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Honey trap

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    「そうなんだ。良かったぁ。ちょっと心配だったから」

    私は田崎の横に座り、腕を絡ませて見詰めた。

    「そうやって見詰められると、本当にヤバいんだよなぁ。可愛い過ぎてさ。可愛いのにあんなに上手いんだから、ミヅキは」

    「素敵な思い出になったでしょ?でも、まだこれからだから。あ、それで明日は何処どこに行ったらいいの?」

    「えっと、場所は晴海ふ頭の三十一番倉庫なんだけど、ミヅキは俺と一緒に夜七時に品川のホテルバリントンで待ち合わせしてから向かうから。あ、部屋は……何だっけな、あ、ああ二〇二五室だ」

    「分かりました。明日、楽しみですね」

    目一杯の笑顔で田崎に言うと、田崎は嬉しそうに微笑み返してきた。

    私は心の中で田崎に囁く。

    『ありがとう。全部喋ってくれて。お陰で貴方に抱かれずに済むわ』

    今の会話はイヤリングのマイクで拾っているはず……。この情報は組織に伝わり、今頃明日の作戦の準備がされている。あと私に残された任務ミッションは、田崎を消すだけ……。

    私は改めて田崎の顔を見詰めた。田崎は何も知らずに私に照れた笑顔を見せている。

    『さよなら。ちょっとの間、楽しかったわ……』

    私は生きている田崎に心の中で別れを告げた。
    
    
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