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第四章 人狼の激情譚
万華鏡
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「はぁっ…こんにちわ」
俺は白い息を吐いてあやかし屋の扉をがららっと開ける。今日は立て付けの調子は良いようで、するすると扉が開いた。もしかして、修理したのかな?
不思議に思っていた俺の脳天を割るように紗世さんの怒号が飛んできた。
「この馬鹿者が!!昨日は何処に行っていたのじゃ!!」
怒鳴り散らすだけじゃあ怒りが収まらないのか、俺の肩をがしりと掴み激しく揺らす。頭がくらくらして嘔吐感が強くなっていくけれど、暴力を振られるよりはマシだ。
それにしても、昨日は何処に行っていたのか覚えていない。気が付いたら家で寝ていたが、どうやって紗世さんと別れたのか、ドーナツの穴のように忘れてしまっている。
「え、う、うーん…そもそも、どうやって帰ったのか覚えてないんです」
「…は?」
そんな反応されると、困ってしまうのはこっちだ。紗世さん相手に冗談や言い訳が通じるとは思えないし、変に繕うよりも正直に「わからない」をつき通すのが安牌のように思えた。
…だからといって、厳しい疑いの目を向けられて本当のこと言うのは怖いわ!
「さっ…紗世さんが風呂の石鹸を取りに行ったことまでは覚えてるんですけど…もしかしてそれからですか?俺が失踪したのって」
「…まぁ、そんなもんじゃ」
彼女はあまり納得はいっていないようだったが、取り敢えずの形で相槌を打ってくれた。その証拠に、疑いの目は少しも緩めていない。
「えーっと…それから、眠くなって…記憶が無いんです」
「妖怪の仕業だと踏んでいたが…真相が分からぬ…見せて貰うぞ」
その言葉をきっかけに、紗世さんは俺の額に自らの指先をとんっと当てた。じんわりと熱が伝わってくる。普通、指先を当てただけで熱が伝わることはないので、きっと妖力を指先に集めているのだろう。
「何をするんですか?」
「記憶を覗くのじゃ。それしかなかろう」
勝手に記憶を見られるのもなんだかなぁ…と思ったが、反撃したところで止められるのは分かり切っているので素直に身をゆだねることにした。
「第肆妖術『万華鏡』」
ほわんっと陰陽玉や珍しい漢字が描かれた淡い色の魔方陣が小さく浮きあがる。俺の額にくっつくと、そこから動くことは無かった。
紗世さんの暖かった指先の温度が増して、どんどん熱くなっていく。このまま火傷でもしてしまうんじゃないか?そんな心配を余所に俺は睡眠欲に溺れた。
■■■
「んっ…」
水の中でたゆたう感覚を味わっていたが、現実感に突き刺されて目を覚ました。目の前には訝しげな表情を浮かべている紗世さんと、俺のことを心配している座敷童子ちゃんがいた。
「終わりました…か?」
起きたばかりの擦れた声で尋ねると、紗世さんは難しい顔をしつつも返答をくれた。
「終わった。…お主の昨夜の記憶…どれだけ探っても出てこなかった」
「そんなことって…ありえるんですか」
「ありえる訳がなかろう。それこそ、人格や人が変わらない限りはな」
「俺の人格が入れ替わるとか…今までにないですよ」
人格だとか、普通に生活していたらあまり意識しないと思う。それに多重人格の人は人格が入れ替わった時の記憶がないらしいし、俺自身に記憶があるとも思えない。
「友人に疑われたこともないし…」
「…ますます分からなくなった」
紗世さんは諦めたように一つ息を吐いて頭を抱えた。
そして、びしっと人差し指を俺の眼前に突きだし、続けてこう言った。
「お主の妖力は強すぎる!記憶がない間に暴走されると災害が起きるんじゃ。しっかり気を付けるように」
言葉の圧に押され、「はい」と返事するしかなかった。
俺は白い息を吐いてあやかし屋の扉をがららっと開ける。今日は立て付けの調子は良いようで、するすると扉が開いた。もしかして、修理したのかな?
不思議に思っていた俺の脳天を割るように紗世さんの怒号が飛んできた。
「この馬鹿者が!!昨日は何処に行っていたのじゃ!!」
怒鳴り散らすだけじゃあ怒りが収まらないのか、俺の肩をがしりと掴み激しく揺らす。頭がくらくらして嘔吐感が強くなっていくけれど、暴力を振られるよりはマシだ。
それにしても、昨日は何処に行っていたのか覚えていない。気が付いたら家で寝ていたが、どうやって紗世さんと別れたのか、ドーナツの穴のように忘れてしまっている。
「え、う、うーん…そもそも、どうやって帰ったのか覚えてないんです」
「…は?」
そんな反応されると、困ってしまうのはこっちだ。紗世さん相手に冗談や言い訳が通じるとは思えないし、変に繕うよりも正直に「わからない」をつき通すのが安牌のように思えた。
…だからといって、厳しい疑いの目を向けられて本当のこと言うのは怖いわ!
「さっ…紗世さんが風呂の石鹸を取りに行ったことまでは覚えてるんですけど…もしかしてそれからですか?俺が失踪したのって」
「…まぁ、そんなもんじゃ」
彼女はあまり納得はいっていないようだったが、取り敢えずの形で相槌を打ってくれた。その証拠に、疑いの目は少しも緩めていない。
「えーっと…それから、眠くなって…記憶が無いんです」
「妖怪の仕業だと踏んでいたが…真相が分からぬ…見せて貰うぞ」
その言葉をきっかけに、紗世さんは俺の額に自らの指先をとんっと当てた。じんわりと熱が伝わってくる。普通、指先を当てただけで熱が伝わることはないので、きっと妖力を指先に集めているのだろう。
「何をするんですか?」
「記憶を覗くのじゃ。それしかなかろう」
勝手に記憶を見られるのもなんだかなぁ…と思ったが、反撃したところで止められるのは分かり切っているので素直に身をゆだねることにした。
「第肆妖術『万華鏡』」
ほわんっと陰陽玉や珍しい漢字が描かれた淡い色の魔方陣が小さく浮きあがる。俺の額にくっつくと、そこから動くことは無かった。
紗世さんの暖かった指先の温度が増して、どんどん熱くなっていく。このまま火傷でもしてしまうんじゃないか?そんな心配を余所に俺は睡眠欲に溺れた。
■■■
「んっ…」
水の中でたゆたう感覚を味わっていたが、現実感に突き刺されて目を覚ました。目の前には訝しげな表情を浮かべている紗世さんと、俺のことを心配している座敷童子ちゃんがいた。
「終わりました…か?」
起きたばかりの擦れた声で尋ねると、紗世さんは難しい顔をしつつも返答をくれた。
「終わった。…お主の昨夜の記憶…どれだけ探っても出てこなかった」
「そんなことって…ありえるんですか」
「ありえる訳がなかろう。それこそ、人格や人が変わらない限りはな」
「俺の人格が入れ替わるとか…今までにないですよ」
人格だとか、普通に生活していたらあまり意識しないと思う。それに多重人格の人は人格が入れ替わった時の記憶がないらしいし、俺自身に記憶があるとも思えない。
「友人に疑われたこともないし…」
「…ますます分からなくなった」
紗世さんは諦めたように一つ息を吐いて頭を抱えた。
そして、びしっと人差し指を俺の眼前に突きだし、続けてこう言った。
「お主の妖力は強すぎる!記憶がない間に暴走されると災害が起きるんじゃ。しっかり気を付けるように」
言葉の圧に押され、「はい」と返事するしかなかった。
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