置いていかれた真っ黒騎士様、年の差婚を致しましょう

宇和マチカ

文字の大きさ
1 / 9

お茶の時間は邪魔される

しおりを挟む
「はあ、新茶はいいわね……。
 この馥郁とした香り、病みつきになりそう。この淡い苦みが風に乗る竜のように全身を……」

 私の名前は、アミエッテ・セルリーアン・オニール。中立寄りのオニール侯爵家の次女よ。
 お姉様は王家の親戚であるウェーン公爵家の長男に嫁がれたから、実質の跡取り娘でもあるわ。

 跡取り……嫌なのよ、本当に! 心からなりたくないの!
 本当に面倒なのよ。スライドしてきた跡取りって立場!
 私、気楽な次女で居たいの!
 でも、容赦なーくお勉強が伸し掛かるのよ! 会いたくもないババ……歳上の御婦人ともお茶会という名の自慢大会をへーへーハーハーゼェゼェ聞かなきゃならないの。
 嫌すぎるのよ。

 あー、正直、気楽な立場に戻りたいから止めて欲しいのよね。もう、いきなり弟でも生まれないかしら。
 ソフト重めシスコンに育って、私を笑顔溢れる豊かな有閑老嬢にしてくれないかしら。
 あー、ババンバン侯爵のお姉様のベリー様とかとっても憧れるわー。お祖母様のお友達だけどね。五十年前にご婚約者が失踪されてから、お好きに生きてきたのよ、って楽しそうだったものねー。

 あー、馥郁としたお茶が美味しくて、ダルいわ。ああもうお菓子足りない。
 三食昼寝付きお家ガーダーになりたい。跡取り婚とか滅茶苦茶嫌よ。安楽に茶をしばいて堕落したいの。最近、怠け欲しか湧かないわ。
 早く有閑老嬢にバージョンアップして、暇を愛するダラダラの高みに登りたいものよ……。
 そうなったら速攻で、ヤスリみたいなガリガリの出来にしかならない刺繍とか、超やめるわ……。領地の地図も見たくない目が乾くし。
 ソフト重めの弟や、早く生まれて……。

「アミエッテお嬢様、大旦那様がお呼びです」
「ええ……嫌……」
「そ、そう仰らずに……」
「嫌……」

 そーんな事を妄想しつつ、自室でお茶を頂いていたら、いきなり先代侯爵であるお祖父様の呼び出しを喰らったの。
 嫌な予感しかしないわね。
 結局無理矢理連行される羽目になっても、嫌なものは嫌なのよ。

「アミエッテ……」
「何ですか、お祖父様」

 私の新茶ラブラブタイムを妨害したからか、シリアスな雰囲気ね。

 でも、お祖父様のお呼び出しって、8割がた来なきゃ良かったって思うものばかりなのよ。
 変な思いつきの発言が多いものだから。
 お祖母様によると、若い頃からこの調子で、未だボケてはないらしいわ。
 身内ながら若い頃から迷惑よねえ。外でやって欲しいわ。

「黒騎士ウィルソニーと結婚せい」
「……せめて、生きている方との結婚をお命じください」

 ほーら、碌でもない!

 何で! この、引く手数多過ぎて婚約者が未だ決まっていないこの私が! そりゃ有名すぎて銅像にもなってるけど、本の中の登場人物よ?
 フィクションの人物との結婚を打診されなきゃいけないのよ!
 本でも読んで寝てろって暗喩ならご機嫌で承るけど、絶対そうじゃないでしょう!

「ほほー、ヴァンブレード・ウィルソニーを覚えているか」
「そりゃ、知識として知ってはいますけれど……」

 今時黒騎士だなんて時代遅れいえ、他に聞いたこと有ったかしら。
 しかも名前が何だか『僕の考えた最強無敵騎士』的っていう感じ? イキってるし。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜

ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」 あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。 「セレス様、行きましょう」 「ありがとう、リリ」 私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。 ある日精霊たちはいった。 「あの方が迎えに来る」 カクヨム/なろう様でも連載させていただいております

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

もう、愛はいりませんから

さくたろう
恋愛
 ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。  王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)

miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます) ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。 ここは、どうやら転生後の人生。 私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。 有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。 でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。 “前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。 そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。 ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。 高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。 大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。 という、少々…長いお話です。 鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…? ※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。 ※ストーリーの進度は遅めかと思われます。 ※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。 公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。 ※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。 ※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中) ※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)

地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに

有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。 選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。 地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。 失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。 「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」 彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。 そして、私は彼の正妃として王都へ……

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

追放された悪役令嬢は辺境にて隠し子を養育する

3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)
恋愛
 婚約者である王太子からの突然の断罪!  それは自分の婚約者を奪おうとする義妹に嫉妬してイジメをしていたエステルを糾弾するものだった。  しかしこれは義妹に仕組まれた罠であったのだ。  味方のいないエステルは理不尽にも王城の敷地の端にある粗末な離れへと幽閉される。 「あぁ……。私は一生涯ここから出ることは叶わず、この場所で独り朽ち果ててしまうのね」  エステルは絶望の中で高い塀からのぞく狭い空を見上げた。  そこでの生活も数ヵ月が経って落ち着いてきた頃に突然の来訪者が。 「お姉様。ここから出してさし上げましょうか? そのかわり……」  義妹はエステルに悪魔の様な契約を押し付けようとしてくるのであった。

処理中です...