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ドリームRプロジェクト
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「というわけで、SNSを活用して、このプロジェクトをもっと色々な人に知って貰うってのはどうだろうか」
佐藤は、机の上にあったポテトチップスを食べながら、こう言う。
「私は、賛成です。私たちだけでは解決できない問題が山ほどあるのは確かですよね」
中村もお茶を啜りながら静かな声でこう言う。
「エンジンや車体のベースを考えたり、設計や開発はうちらで出来るけど、正直それ以外は専門家の助がどうしても必要だよね。SNS以外でも、直接協賛してくれそうな企業にアプローチを取るってやり方もあると思う」
「たしかにそうだな。SNSは早急に準備しよう。そして、協賛してくれる企業探しだ。その辺のコンタクトは圭太にお願いしてもいいか」
「もちろん」
圭太は、早速携帯で、インスタグラムとTwitterのアカウントを開設した。プロジェクト名は、ドリームRプロジェクト。プロフィール欄にはこう記載した。
『高校生4人で車を作り、その車でレースに出るプロジェクト。現在、協力してくれる企業さん募集中』
アイコンには、佐藤がデザインした原案の画像を、ヘッダーにはメンバー全員で2JZエンジンの前で撮った写真を選択した。
そして、関連企業や有名なレーサーなど、あなたへのおすすめユーザーに表示されたアカウントを手当たり次第にフォローした。フォローを送ると、いくつかの企業がフォローバックしてくれる。フォローバックしてくれた企業に対しては、ダイレクトメッセージを送信する。すると、とある会社から、ダイレクトメッセージの返事が送られてきた。
ユーザー名は、矢村メーターと記載されている。自動車のメーター製作で有名な企業である。
『当社のメーターでよろしければ、ぜひとも製作させてください』
このような趣旨のメッセージだ。
しかし、そのメッセージには、有料でとも無償でとも記載されていない。仮に有償であったとしても、クラウドファンディングで集めたお金は、まだ半分以上残っていたので、特に問題はないと判断する。圭太は、返事をくれた企業にメールで問い合わせをした。
『お世話になります。高校生グループで自動車製作をしております、ドリームRプロジェクトの菅野圭太と申します。先ほどは、Twitterでダイレクトメッセージを頂き、誠にありがとうございます。メーター製作の件で、ご連絡させて頂きました。有償でも構いませんので、我々の製作している車のメーターを是非とも製作してください』
すると、矢村メーターから次のような返事が送られてきた。
『菅原圭太様
この度は、お問い合わせありがとうございます。
早速ではございますが、来週の土曜日、是非とも製作工程を見学させて頂きたいと思っておりますが、ご都合はいかがでしょうか。。ご返信お待ちしております。』
メールの末尾には、矢村メーター 製作部 阿部と記載があった。
圭太はすかさずメールとメッセージのスクリーンショットを取ると、メッセージで蓮の携帯宛に送信した。
既読はすぐに付き、このようなメッセージが送られてくる。
『とんとん拍子だな』
次の週の土曜日、蓮と圭太は、隆の経営する自動車整備工場に集まった。予定時刻の午前10時丁度にその男は現れた。
かっちりとしたスーツ姿で、ガタイの良い中年の男は、車から降りてくると、名刺を差し出してきた。
「改めまして、矢村メータで製作部長をしております、阿部と申します。この度は、弊社の製品に興味を持って下さり、誠にありがとうございます」
蓮が、ふと阿部の乗ってきた社用車のナンバープレートを見ると、広島ナンバーであった。
「こちらこそ、遠路はるばるお越しくださいましてありがとうございます」
蓮は、佐藤があらかじめ用意していた内装のスケッチを見せると、阿部は真剣な眼差しでそれを見た後、首を縦に振りこう言った。
「これは面白いですね。皆さん、高校生でしょ?最初この企画を知ったとき、内容も驚きましたが、こんな高度なスケッチまで用意されてたんですね。」
「ありがとうございます」
阿部は、スケッチを蓮に返すと、目線をこちらに向けて、こう話した。
「予算はどのくらいですか?」
圭太が答える。
「相場がわからないので、なんとも申し上げられない部分はありますが、50万円くらいなら」
「50万円ですか。わかりました。なんとかなるでしょう。製作の進捗ですが、デザインが決まり次第、こちらから原案を送ります」
「やはりお金はかかるんですね」
「当社の方で、稟議にはかけさせて頂きましたが、無償でというのはやはり厳しいです。みなさんクラウドファンディングで資金を集められてるようですし、有償でという形でなら、弊社も協力できます」
「それから」と阿部が言うと、一瞬ためらうように咳ばらいをした後、こう告げる。
「皆さん、作った車でレースに出るのが目標とのことですが、ドライバーはどうするおつもりですか」
蓮と圭太が、あっと言う表情をした後、二人で顔を見合わせる。
彼らの表情は、少し緊張が漂った。蓮が何を言いたいのか、なんとなく察した圭太が、その質問に答える。
「まだ決まっていません。当然ながら、我々の中にも運転に秀でた奴はいませんし。困ったものですね」
すると、阿部がうーんと唸った後、少しの間を置いてこう告げる。
「弊社は、以前ご紹介した通り、自動車のメーターを製作している会社です。そして、皆さんご存じかもしれませんが、弊社にはレーシングチームがあります。うちの専属のレーサーにも声を掛けてみましょう。条件次第では、レースに出られるかもしれません。有償でメーターを製作することに変わりはないですが、やはり弊社としても協力できることがあればと思うんです」
