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Execution

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    思った通り入り口のドア付近には、田崎のボディガードが座り込むようにして壁にもたれていた。

    体を正面から見ると、左下腹部に銃創がある。しかし、背中には弾の貫通したあとがない。

    「盲管銃創もうかんじゅうそう……か。貫通させないよう左下腹部から心臓を貫通させて右肩甲骨で止めている……。弾は貫通させない為、多分二十二口径でサプレッサー付、弾は弱装弾かも……」

    ボディガードを射殺した男――、多分ボスの言っていたファング仕事ころしだろう。

   「この大男が相手じゃ、抵抗されることも考えられる。それを二十二口径一発で仕止めるなんて、かなりの技術テクニック精神マインドね……」

    それに今日の現場の状況から、速やかに片付けて撤収する必要がある。その為には出血は最小限に、現場も可能な限り荒らさない方がいい。

    「そこまで考えての殺しか……」

    私はまだ見ぬファング仕事ころしに興味を覚えた。

    「会ってみたいものね………ファング……」

    私は今日の任務ミッションが完遂したことを確認すると、部屋の化粧台ドレッサーの上に置いた腕時計を取り上げた。

    腕時計には、組織専用の通信機が内蔵されている。通信は高度に暗号化され、外部に漏れることはない。

    「サポート?こちら薔薇ローズ9。任務ミッションは完了したわ。死体ものは二つよ。標的ターゲットファングが片付けたのが一つ。今から部屋を出るから速やかに願います」

    隣室のサポートメンバーとの通信を終えると、リビングに脱ぎ捨てたドレスを再びまとった。

   
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