夜櫻に輝く君を想う。

2話

「私、大翔くんのことが好きなんだ。」

彼女がさらっと言った。
なんの予兆もなく、さらっと。
俺と会ったばっかのはずなのに。

「えっ、？」

「あ、ごめん。急に言ってもなんなんだって感じだよね。気にしないで」

気にしないでって言われても気になる。
誰だってそうでしょ！

「じゃ、今日はここまで！大翔くんも遅くなったら家族の人心配するよ」

じゃ、って…
急に話変えすぎだし、進みすぎ。
彼女の距離感というか、自分の言った言葉の大きさわかってるのか？

でも一応
時間を確認しようと、スマホを開くと19:00ピッタリだ。

「もう、こんな時間か」
「じゃあね」
「あ、うん。」

俺が家の方向に向かい歩き始めても、彼女は木の下から動かず、俺を見送る。
19:00というのに、日も暮れて、続く道は真っ暗で先が見えない。
これから夏だって言うのに。

ｶﾞﾁｬ

「ただいまー」

いつものように靴を脱ぎ、リビングに向かう。
その時だった。

「お兄ちゃん!!!!」
「どうした？由香」

帰るとすぐ5個下の妹、由香が血相を変えた顔でリビングから走ってきた。
俺の家は、父さんが幼い頃に病気で早く死んでからずっと母さんと由香と3人で暮らしてきた。
でも、母さんは仕事で帰るのが遅いから、ほとんど由香と2人だ。

「お母さんが……」
「母さんがどうかしたのか」


「事故にあったって…」


そんな…
そんなことないだろ。

でも、そんな深く考える時間もなく、由香が電話を受けたメモに書いてあった病院へ向かった。

これからどうなるか。
全然考える時間もなく、ただ由香を落ち着かせることしか出来なかった。
だって、中学生の由香にとって母親が事故にあったという事実は重すぎる。

「ありがとうございます」

病院に着くとすぐタクシーを降り、初療室の扉の前まで誘導された。

「お兄ちゃん……」

そう呟いた由香の瞳からは涙があった。

「大丈夫。絶対大丈夫だから。」

ー絶対ー
そんな確証なんてどこにもない…
でも、由香を安心させる為には、こう言うしかないんだ。

それからどれくらいたったか。

初療室から医者の方が出てきた。

「母さんは！」

「お母様は…」

ーー続く