(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

奏直

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小さな手

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仮面の男が去って行った扉を眺め続ける。
騒ぎ立てたらきっとあの仮面の男の人は戻ってくるだろう。
そうしたら私は殺されてしまう。
でもこのまま大人しくしていても1時間後には選択を迫られる。
修道院に行くか死ぬか…
ハル様から早く離れなければと思っていました。
だから私は修道院に行く事を選ぶべきなのです。
でも…
あの仮面の男の人は何故1時間時間を取る事にしたのか…それは私に与えられた時間に見えますが、もしかしたらあの男の人が動きやすくなるのがその頃とか?あの人は恐らく何処かの家に仕えている人。
ジェダイナ公爵家の?可能性は高いですよね…
もし、私がそれ程気を失っていなかったら…
慣れない私のためにサミュエル公爵家の方々は少し早めに会場に来ました。
もし1時間後に夜会が始まるなら…使用人は夜会には出られません。
やっぱりここは逃げ出さなければならないですね。
ただここからどの様にして出るか…
扉は鍵が掛けられていますし…窓から降りるべきでしょうか?
その時でした。

タンッ カチャ  トントン

「あの~これとってもらえますか?」

子供の声です。
それも壁に掛けられた絵から…私は恐る恐る壁の絵に近づきます。
そして意を決して絵を外します。
そこには小さな扉がついています。

「と、とりました。」

私はそう話すと扉がガチャっと開きます。
そして中から子供が現れます。
でも、その子供も先程の仮面の男と同じように仮面で顔を隠しています。
私は恐ろしくなって後退りしてしまいます。

「あっ!大丈夫です。僕はお姉ちゃんの味方です。訳あって今はこんな物を付けていますが怖がらないで下さい。」

怖がる私にそう話し掛けてくる男の子。
味方だと言ってくれた男の子に思い当たる人物がいます。
だから私は質問します。

「貴方の事は何て呼んだら良いのかしら?」

「ん~ヴィンス…じゃなくて…ヴィー?ヴィーって呼んでください。」

やっぱりこの男の子は…でも、どうして私の味方を?

「分かったわ、ヴィー。それでヴィーはどうしてここに?」

「お姉ちゃんを助けに来たんだ。」

「私を助けに?」

「そう。信じられないかもしれないけど着いてきて欲しいんだ。」

この子について行く…大丈夫かしら…それを理由に私はあの仮面の男に殺されるのではないのだろうか…でも本当に味方になってくれているのなら…
ヴィーを信じてついて行って良いのだろうか…

「お願い。僕のこと信じて着いてきて!必ず夜会までにお姉ちゃんのパートナーのハロルド・サミュエル様のところに連れて行くから!だから一緒に来て!」

そう言って小さな手を差し出す男の子。
ハル様…私はハル様にもう一度会いたい!
ここに居ても私はもうハル様に会うことは出来ない…それならこの子の小さな手を信じて掴んでみよう!
そう決めた私は男の子に案内され部屋を脱出する事にしたのです。
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