(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

奏直

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行方不明の人視点①

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夜会が突然終わりを告げた。
ジェダイナ公爵家の夜会会場は夫人が閉会の声をあげても暫くは騒ついていたいたが、次第に人波は少なくなっていく。
そろそろ俺も出て行っていいかな?なんて考えていたら嬉しい声が聞こえてきた。

「た、大変ですハル様!公爵様?公爵様でも良いですか?ダメですか?とにかく公爵様やアイザックさんが犯人さんならダニー様の居場所を聞かなくてはいけなかったのに…今からでも追いかけていけば間に合いますかね?」

イオが俺のことを心配してくれている。
それが嬉しかった。
実は俺は“派手に殴られてやった“と思っているが…そのあと、俺に襲いかかる男を殴り走って逃げた。
正直に言って俺が殴ったところで相手を怯ませることすら出来なかった。
あの時は本当に必死になって逃げた。
捕まったら殺されると思った。
イオを守りたいけれど死んではイオに会うことも叶わなくなる。
そんなことは嫌だった。
そんな事で死んだら俺はイオを守ったと思いあがったうえで死ぬ自己満足男になってしまう。
俺は生きてイオに会ってイオと話したい。
例えイオがハル兄を好きでも…だから俺はとにかく走った。
走りながら生き延びたらエド兄に特訓してもらおうと思いなだら走った。
入り組んだ道を使いながら逃げていた時、ふと俺を引っ張る手に助けられた。
急に引っ張られたため、倒れそうになりながらある部屋に入った。
俺を引っ張ったのは少年と言っていいくらいの男の子だった。


「君は?」

「ヴィンセント。」

子供の割に随分と無愛想だと思った。

「俺を助けてくれたのか?」

「そうだよ。義姉さんが悲しまないようにね。」

義姉さん?

「誰の弟だ?」

「お兄さんが恋焦がれているネイオウミ・レナイトだよ。」

何で俺がイオに恋焦がれているなんて知ってんだよ。

「何で?」

「…………。どうして追われてたの?」

俺の質問には答える気ないの?

「イオが…君のお義姉さんが狙われているから危険を知らせようとして奴らに追われることになったんだよ。」

「そう。それはありがとう。」

何で君にお礼を言われなきゃいけないのかな?

「僕はまだ会場に入れないからお兄さんが会場に戻ってよ。」

できるならしているんだが?

「大丈夫だよ。僕はこのジェダイナ家の孫だから。とは言っても僕は爺さんは信用してないんだよね。お婆様は信頼しているけどね。だからお兄さんを秘密裏に会場に戻す手助けは出来るよ。ただ、お兄さんは目立つから変装して戻ってね。」

戻れるなら…戻りたい…でも信用していいのか?

「僕もお兄さんのことを信用しているわけじゃないから信用しなくていいよ。ただ義姉さんを守ってくれるならね。」

何だこいつ…何で俺が考えていることが分かるんだよ…

「お兄さん顔に出やすすぎだよ。僕が一番苦手な真ん中のお兄さんくらい隠せなきゃ…」

真ん中のお兄さん…ってハル兄か?ハル兄とも面識あんのか?

「とにかく会場に戻してあげるね。」

かくして俺はこの生意気な少年によって会場に戻れることになったのだ。
だからことの一部始終を俺も知ることが出来たわけだ。
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