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後編

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 17歳で学園を卒業したハディスが帰ってきた。(前編の冒頭に戻る)



「ねえハク。なんで嘘ついてたの?」

『……』

 バレた。いやいつかは絶対バレると思ってたけど、時間が過ぎたらこの気持ちが消えると思ったんだ。でも違かった。
 どんどん大きくなっていったし、学園で好きな人が出来たらどうしようってずっと胸が痛かった。

 だから僕は――

「ハク。私はハクが好きだよ」

――え?

『なん、で…?』

「小さい頃からハクが好き。ハクと契約した時にからずっとハクの魔力を私の中から感じていた。
 ハクの魔力はとっても温かくて優しい魔力なんだよ?」

 自分の中に違う魔力がある時、その魔力は自分へ向けられている思いが現れる。もちろん僕の中にもハディスの魔力はある。契約の時にもらったから。

「私の魔力はどんな感じなのかな?」

『…っ』

 すごく優しくて、綺麗な魔力。涙が出る。ずっと叶わないって諦めてた。だけど、ハディスも同じだった。


 僕は生まれて初めて人化をした。
 ハディスに抱きつく。

「ハク?」

「ずっと…ずっと好きだった…ハディスがっ…。でもっ、ハディスは第1皇子で…言ったら迷惑がかかるって、思って……」

「うん…」

「っ…。人化できるって言ったらもう抑えられなくなりそうっ、で…誤魔化して、嘘…ついて
 ごめんなさいっ…ごめんなさい…。やだよぉ、嫌いにならないで……」

「大丈夫、嫌いにならないよ」

 優しく抱きしめてくれた。いままでこんなに泣いたことなんてないくらい泣いた。
 僕が泣き止むまで、ハディスはずっと慰めてくれた。



 …恥ずかしい。「落ち着いた?」ってハディスが聞いてくるけど、恥ずかしくて顔見せられない。
 今気付いたけど、僕が人化すると10何歳ぐらいになるみたい。ハディスが大きく感じる。なんか新鮮だなぁ。

「ハク?」

「…んむぅ」

 肩にくっついて、匂いを嗅いでいたらはがされた。

 僕は頬を膨らませる。ハディスは口を片手で押さえて横を向いてしまった。
 どうしたのかな?

「あざとかわいい…」

「? どうしたの?」

 ハディスの顔を覗き込む。ハディスは耳を真っ赤にして、僕に抱きついた。ハディスの胸板にくっつく体勢になる。僕は久しぶりのハディスの匂いを堪能した。

「♪~(スリスリ)」

「はぁ」

 ハディスは僕を抱き抱えると、部屋から出た。

「ん~…。どこ行くの?」

「父上のところだよ」

「う~ん。元に戻る?(首をかしげながら)」

「(ぐっ、可愛い)…そのままで大丈夫」



 ***



(ハディス視点)

