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プロローグ
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「櫻野!ちょっといいか」
先生に呼ばれた。
俺の名前を大きな声で呼ぶのは、先生くらいだ。
だから、よくある「誰か呼んだ??」なんて言葉など言ったことがない。
俺は、何もかもが普通で目立ちもしないから、特に仲のいい友達がいる訳でもなく、別にいじめられている訳でもない。
そんな平凡な日々を送り、働き、いずれは死ぬ。
きっと、俺の人生なんてそんな人生だろう。
「大翔ーー!」
そう呼ぶ声が、教室。いや、学年の廊下中に日々響きわたる。
この声は、聞き馴染みがあった。
その声の主は、俺の幼なじみ。
彼の名前は、緋山和樹。
クラスのトップクラスの運動神経を持ち、顔もイケメン。
もちろん、バレンタインともなれば、ものすごい量のチョコレートを持って帰っている。
その時、必ず俺に言う言葉がある。
それは。
「どうしよー食べきれないー」
ということだ。
そうして彼は、いつもニヤニヤしてる。
女子に呼び出されて貰うバレンタイン。
俺は、和樹が女子から貰う場面に遭遇したことがあるが、貰った時の反応はとても塩対応。
でも、本当はめちゃくちゃ嬉しいのだろう。
彼は、遠回しに俺に自慢してきた。
でも、彼のおかげで学校で喋ることが出来ている。
「大声で呼ばないでって言ってるじゃん」
「ごめんごめん笑」
「で、用件は」
「そんな、真面目な顔で言わないでよ!用件っていうか、あのさ笹山が呼んでたぞ。職員室来てって」
彼は、よくいる陽キャの象徴で先生呼びをしない。
「笹山先生な」
「いいじゃんよー。そんな細かいこと」
「細かくはない。」
「まあまあ。」
「ありがとな、じゃ、職員室行ってくる」
「おう。頑張れー」
頑張れーと言う彼の声は、やはり大きく廊下にいる誰もが聞こえていた。
その後の、笹山先生の話は別に大したことはなく、今日1日、いつものように終わった。
下校は、いつものように1人。
でも、今日はただ帰るだけで終わらなかった─────
日も落ち、暗い道を俺はイヤホンをせず、スマホをいじりながら帰っていた。
「大翔くん。」
えっ。
振り返ると、暗い公園の中に1本咲き誇る桜の木の下に、人の影。
その影は少し光って見えた。
少し怖かったけど、近づいた。
その時に、若い女性ということが分かった。
でも、俺には見覚えがないし、第一なんで俺の名前知ってるんだ。
「あの。どちら様ですか?」
恐る恐る話しかけてみると、華奢な声で彼女は言った。
「私は、櫻乃美月」
俺はこの時、彼女が人生を変える存在になるなんて思ってもみなかった。
先生に呼ばれた。
俺の名前を大きな声で呼ぶのは、先生くらいだ。
だから、よくある「誰か呼んだ??」なんて言葉など言ったことがない。
俺は、何もかもが普通で目立ちもしないから、特に仲のいい友達がいる訳でもなく、別にいじめられている訳でもない。
そんな平凡な日々を送り、働き、いずれは死ぬ。
きっと、俺の人生なんてそんな人生だろう。
「大翔ーー!」
そう呼ぶ声が、教室。いや、学年の廊下中に日々響きわたる。
この声は、聞き馴染みがあった。
その声の主は、俺の幼なじみ。
彼の名前は、緋山和樹。
クラスのトップクラスの運動神経を持ち、顔もイケメン。
もちろん、バレンタインともなれば、ものすごい量のチョコレートを持って帰っている。
その時、必ず俺に言う言葉がある。
それは。
「どうしよー食べきれないー」
ということだ。
そうして彼は、いつもニヤニヤしてる。
女子に呼び出されて貰うバレンタイン。
俺は、和樹が女子から貰う場面に遭遇したことがあるが、貰った時の反応はとても塩対応。
でも、本当はめちゃくちゃ嬉しいのだろう。
彼は、遠回しに俺に自慢してきた。
でも、彼のおかげで学校で喋ることが出来ている。
「大声で呼ばないでって言ってるじゃん」
「ごめんごめん笑」
「で、用件は」
「そんな、真面目な顔で言わないでよ!用件っていうか、あのさ笹山が呼んでたぞ。職員室来てって」
彼は、よくいる陽キャの象徴で先生呼びをしない。
「笹山先生な」
「いいじゃんよー。そんな細かいこと」
「細かくはない。」
「まあまあ。」
「ありがとな、じゃ、職員室行ってくる」
「おう。頑張れー」
頑張れーと言う彼の声は、やはり大きく廊下にいる誰もが聞こえていた。
その後の、笹山先生の話は別に大したことはなく、今日1日、いつものように終わった。
下校は、いつものように1人。
でも、今日はただ帰るだけで終わらなかった─────
日も落ち、暗い道を俺はイヤホンをせず、スマホをいじりながら帰っていた。
「大翔くん。」
えっ。
振り返ると、暗い公園の中に1本咲き誇る桜の木の下に、人の影。
その影は少し光って見えた。
少し怖かったけど、近づいた。
その時に、若い女性ということが分かった。
でも、俺には見覚えがないし、第一なんで俺の名前知ってるんだ。
「あの。どちら様ですか?」
恐る恐る話しかけてみると、華奢な声で彼女は言った。
「私は、櫻乃美月」
俺はこの時、彼女が人生を変える存在になるなんて思ってもみなかった。
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