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Epilogue

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    ホテルのロビーに降りると、夜の社交場を訪れた紳士淑女であふれていた。

    その中を悠然と歩いていく。仕事ころしに慣れていない者は、早くその場を離れたがる。だが、重要なのは早く離れることではなく、気付かれずにその場を去ることだ。

    サポートチームは今頃、二人の死体を怪しまれないよう運び出し、部屋に残る私の居た証しの全てを消し去っているはず。

    そして明日の朝、田崎の代理人としてチェックアウトを済ます。

    『任務ミッションは完了したし、何も問題はない』自分の中で確かめながらロビーを横切り、エントランスの外の車止めに向かう。

    ふと背中に視線を感じて、振り返りフロントの左手を見ると、私を部屋に案内した若いベルボーイと目が合った。

    彼は慌てて視線を外し、少し顔を赤らめた。

    私はうつむく彼を可愛らしく思い、微笑み掛けてエントランスを出た。そこには行きと同じく、サポートメンバーが運転する白いベンツマイバッハSクラスが止まっている。

    私はドアマンの深々としたお辞儀に送られてホテルを後にした。

    乗り込んだ後、私は車窓から流れて行く夜景を見ていた。

    少し夜煙ガスが懸かる夜にそびえる高層ビル群――、それが象徴する魔都バビロン東京で、私は今日も生き延びた。そのことに僅かな安堵を抱いた時、腕時計の通信機が呼び出し音コールを告げた。

    「ボス……?」

    私は相手を確かめる、その声はか細かった。

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