 「よし、斧しか無いけど、
お前の武器も斧だしなぁ、
正々堂々、決闘と行こうぜ。」

 「ハァーン」

 「正々堂々?圧倒的に向こうが不利な気が…。」

ヘルプの小声のツッコミを聞く事なく、俺は村人に斧で斬りかかる。

 ガシン!ガシン!

 「ガハァー!」

 何度か振りかざすだけで簡単に倒せた。

 「よし!どうだ!神の力なんて無くても、俺はやる時はやるんだ!」

 「創夢様、ゾンビにお気を付けて。それと、旗が落ちてます。」

 「いや!人の話聞けよ!俺に興味無さすぎだろ!」

 「ヴゥー」
その時ゾンビが噛みつこうと飛んで来た。
ギリギリで避ける創夢。

 「うわぁ!あっぶねぇ!」

 「だから言ってるじゃ無いですか、ゾンビにお気をつけて…。」

 「あぁー、冷たいヘルプだぁ。
で、この旗は、持って帰って村人に聞いてみるか…」

 「聞いたところで、話せませんが…そうしましょう。」

 「ヴゥー」
 ゾンビも倒しても良いが、もうどんどん暗くなっていくし、こいつはきっと数にキリがないからな。

 「よし、帰るかぁ…」
そう言うと俺は村へ帰った。



俺が村に着くと同時に村人は全員急いで建物内へ帰って行った。

バタン
バタン
キィーバタン

 なんだ、こいつらもちゃんと危険を分かってる。
柵って案外必要無いか?
とりあえず、俺も入らなければ意味が無いと思い、広い建物にお邪魔した。

「本でいっぱいの部屋だなぁ…」

で…これなら別に奴らが来ても大丈夫だろ。

 「ヘイ、ルプ!安全な内に、今いる村人全員コピーしてくれ!」

 「了解しました。コピー完了。全部で10人です。
それから、ルプ…良い名前です。」

よし、これで誰が死んでもまた生み出せる。

 「ハァーン。ヘヘン。」

 なんだ?この家の村人、俺を見てすんげぇ嫌な顔しやがる。
てか、村人ってこんな顔できたっけ?

白っぽい服、メガネに帽子。司書ししょ役職持やくしょくもちか。
頭が良いんだろうな、だからってバカな俺をそんな嫌な顔で見るなよ…

 「ヴゥー」

 その時、ゾンビの声がした。

 「やばい、ゾンビだ!もう近くにいるのか?!」

 「ダァーン、タカァーン」

 「え?」
なんだこの村人…?
今…声の出し方が違ったよな?

 「まぁいい、そんなことより今は…」

「ヴゥー!」

 やばい!ゾンビが村に入って来てる!
もう見える位置にいるぞ…
ゆっくりとこちらに歩いてくるゾンビ。

 「ホン…ハァ…ホン…イヤァ」

 もう、さっきから、
この村人が何を訴えかけているかは分からん。が、
嫌な顔の意味は分かった。

 「そっか、だからか、ごめんなぁ」

「ヴゥー!!」
ゾンビが扉の前まで来た。

 やっぱりだ…
このゾンビ…斧で斬られたような傷跡がある…
きっと俺が木を切りに行ったあの森から連れて帰って来ちまったんだ…。
そりゃ嫌な顔されても仕方ない。

 だがどうする?
やばい…扉が壊される…
ゾンビはうなりながら、扉にゆっくりとヒビを入れていく。

 その時、ひくづらこえ背後はいごから聞こえる。
 「ふぅ、間に合ったか…

ん?なんだこの世界は?ずいぶん呑気のんきなもんだな…」

なんだ?後ろで司書ししょがモゴモゴ言ってる…?ような…?
そして、ゆっくり振り返ろうとした時。

ズシャァ!

「ゴフェッ‼︎」
なんだ?何が起きた?

 不意に嘔吐おうとしたように口から流れ出た血が下に落ちる。

ベチャベチャ

そして、
 自分の胸から血だらけの右腕が突き出して伸びているのが見える。
これ…俺の血か?



◽︎第6話用語解説
・コピー
創夢の作った世界であるため、どのジャンルのキャラもいつでも複製が可能だが、すでに生成されているモブをコピーした場合、全く同じモブを複製させる事ができる。
例)コピーしなくともいくらでも村人を生成可能だが、眉毛が特徴的な村人がいたとして、彼をもう一度生成したければ、コピーしなければ生成はできない。
村人→生成可能
眉毛村人→(コピーが無ければ)生成不可

・司書
本や書類などの図書管理をしている村人。
マインドクラフトではエメラルドなどの希少鉱石を対価に手に入れる事が難しい本などを得られる。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

許してもらえるだなんて本気で思っているのですか?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:6,448pt お気に入り:3,674

婚約破棄と言われても・・・

BL / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:1,402

自由に語ろう!「みりおた」集まれ!

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:22

処理中です...