上 下
9 / 25
Honey trap

4

しおりを挟む
    『この男がボディーガードか……』思いながら、ドアが閉まるのを待ってその相手に伝えた。

    「グロリアスレディから派遣された者です」

    グロリアスレディは田崎が利用している高級娼婦倶楽部の名前だ。

    男は用心深げに「グロリアスレディの……ミヅキさんか?」

    「はい。田崎様ですか?」男が田崎ではないと分かったうえでたずねる。

    「いや、俺ではない。奥でお待ちだ」

    案内されるのを待っていると、男はにやついた笑みを浮かべると「会う前に一つ決りがある」そう耳許でささやいた。

    私は『いつものあれか……』そう思いながら「ボディーチェックですね?伺ってます。どうぞ」両手を肩の高さまで上げて答える。

    男は遠慮もなく、露骨に髪から肩と触り、服の上から胸を掴まれ、ブラジャーの中にまで手を入れんできた。

    その後もボディーチェックという名の凌辱は続く。腰に手を回し、ヒップを両手で強く掴んでくる……。ヒップを触るのに飽きたのか、ひざまずくとドレスの裾を捲り上げショーツに顔を押し付けてきた。

    散々厭らしく触られ続けた私は、顔を見られないのを知ったうえで、眉間に眉を寄せ嫌悪に満ちた表情になる。

『こいつ………いつまで……』いい加減嫌気が差したところで男が立ち上がった。

    ジッと顔を見詰めたかと思うと首のチョーカーを触り始めた。興味深げにチョーカーの真中に付いているハート形のチャームに手を伸ばそうとする。

    『まずいな………』そう思った時、男の後ろ、ドアの向こう側から声が聞こえた。

しおりを挟む

処理中です...