それを聞いた二人の表情は、驚きと嬉しさで満ち溢れていた。目が大きく見開かれ、眉がひそめられ、口がわずかに開き、言葉が出て来なかった。
佐藤は、机の上にあったポテトチップスを食べながら、こう言う。
「私は、賛成です。私たちだけでは解決できない問題が山ほどあるのは確かですよね」
中村もお茶を啜りながら静かな声でこう言う。
「エンジンや車体のベースを考えたり、設計や開発はうちらで出来るけど、正直それ以外は専門家の助がどうしても必要だよね。SNS以外でも、直接協賛してくれそうな企業にアプローチを取るってやり方もあると思う」
「たしかにそうだな。SNSは早急に準備しよう。そして、協賛してくれる企業探しだ。その辺のコンタクトは圭太にお願いしてもいいか」
「もちろん」
圭太は、早速携帯で、インスタグラムとTwitterのアカウントを開設した。プロジェクト名は、ドリームRプロジェクト。プロフィール欄にはこう記載した。
『高校生4人で車を作り、その車でレースに出るプロジェクト。現在、協力してくれる企業さん募集中』
アイコンには、佐藤がデザインした原案の画像を、ヘッダーにはメンバー全員で2JZエンジンの前で撮った写真を選択した。
そして、関連企業や有名なレーサーなど、あなたへのおすすめユーザーに表示されたアカウントを手当たり次第にフォローした。フォローを送ると、いくつかの企業がフォローバックしてくれる。フォローバックしてくれた企業に対しては、ダイレクトメッセージを送信する。すると、とある会社から、ダイレクトメッセージの返事が送られてきた。
ユーザー名は、矢村メーターと記載されている。自動車のメーター製作で有名な企業である。
『当社のメーターでよろしければ、ぜひとも製作させてください』
このような趣旨のメッセージだ。
しかし、そのメッセージには、有料でとも無償でとも記載されていない。仮に有償であったとしても、クラウドファンディングで集めたお金は、まだ半分以上残っていたので、特に問題はないと判断する。圭太は、返事をくれた企業にメールで問い合わせをした。
『お世話になります。高校生グループで自動車製作をしております、ドリームRプロジェクトの菅野圭太と申します。先ほどは、Twitterでダイレクトメッセージを頂き、誠にありがとうございます。メーター製作の件で、ご連絡させて頂きました。有償でも構いませんので、我々の製作している車のメーターを是非とも製作してください』
すると、矢村メーターから次のような返事が送られてきた。
『菅原圭太様
この度は、お問い合わせありがとうございます。
早速ではございますが、来週の土曜日、是非とも製作工程を見学させて頂きたいと思っておりますが、ご都合はいかがでしょうか。。ご返信お待ちしております。』
メールの末尾には、矢村メーター 製作部 阿部と記載があった。
圭太はすかさずメールとメッセージのスクリーンショットを取ると、メッセージで蓮の携帯宛に送信した。
既読はすぐに付き、このようなメッセージが送られてくる。
『とんとん拍子だな』
次の週の土曜日、蓮と圭太は、隆の経営する自動車整備工場に集まった。予定時刻の午前10時丁度にその男は現れた。
かっちりとしたスーツ姿で、ガタイの良い中年の男は、車から降りてくると、名刺を差し出してきた。
「改めまして、矢村メータで製作部長をしております、阿部と申します。この度は、弊社の製品に興味を持って下さり、誠にありがとうございます」
蓮が、ふと阿部の乗ってきた社用車のナンバープレートを見ると、広島ナンバーであった。
「こちらこそ、遠路はるばるお越しくださいましてありがとうございます」
蓮は、佐藤があらかじめ用意していた内装のスケッチを見せると、阿部は真剣な眼差しでそれを見た後、首を縦に振りこう言った。
「これは面白いですね。皆さん、高校生でしょ?最初この企画を知ったとき、内容も驚きましたが、こんな高度なスケッチまで用意されてたんですね。」
「ありがとうございます」
阿部は、スケッチを蓮に返すと、目線をこちらに向けて、こう話した。
「予算はどのくらいですか?」
圭太が答える。
「相場がわからないので、なんとも申し上げられない部分はありますが、50万円くらいなら」
「50万円ですか。わかりました。なんとかなるでしょう。製作の進捗ですが、デザインが決まり次第、こちらから原案を送ります」
「やはりお金はかかるんですね」
「当社の方で、稟議にはかけさせて頂きましたが、無償でというのはやはり厳しいです。みなさんクラウドファンディングで資金を集められてるようですし、有償でという形でなら、弊社も協力できます」
「それから」と阿部が言うと、一瞬ためらうように咳ばらいをした後、こう告げる。
「皆さん、作った車でレースに出るのが目標とのことですが、ドライバーはどうするおつもりですか」
蓮と圭太が、あっと言う表情をした後、二人で顔を見合わせる。
彼らの表情は、少し緊張が漂った。蓮が何を言いたいのか、なんとなく察した圭太が、その質問に答える。
「まだ決まっていません。当然ながら、我々の中にも運転に秀でた奴はいませんし。困ったものですね」
すると、阿部がうーんと唸った後、少しの間を置いてこう告げる。
「弊社は、以前ご紹介した通り、自動車のメーターを製作している会社です。そして、皆さんご存じかもしれませんが、弊社にはレーシングチームがあります。うちの専属のレーサーにも声を掛けてみましょう。条件次第では、レースに出られるかもしれません。有償でメーターを製作することに変わりはないですが、やはり弊社としても協力できることがあればと思うんです」
それを聞いた二人の表情は、驚きと嬉しさで満ち溢れていた。目が大きく見開かれ、眉がひそめられ、口がわずかに開き、言葉が出て来なかった。
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