(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

滑稽な姿

「ハロルド様‼︎なぜその女を…ネイオウミお義姉様を庇われるのですか？」

イオにも自分を卑下するなと伝えていた時、シャーロット・レナイト嬢が声を荒げてきた。

「シャーロット…」

イオはシャーロット嬢の声を聞きビクリとした後、そう呟いた。
さっきまでのイオの反応からもシャーロット嬢や義母に怯えているのだろう。
それ程までにイオにとって彼女達が怖い存在だということだ。
俺はイオの方を抱き寄せた。

「俺のパートナーを庇うことのどこに不満が？」

「不満だらけです！ハロルド様は私のパートナーでしたわよね？」

頭が悪いにも程があるな…

「俺が君のパートナーだったことはないよ？」

「そんなわけありません。私とハロルド様は今日の夜会に一緒に来るはずでしたのに…ネイオウミお義姉様がハロルド様のパートナーになりかわられましたのよ！ハロルド様は騙されていらっしゃるのよ！」

否定されても引く気はなしか…
俺達はシャーロット嬢を釣りたかったわけではないのに…
この騒ぎのせいで本幕に隠れられたら困るのにな…

「君のパートナーになることは正式に断っただろう？その話を捻じ曲げるなんてどういうつもりだ？」

「ねじ曲げていません。私は本当のことを言っています。こんなに大勢の人達の前で言いたくはありませんでしたが私はネイオウミお義姉様にずっと…ずっといじめられていたんです。」

「えっ？」

この場で何でそんな嘘がつけるんだ？
イオですらその嘘に驚いている。
転んだはずの令嬢もイオに陰口を言っていた令嬢達もだ。
この状況に気づかないシャーロット嬢は神経が図太いのか…空気が読めないのか…とんでもない馬鹿なのか…
イザベル嬢が聡明なだけに本当に少しでも血が繋がっているのか？と疑いたくなる。
俺の態度がシャーロット嬢が言っていることは荒唐無稽な話だと示している。
彼女の言葉を借りるならこんなに大勢の人達の前で滑稽な姿を晒すことになって可哀想にとしか言えないな。

「ネイオウミお義姉様！とぼけてもムダですよ。私をのけ者にしたり、口汚く罵ったり、私の大切にしていたドレスを切り刻んだり…あまつさえ私に怪我をさせたり…思い出すだけでも…っ…」

「……………。」

あまりの言い分にイオは目を丸くしていた。
イオの立場からすればそうだろうな。
俺達の家に来たイオは階段から突き落とされて怪我をした状態だった。
イオの話を聞けば酷い扱いを受けていた。
そんな相手にこんな言われ方をしたのであれば言葉を失っても仕方ないだろうな。

「嘘を仰いシャーロット。」

そう言い放ったのはイザベル嬢だった。