 小さい頃からずっと一緒にいるハクが好きだった。ハクは神獣で契約は交わしているものの、私ごときが好きになって良い存在ではない。

 神獣は縛ってはいけないのだ。でも、好きになって諦められるはずがない。

 契約でハクの魔力が私の中にある。その魔力はひどく優しく、温かい…。ハクそのもののようなんだ。
 隣国の学園に行くことになっても、常に私を元気づけてくれた。


 学園に来て2年目。
 神獣の授業で…ハクが人化できることを隠している知った。だけど、嘘をついたのは理由があるはずだ。

 長期の休みの時に帰っても、ハクは変わった様子がない。だが、言ったら変わってしまうかもしれない。


 悩んでいる間にも時間は過ぎていき、卒業を迎えた。
 卒業をして…決めた。

「…ハク。神獣は100歳…人でいうところ10歳を超えたら人化できると聞いたんだが?」

『……』

 ハクは何も言わなかった。だから私は、ハクへの思いを伝える。震えた声でなんでと聞いてくる。

 ずっとずっと好きだったこと。
 ハクの魔力のこと。

 ハクは少年の姿に人化し、私に抱きついて、泣きながら教えてくれた。

 抱きしめる。話が終わると、謝りながら泣いていた。だんだんおさまってきたから声をかける。
 
「落ち着いた?」

 返事はなかったけど、

「ハク?」

「…んむぅ」

 ハクは匂いを嗅ぎ始めた。

 え! 少し待って。人化の状態で嗅がれると恥ずかしい。
 ハクを引き剥がす。

 ハクは頬を膨らませて、こっちを見ている。初めて人化したハクの顔を見た。耳としっぽが残ってはいるが、白銀の髪によく映えるアメジストの瞳をしていた。

 思わず、口を手で押さえて横を向いてしまった。本音が零れる。

「あざとかわいい…」

「? どうしたの?」

 聞こえなかったみたいだけど、覗き込まないで! ハクに顔が見えないように抱きしめる。
 匂いを嗅ぎ始めたけど、見られるよりはましだろう。

「♪~(スリスリ)」

「はぁ」

 理性が切れない内に父上のところに行こう。

 「どこに行くの?」と少し顔を離して聞いてくるのに悶えながら「父上のところだよ」と返した。
 首をかしげながら聞いてくる姿に今すぐ叫びたくなるのを呑み込み、執務室に向かった。



 ***



(ハク視点)

 ハディスに抱えられながら、ディーンの執務室に着いた。ハディスに降ろしてもらう。

 ――コンコン

「父上、ハディスです。ハクもいます」

「どうぞ」

 あれ? シェスンの声がする。
 中に入ると……

「ハク? 元気そうね」

「ハク!」

 そこには、ガチガチに固まっているディーン。
 ニコニコと楽しそうなシェスン。
 そして、人化した父上と母上がいた。

「えーー!!!」




 大声を出してしまったのは仕方ないよね?

「父上、母上。どうしたんで――」

 すか? という前に、シェスンがキャーっと叫び、抱きついてきた。「あらあら」という母上の声が聞こえる。

「ハクちゃんがね、やっと告白して人化もしたみたいだったから来たの」

「…!?!! なんで知ってるの!?」

「なんでって、お母さんだから?」

「えぇ…」

「キャー! ハク様こんなに可愛くなって! ハディス! やっとくっついたのね!!」

 部屋に入った所で固まってたハディスが再起動した。

「え。は、はい」

 そこからさらに騒ぎ初めて、落ち着いた頃、本題に入った。

 まず母上から。

「二人の結魂について何だけど、私達は大歓げ…「儂は認めてな…いてっ」大歓迎よ」

「相変わらずだね…」

「わたくしからも良いでしょうか! ディーンとわたくしも賛成です」

「跡継ぎは――」

「問題ないわ、ハディス。わたくし達が二人目作るから!(グッ)」

 シェスンが大胆。ディーンが今の言葉で戻ってきた。少し赤くなってアワアワしてる。
 ハディスと顔を見合わせる。あっさり解決して、拍子抜けしてるのはハディス同じみたい。

「意外? 大体ね、ハク。神獣はもっと我が儘言って自由にして良いのよ?」

「え? 充分自由にしてたと思うけど…?」

「お父さんがね、ここにいた時は――」

「その話はやめてくれ!」

 母上が話しだそうとしたら、父上が慌てて止めた。

「まぁそれは今度話すとして、ハクちゃん。そもそもあなたがハディスちゃんと契約した段階でアウトだったのよ?」

「え?」


 母上曰く、神獣と契約を交わした者が王になった場合、国同士の均衡が崩れるため契約者は王になれないらしい。
 隣国で第1王女である契約者が王でないのが、良い例だと言われた。

「やっぱり親子だわぁ」

 という意味深な発言は僕の耳に入って来なかった。
 僕が契約したせいでハディスが王になれない? 大変なことをしちゃたんじゃ

「ハク。実はね、学園に行く前に年齢とか人化できるかとか聞いたよね。あの数日前に父上に王位を継ぎたくないって言ってたんだ(訳:バレないように外堀から埋めようとした)」

「!?」

「ハクと一緒に居たかったから言ったんだけど、必要なかったみたいだ。ハクのせいではないよ?」

「一緒、に…」

 僕は恥ずかしくなって、ハディスの背中に隠れてしまった。

 その時のハディスは笑顔のまま固まってたとか、そうでないとか…。




 アーフェイド帝国の第1皇子と神獣フェンリル・・・・・の結魂は国どころか大陸をも震わせた。この時母上が「こんなに大騒ぎになるなんて…ねぇ? あなた」と父上に言い、父上が目を反らしていたのが気になった。


 ハクの父上は一体何を仕出かしたのか!?
 真実は各国の上層部、一部の神獣達しか知らない…







▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪

私がパッと思いついた作品でした。
ハクはちゃんと服を着ています。ご都合主義ですので、細かいところは気にしないでください。<(_ _*)>
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