空色Heaven

雪原華覧

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ただいま!みんな元気?

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急いで文字通り、翔んで帰り一年振りの我家に着いたのはいいけど、ちょっとガッカリした。直衛君はまだ仕事だろうとは思ったけど、秋穂と春樹もまだ帰っていなかった。

    私は仕方無く、平屋建ての我家の屋根に降りて寝そべった。この家に住み始めて、秋穂を産む前迄はよくこうして屋根に登ってお昼寝をした。

    何でって?昔からスヌーピーファンだったから。子供の頃からスヌーピーが小屋の上でするあれに憧れていたからね。

    でも、私はここで一つ失敗をした。一年振りの我家にウキウキして、しっかりと寝込んでしまった。

    二時間近く寝込んだ私が目を覚ました時、辺りはすっかり暗くなっていた。

    『まずい、まずいっ!寝過ぎたぁ』慌てて屋根を降り、ふわりと浮いて灯りの点るリビングを覗いた。

    『え?ええぇぇ?!』驚きで大声を上げてしまった。まあ、生きてる人には聞こえないからいいんだけど。

    私の目がおかしくなったか、寝惚けているので無ければ、間違いなく……。

    家族が一人増えていた――。

    リビングには私の夫、直衛君と長女の秋穂、それに長男の春樹――そして二十代半ばから後半くらいと思われる女性がいる。

    どうやらこれから夕食らしく、直衛君と子供達は各々のいつもの席に着いている。件の女性はキッチンで食事の準備に忙しそうだ。出来た料理を持ってリビングとキッチンを嬉嬉と往復する。

    彼女の忙しくしている様を見て、秋穂が春樹を連れ立ってキッチンにスキップしながら入って行く。

    「ちひろちゃん、お手伝いするね!」

    「あら、秋穂ちゃん。ありがとう。じゃあ、そこのお皿とお箸持って行ってくれる?」女性が秋穂に優しく答えた。

    「ちひろおばちゃん、僕も手伝う!」

    「春樹!おばちゃんじゃないでしょ?ちひろちゃんでしょ」秋穂が空かさず春樹を嗜める。

    『何か大分馴れてるな……昨日今日知り合ったんじゃないみたい。誰だろう?』確かめたくなって私はガラス窓をすり抜けて中に入った。

    『お邪魔します。あ、私の家だったっけ。いけない、いけない』

    「じゅあ、食事の準備出来た事だし、みんな席に着いて!あ、水沢さんも。そちらに掛けて下さい」直衛君が春樹を持ち上げ、椅子に降ろしながら食卓を見回す。

    直衛君が「いただきます」を言おうとした時、春樹が何か思い出して声を上げた。

  「パパ、ママのご飯がまだだよ!」

    「そ、そうだった。ごめん、春樹。ママの分お供えしてくれるか」

    『ちょっと!忘れてたの?直衛君、酷い!あ~あ、お腹空いたなぁ?!』

    直衛君に詰め寄るが、当然見えないから涼し気な顔を間近で睨んでやった。

    そうしている間に春樹が私の仏壇、薄い菫色すみれいろをした洋風の可愛いそれの前にみんなと同じ食事を置いてくれた。

    そして直衛君は「今度こそ」と言わんばかりに席に座ると「それでは、いただきます!」と手を合わせた。

    直衛君に続いて「いただきます!」の三人分の声が部屋に響いた。

    私はテーブルを挟んで向かい合う直衛君と水沢さんと呼ばれた彼女の間に浮かんで二人を見下ろした。

    テーブルの上の料理を見ると、今日のメインはハンバーグらしい。

    「あ、御崎みさきさん、お口に合うかどうか……ですけど。召し上がって下さい」

    「いや、心配はしてないですよ。料理教室で作ってるの隣で見てますから。あ、これお肉じゃなくて魚のすり身で作ったんですね」

    『え?二人供、料理教室通ってるの?ふーん、直衛君の体、気にしてくれてるんだ。何しろコレステロール要注意だからね』

    私はそんな彼女が気になって、間近で顔を除き込んだ。『あれ……?この女性、見たような……』私は記憶のページを捲った。

    『あっ!ああぁぁ~!今日、男の子助けた女性だ!』

    そう、その女性、水沢千絋みずさわちひろさんは目にも止まらぬ早技で男の子を助けた謎のヒロインだった。

そのヒロインさんと直衛君、二人はどういう関係なんだろう?気になる……。夕食会もお開きなり水沢さんは帰り支度を始めた。

    『同居してる訳じゃないんだ。互いにどう思ってるのかな……』気が気でない私は、水沢さんを玄関迄送る直衛君の後ろを付いて行った。

    「今日は家まで来て貰って、手料理まで作っていただいてありがとうございます。明日は約束した時間で大丈夫ですか?」

    『え?明日も?あの、明日は……』

    「はい……大丈夫、です。でも、いいんですか?大事な日なのに。奥様の命日に私何かが一緒でいいのかなって……」

    『そうだよ。私の命日なんですけどっ!』

    「妻の、かえでの大事な日、命日だからこそ、来て欲しいんです。この前の返事も訊きたいですし……」

     「……あ、はい」水沢さんは困った様に顔を伏せて下を見詰めた。

    「あ……まだ時間ありますから、じっくり考えてからで。急かす気は有りませんから」

    『おーい、返事って何よ?私の知らないうちに何か話が進んでるの?』

    水沢さんが帰って三人が寝た後も、先刻、起きた事が頭から離れない。

    毎年里帰りすると、こっそり直衛君のベッドに潜り込み添い寝するのだけど……今夜は何となく気が乗らなかった。

    今夜は子供部屋で寝てる秋穂と春樹の寝顔を眺めて寝よう……。

    多分、寝られないだろうけど……。





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