灰色の残響

るい

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神からの命

 遥か高天の聖域。天界と呼ばれる場所に、ルイ、アレンと呼ばれる双子の天使がいた。

 ルイはなんでもできて、ほぼ全員の天使と神からも信頼される存在だった。
 それに比べアレンは、ルイが居ないと何もできない出来損ないの天使だった。重要な仕事も任されず、雑用ばっかりしていた。

 ある日、神に呼ばれた彼らは神の間に向かっていた。歩いている時、アレンはルイの少し後ろを歩いており、ルイの服の裾を掴んで不安げにしていた。
「ねえ兄さん。なんで僕たち呼ばれたんだろうね」
「きっと何かの任務を与えてくれるんだよ。そう心配しないで」

 そうこうしている内に神の間につくと、部屋の前にいる護衛の天使と目を合わせ、大きな扉を開けてもらった。

 部屋の中は護衛であろう天使も神もおらず、シルクでできたカーテンの1枚しかなかった。
 部屋の中に入りすぐに頭を下げ、ルイがこう言った。
「ただ今、私ルイと弟のアレンが到着いたしました」

 どこにいるか分からない神が口を開いた。

ーよく来た。楽にせよ。
 頭を上げ、ルイはすぐに神に聞いた。
「我が主。なぜ私達をここへ呼ばれたのですか」

ー君達に任務を与えようと思ってな。

 神から命じられた任務の内容は人間界へ降り、人々を助けよという内容だった。
 それは全ての天使がやりたいほど重要で特別で、報酬はとてつもなく豪華。しかし、他の任務と比べ過酷な任務でもあった。長寿の天使もメンタルだけは弱く、辛いと感じる時が多いらしい。
 なぜなら長期間を人間界で過ごし、ある数の人間を助けるまで謎のバリアに阻まれ戻ることのできないからだ。

「……では我が主よ、私の仕事はどうなるのでしょうか」
 ルイの仕事は少数の天使にしかできず、他に頼める人も大忙しであった。

ーそれならまずアレンが先に行ってもらえ。仕事が済んだらルイが後から行けばいい話だろう?

「僕、あ、私はいけます……っ!」
ーでは解決だな。下がって良いぞ。
「……失礼します。」

 そうして彼らは神の間を後にした。

ーーーーーーーーーーー
 その夜、双子のお祝い会をしてもらった。神曰く、アレンは明日には出発しなければ行けないらしい。
 対して仲良くない者もアレンに媚びを売り、ルイ以外は楽しいパーティーだった。
 だがしかしパーティー中も、パーティが終わって部屋に戻っても、ルイはずっと何かについて考えている様子だった。

 (我が主がアレンを1人だけで……?意図がわからない。アレンの能力も、僕がいないとできないのに……?)

 ずっと考えても考えても結論を出せず、気がついた時には寝ていた。

 出発する時間帯になり、アレンと仲が良い数人が見送りに来てくれた。
 ルイは遅れてやってきた。
「アレン、僕達ずっと一緒にいると思ってたのにね。まさか離れちゃうなんて」

 アレンは照れながらこう言った。
「ねえルイ、ずっと前に言った“僕はアレンと何があってもずっと一緒に居るよ”っていう約束覚えてる?ふふっ、まさかこんなことで破られるなんてね」

 今日は雲が少なく、青い空が見える。早朝だからか眩い光がさんさんと差しこむ。
 それがアレンの顔に当たって綺麗だ、とルイはふと思った。

 アレンが首に手を回し、身につけていたネックレスを外した。
「ルイ、これ頼んだよ」
 ルイに渡した、中に透明な液体が入っている雫型のネックレスは危険を感じたらすぐに黒く濁る、天使にとって最も大切なものだった。
「無くさないように気をつけるよ…」
 それを聞いてからアレンは笑って、そして未熟で小さな翼を広げる。
「あはっ、早く来てよね!」

 アレンの翼は白く輝いていた。

ーーーーーーーーーーーー
 ​今地上に降り立ったのは、心優しく、けれど繊細すぎるアレンだった。

 アレンは懸命に人々に手を差し伸べた。兄が居なくてもアレン自身で何事もできるように頑張った。
 しかし、兄という支えを失った彼は、あまりに無力だった。奇跡を起こせぬ彼を、人々は「偽物の天使」と蔑み、その心を執拗に削り取っていった。

 ある村人がこう言う。
「お前など天使ではない。天使の風上にも置けない、穢らわしい詐欺師だ」

 ​投げつけられた呪詛の言葉が、アレンの純白の魂を黒く染める。
 絶望に沈んだアレンの背から、かつての羽がひらひらと剥げ落ちる。

 村人は偽物の天使であるアレンを捕らえた。手は鎖で縛られ、十字架に貼り付けられたかのようだった。

 どのくらい経ったのだろう。
 今となってはその翼はかつての美しい白い翼ではなく、黒くまだらな翼へと変わっていった。
 それは神への背信ではなく、人間による拒絶が生んだ悲劇だった。


 天界の歴史書にはこう書いてある。
“純粋で心優しいかつ繊細な◼◼が人間に舞い降◼た。◼る◼◼◼◼……”
※この先はインクが滲んでいて解読不可能
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