夜櫻に輝く君を想う。

16話

それから彼女はそれ以上のことは何も話さなかった。

一体何者なのか。
詳しいことはわからなかったけど、とても大きく、複雑な事情があると感じた。
そこに俺が入る隙がないということも。

俺には関わる人が少ない。
それは言わずともわかっている事だ。
ちゃんと毎日喋る人なんて、5人もいない。
もちろん家族を含めて。
その中の1人。母さんを亡くして、和樹の命も長くない。美月も一生居られなくなるって。
俺の周りから一体何人居なくなるんだよ。

なんで俺の周りだけ。。

「……の…らの…櫻野」
「はい！」
「大丈夫か」
「大丈夫です。」

そっか、授業中だった。
こんなにも授業に集中できない事なんて無かった。
先生の話す声が、どんどん遠くに行くような。
そんなように、何も頭に入って来なかった。


放課後─────────


俺は、1人また通学路を歩く。
和樹も入院して、誰も俺の周りにはいない。学校の時は。
和樹がいても、一人の時はあった。
でも、本当にいないのとはまた違う寂しさだ。

また来てしまった。
今日は来ないつもりだった。この公園に。
でも、知りたかった。
彼女のことをもっと。
初めは、何時に彼女が来るのか。

いつもは、放課後急いで来ても居なくて、しばらく携帯いじってるといつの間にか居た。
だから、ずっと今日は桜の木の下にいる。

その時だった。




彼女は、突然現れた。
歩いてきたんじゃない。
天から舞い降りるように。