神獣の僕、ついに人化できることがバレました。

猫いちご

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前編



 はい、どうもこんにちは。
 神獣フェンリルのハク、121歳です。
 今僕は、背後から抱きついている形でこの国の皇子であるハディスに捕まっています。

「…ハク。神獣は100歳…人でいうところ10歳をこえたら、人化できると聞いたんだが?」

『……』

 ついにバレた。ヤバい。あの時、誤魔化すためについた嘘がこんな形で帰って来るなんて聞いてない!!

「なあ? ハク?」

 尖った耳を撫でながら言ってくる。

 ひぃー。
 なんでこんなことに~~~!?



 ***



 100歳になった日――
 母上が言った。

『あなたも今日で100歳。私達神獣の中では、自立の年です。私達から離れ、自分の手だけで生きていくことが必要なんですが…』

 母上の話を中断させたのは父上だった。

『俺が若い頃にいた所に行け。転移で送ってやるから、見聞を広めてこい。たまには帰ってこいよ? じゃないと寂しくて泣くからな?』

 しっぽを垂れ下げ、泣いちゃうよ? 泣くからね? という副音声が聞こえてきそうな言葉に僕と母上は思わず苦笑した。
 父上は呆れてしまうくらい親バカなんだ。

 『ちゃんと帰ってくるね』という言葉を最後に父上の転移魔法で転移した。



 光が収まり、いつの間にか閉じていた目を開ける。

 そこは広い場所だった。数段上の所に豪華な椅子があり、その椅子の前で固まっている若い男性が居た。

「…し、神獣、様?」

『えっと…こんにちは?』

 そこまで言うと、彼は倒れてしまった。



 そこからは嵐がきたように、人が動き始めた。

 倒れた男性を運んでいった人。豪華な格好をした女性と話している人。僕に上質な絨毯を持ってきた人…などなど。

 父上母上…どうやら前途多難のようです。


 後から聞いた話を纏めると、

曰く、神獣が国に来訪した場合、国をもって歓迎すること。機嫌を損ねさせないこと。縛らず自由にさせることが基本で、100年以上前…つまり父上が滞在していた頃以来、この国に神獣が訪れたことがなかったらしい。そのせいで神獣に対して歓迎の準備がされていなかった、と。

 そんな中、突然光を纏いながら現れた神獣に驚き、こんな騒ぎになってしまったらしい。
 まぁ、突然現れたらそうなるよね…。


 倒れた男性は、ディーンといって、このアーフェイド帝国の皇帝らしく、最初の一ヶ月は僕にどう接していいか分からなかったのかあわあわしていた。だけど今は普通に会話をしてくれる。…相変わらず敬語だけど。

 豪華な格好をした女性は、シェスンといって、皇妃でディーンよりフレンドリーだった。愚痴を言ったり、相談したりしながら仲良く話してくれる。
 そんな僕らを見て慌てている人はいるけど…。


 城でのんびりしたり、魔法を覚えたり、時々父上達に会いに行ったりしてゆっくりとした時間過ごしていた。





 帝国に来てあっという間に4年が経った頃――

 「おぎゃあ、おぎゃあ」という産声が城内には響いていた。第1皇子ハディス・アーフェイドの誕生である。

『……綺麗』

 僕はハディスを初めて見た時、綺麗だと思った。帝国の王家の血を引いていると一目で分かる金髪緑眼だった。けれどそれよりも、海のように透き通った色で綺麗な魂に引かれた。

 僕達神獣は綺麗な魂の持ち主に引かれる。綺麗って言っても、感じ方はそれぞれだから同じ相手に引かれることは低い。

 僕の父上や母上みたいに神獣同士で恋に落ちる時もあるみたいだけど、ほとんどは違う種族とくっつくことが多い。
 海に面している隣国マリオーネの王の姉も、神獣リヴァイアサンと結魂しているみたいだし。

 それから時間がある時はよくハディスに会いに行った。ハディスはどんどん成長していった。



 ハディスが生まれてから、また4年が経った。

「しんじゅうさま。しんじゅうさまのこえはどうしてあたまからきこえるの?」

『僕の声? えっとね、これは念話って言って、僕達神獣は念話を使わないと話ができないからだよ』

「へぇー。じゃあしんじゅうさまのおなまえは?」

『僕にはまだ名前がないんだ。契約する時につけて貰うんだよ。僕はハディスから名前が欲しいな』

 異種族と契約する時、神獣は相手から名前を貰うことで契約できる。僕はまだ契約していない。
 ハディスは綺麗な輝きを持った魂で、ハディスとなら契約したいなと思っていた。

