フレンドリーアディクション

千葉みきを

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距離感

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「春樹、ちょっといい?」

放課後、二人きりの教室。話しかけたのは、峻希だった。このままでは友情が崩壊する。そう思ってのことだった。
「なに」

春樹は、かなり不機嫌そうに、こちらを振り向くこともなく、一言そう言い放った。

「春樹のこと、嫌いじゃないよ。だから、またいつも通り話ししよう。けど、俺思うんだ。春樹の俺に対する感情は、本当はもっと都合の良いものなんじゃないかって」

「都合のいいもの?」

春樹は、不機嫌そうな表情をそのままに、しかし、怪訝そうにこちらを振り向く。

「春樹、本当は、俺じゃなくてもいいんじゃないかって。本当は、俺のこと都合よく見てるだけなんじゃないかって。」

「つまり、これは友情じゃないって言いたいのか?」

「依存って知ってる?」

春樹の顔が硬直する。峻希が続ける。

「友人依存。些細な俺の変化で悪いほうに深読みしてりしてない?」

「知らない。とにかく俺は孤独なんだ。だからお前が必要」

「春樹、お前勘違いしてるよ。俺は、お前の前から急に消えたりしない。ちゃんと親友だと思ってるし」

春樹の表情が少し緩む。

「わかったよ。確かに峻希の言うとおりだ。俺はお前に依存していると思う。けどなんでそれが人間関係を壊すことにつながるんだ」

「お互い些細な相手の言動で、傷つく習慣が出来てしまうからだと思う。俺は、せっかく春樹と知り合った以上、長く関係を築きたい。それに、おれが最近忙しい話も本当」

春樹の目が赤らむ。峻希は、そんな春樹を後ろからぎゅっと抱きしめた。

「大丈夫だよ春樹。急に消えたりしない。それだけは約束」

春樹は、微動だにしない。しかし、身体がひくひくと揺れている。

おそらく泣いているのだろう。

「わかった。ごめん峻希。勘違いしてたのは俺の方だった。これからはお互い程よい距離感を探そう。俺も峻希との関係を壊すのは嫌だから」

春樹の声は震えていた。やはり泣いていた。

「はい、ハンカチ。涙拭けよ」

「大丈夫。今日は自分の持ってるから」



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