(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

奏直

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払われた手

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キャサリンお義母様がお声を出されたのを聞いて私はビクリとしてしまいました。
シャーロットが妊娠していることはアイザックという方しか知らないとクラレンスさんが話していらっしゃいました。
お義母様も、もちろんお父様も知らないでしょう。
この場にいる方の内で一体何人の方がシャーロットの話を信じているのでしょうか?
恐らくハロルド様を信じる方々が多いとは思うのですが…私の存在が足を引っ張りますよね…
レナイト侯爵家の人間だと言われていても得体の知れない私の事を不審に思う方が多いに決まっています。
何よりもハロルド様を想っている方々にしてみれば私がハロルド様を騙していると思った方が都合がいいに決まっていますもの。
自分で考えていても落ち込んでしまう話ですわ。
キャサリンお義母様にしてもここで明らかに嘘だとわかるシャーロットの話を擁護されるかですね。
お義母様は社交界ではそれなりの信用と地位を得ているようですから…私には冷たかったですがそれは私だからだったのでしょうね…
キャサリンお義母様にシャーロットは何というのでしょうか?

「お、お母様…?」

シャーロットの問いを聞きお義母様はゆっくりと近づかれます。
それまで私とハロルド様、それからシャーロットに興味があった観衆は今はお義母様の動向に注視しています。

「シャーロット、お腹に子供がいるとはどういうこと?一体誰の子供なのかしら?嘘をつかずに答えて頂戴。」

お義母様のお声は私を責め立てていた時と同じ恐ろしくて背筋が伸びるような恐怖を匂わせる、でも凛としたお声でした。
そのお声に私さえも凍りついてしまいました。
そんな私をハロルド様はそっと支えてくださいますが…シャーロットは今この会場で1人立ちつくしています。
私にもシャーロットにされた事に思うことは多々あります。
でも、こんなシャーロットを見たいとは望んでいませんでした。
コツコツとお義母様の靴の音が響きます。
遠くではまだこの事態に気づかず夜会を楽しんでいる人もいる様ですがその方々も気付かれるのは時間の問題です。
そうなった時シャーロットはどうなってしまうのでしょうか?
お腹の子供は…どうなってしまうのでしょうか?
家族に愛されず育てられるようなことは…絶対にあってはいけないのです。
だからと言ってシャーロットの言うようにハロルド様とシャーロットが一緒になるのは…嫌です。

「お…お母様…それは…」

「嘘を吐いていたの?」

「い、いえ…その…」

「じゃあ、あなたが子供を授かったのは本当なのね?」

「あの…」

「そう。それじゃあ相手は誰かしら?本当にハロルド・サミュエル公爵令息なの?あなた自分で言っていたわよね?彼は王位継承権を持っていると…その彼を相手に、しかもお爺様の主催した夜会で嘘を吐いたのかしら?それとも本当にネイオウミが彼を騙したのかしら?」

お義母様の問いに固まったまま動かないシャーロットの体がぐらりと揺れました。
私は咄嗟にシャーロットに駆け寄り手を差し伸べました…が…

パシンっ

「触らないで‼︎」

そう言いシャーロットに手を払われてしまいました。
私はそこまでシャーロットに憎まれ嫌われているのですね。
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