ドリーム”R”プロジェクト

千葉みきを

文字の大きさ
1 / 13

しおりを挟む
「圭太、お前一緒に車作らんか」

工業高校2年、橋本蓮からの誘いは思いもよらぬ拍子抜けた事だった。

「車を作る?ディアゴスティー二でもやるつもりか」

「違う。俺らで一緒に本物の車を作るんだ。高校卒業までに」

車好きなら誰でも一度は夢見たことがある事だ。しかし、車の設計、組み立て、認証の取得など、ハードルが高いということは、少し考えればわかることだった。

「車を作るって、一からか?」

「そう。エンジンとかは出来合いのものを用意すればいい」

蓮は、明るい表情でそう言い放つ。

「簡単にいうけどお前、めちゃくちゃだぞ。そんなこと出来るわけがない」

「とりあえず、親父に相談してみるわ」

蓮の父親は、自動車整備士で自分で工場を持って働いている。出来合いのエンジンは蓮の父親に言えば、手配してくれそうだった。

「お前、正気か?」

「当然」と蓮は首を縦に振る。第一、お金はどうするつもりなのだろう。車を作るとなると少なく見積もっても百万単位の資金が必要だ。蓮も俺もまだ高校生だ。資金面の調達の時点で、ハードルが高かった。

「お前、急にそんな話するけど、資金面はどうするつもりだよ」

すると、蓮は、スマホの画面をやや自慢げに見せつけてくる。

「クラウドファンディング?」

クラウドファンディングとは、実現したい目標や夢のプロジェクトを公開して、支援者から資金を募るサービスの事だ。その夢や目標に賛同してくれた日本中の人が、資金を提供してくれるという仕組みである。

「なるほど。その手があったか」

放課後の誰もいない教室に、男二人。いつも馬鹿話で盛り上がる二人だが、今日は真剣な雰囲気が漂っている。

「で、クラファンには、申請出したの?」

「それがだな、審査通っちゃったんだよ」

クラファンの審査に通るというのは、すなわち、資金的な面で融資を受けられる可能性があるという事だ。

「もし、資金調達が上手くいったら、ほんとにやるつもりなんだな。でも、どうする。俺はカーデザインとか出来ないよ。」

「もし本当にクラファンの目標額に達成したら、絶対にプロジェクトをやらなければならない。2組の佐藤を誘ってみるか。あいつなら、車も好きだし、デザインも出来る」

「あと、同じ2組の中村も誘ってみればいい。3D CADもいじれるから力を貸してくれる筈だ。」

3D CADとは、コンピューターを使って、3次元のモデルを設計する技術のことである。中村は、3D CADを使って、自分でゲームを作って遊んでいる。あいつに頼めば、設計作業を上手くやってくれるだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

M性に目覚めた若かりしころの思い出

kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、それをはじめて自覚した中学時代の体験になります。歳を重ねた者の、人生の回顧録のひとつとして、読んでいただけましたら幸いです。 一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...