 僕は扉の前で話を聞いていた従者が「え!! 今すぐ陛下に報告しないと――」といいながら走って行ったことに気付かなかった。

「しんじゅうさまとけいやくするー! おなまえかんがえるー!」

『ありがとう』

「しんじゅうさまは、まっしろでうつくしい毛をもっているから、[ハク]!」

 瞬間、僕とハディスの間で契約が交わされた。
 僕とハディスを囲むように光の輪ができ、僕の耳にはハディスの魂の色である透き通った青のピアスがつき、ハディスの左手の甲には契約紋が浮かんだ。

「ハディス待て!」

 扉の方から声がして、見ると肩で息をしたディーンがいた。そして、ハディスの左手の甲を見て、遅かったかと呟いた。

 ハディスは契約の時、魔力をもってかれたせいで疲れたのか寝てしまった。




 ディーン達にに詳しい話を聞かせると、目を輝かせるシェスンとは反対に、ディーンは顔色を悪くしながら頭を抱え始めた。

「し、神獣様…。契約の相手がハディスで良かったのですか?」

「何を言っているんですか!! わたくし達の息子が神獣様と契約したんですよ!」

『えっと…ちょっといいかな?』

 ぎゃいぎゃいと言い合っているディーン達を止めると、僕は契約について詳しいことを説明し始めた。

『この契約はあくまでも、名前を授けるという友の契約なんだ』

「友の契約…?」

『そう。神獣と契約を交わすのには何個かあって、これはその一つなんだよ。
 友の契約は一番軽いもので、一番強い契約は血の契約。まぁ、人の言葉でいうと、結魂だね。魂を繋げるって意味なんだよ』

「軽い…。ではすぐに破棄できるものだと?」

『ううん。契約は一度成すと破棄はできない。軽いというのは、魂の繋がりがという意味なだけで契約したこととは変わらないからね』

「ハディスに何か影響は?」

『友の契約は別名、魔力の絆。今は魔力が切れて寝ているだけだよ。
 でも僕の影響で魔力量が大幅に上がるかもしれないから、勝手なことしてごめんね』

「いえいえ。そんな…!」

「そんなことありませんわ」

 この二人はいつも優しい。
 ハディスはこんな優しい二人から生まれたから、こんなにも綺麗な魂をもっているのかもしれないな。




 目が覚めたハディスは4歳にして、帝国一の魔力量を手に入れた。最初の頃は僕が制御を教えないと、感情によって暴走していたけど、契約からたったの2年に魔力制御を完璧にこなした。

 ハディスが14歳になり、隣国の学園に通うことになった頃、ハディスは神獣について聞いてきた。

「ねえ、ハク。ハクって今何歳?」

『えっと、確か118歳だよ』

 そういえば、いままで聞かれたことなかったから、ハディスは知らないっけ。

「ハクのお父さんは?」

『300超えた辺りから数えてないんだって』

「す、すごいね。ハクはもう人化できるの?」

『……まだなんだー』

「そっか。頑張って!」

 この時、僕は初めてハディスに嘘をついた。

 僕のハディスへの思いは日に日に強くなっていったんだ。契約した時は魂の引かれていた。
 でも家庭教師がついた頃、いつも一緒にいるハディスが居なくて寂しかった。令嬢と話しているハディスを見て、胸が痛くなった。

 もう認めてる。僕はハディスが好きだ。魂も声も全部が好き。
 今人化できるとハディスに言うと、僕は諦められなくなる。だから言えない。
 ハディスはこの国の第1皇子。弟もいないから、僕がハディスを好きになったら迷惑がかかる。だから自分とハディスを誤魔化すために嘘をついた。




 それからハディスは学園に行った。隣国で全寮制だったから、長い休みぐらいしか帰れないだろう。
 寂しいけど、3年なんて僕にとってはあっという間だ。でも、ハディスが学園に行ってから、時間がゆっくり流れているように感じた。

 ディーンやシェスンはそんな僕を心配そうに見ていた。






▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫

ハクの人化について書いておきます! 後編ではこれが前提として進めます。

ハクの人化…白銀の髪。紫の瞳。
        12歳の美少年。
        耳としっぽは残っている。
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