絶世の美少年は最悪な鬼に守られている【第二部『純白悪鬼』連載開始!】

星琴千咲

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第二十三章 玄天双煞

八十二 善い行いをしよう

***

敵を誘致する意味も含めて、幸一と修良は玄天派の服に着替えて、堂々と大道路で次の村に進んだ。

「まず本を出したところに行ってみたい。黒幕の計らいで出したのかもしれない。お金の跡を追えば、大体の筋が見えてくる」

変な書名を思い出すと、幸一はまたイライラしてきた。

「いいけど、表現の自由を妨害してはいけないよ。確かに『玄天双煞』がネタにされたけど、どの本も幸一と私の名前を使わなかった。出版商や作家さんたちにご迷惑をかけないように気を付けてね」

「えっ、先輩は本を読んだの!?」

実は、幸一も読みかけたが、好みが違いすぎで、どれも冒頭の数頁で諦めた。

「読まなければ、名誉棄損になるかどうか断言できないだろ?」

「でも、俺たちの名前がでなくても、玄天派の名誉が傷付いた。玄天派は数千年も世界の平和に尽力していた。デタラメな噂で誤解されたら理不尽だ。それに、師匠は俺たちに汚名の洗浄を命令したから、なんとしても、噂を止めて、名誉を挽回しなければならない!」

幸一は真剣な目で拳を握った。

「しかし、噂を広めるものを殴ったところで、本当に止められるのか」

「殴って止めると言ってない!先輩はどんな目で俺を見ているんだ!」

「ごめんごめん、冗談だ」

大変そうなことが目の前にあるのに、修良は愉快だ。

幸一が自分のツッコミに反応する姿、実に飽きない。

「悪い噂があれば、よい噂を立てばいい!俺たちは善行をすれば、人々の印象もきっと改善する!」

「……」

幸一の対応法を聞いたら、修良は笑顔を収めて、少し考え顔になった。

「どうした、先輩?これもだめなのか?」

「やってみてもいいけど、幸一は覚悟をしたほうがいい」

「覚悟?なぜ?」



修良が幸一に答える前に、一人の老人と一人の青年が、幸一たちに向かって走ってきた。

「おお、来たのか!さすが玄天派!お早いですね!」

老人は嬉しそう幸一たちを迎える。

「玄天派の人を待っているのですか?」

修良は老人に聞き返した。

「ええ!お待ちしておりました!私は例の依頼を出した土龍村のじょ家の執事、徐長生じょちょうせいです。こちらは使用人の徐方じょほう



この天寿国で、妖鬼精霊的事件の処理を担当する機構は御霊堂ごれいどう

しかし、御霊堂に依頼する場合、まず地方の官府に申請を提出する必要がある。

田舎の小さな官府では、御霊堂の常駐人員がいない。申請を大きな町の官府に転送して、担当の派遣を待たなければならない。

手続きが面倒だし、対応遅れのこともよくある。

だから、不思議な事件や困ったことがあったら、官府より、人々は近くにある仙道に頼むことが多い。

玄天派は仙道の最大な門派、普段からたくさんの依頼を受けている。その依頼の謝礼も門派経費の一部になる。



「ここに一番近い玄天派の支部は芳蕊ほうずい山にある『三虎観さんこかん』です。そこへの依頼ではないでしょうか?」

「えっ、違うのですか?玄天派の『三虎観』の方じゃないですか?」

修良の話を聞いて、徐執事も戸惑った。

「俺たちも玄天派だけど、ご依頼を受けた『三虎観』じゃないです。俺たちはただ通りかかりの……」

話の途中、幸一はふっと気づいた。

これは善行をする機会だ!

すると、話をガラッと変えた。

「でも、お急ぎだったら、俺たちは対応します!事情を教えてください!」

「いいんですか?できれば、一刻も早く解決したいです!」

使用人の徐方という青年は一歩前に出た。

「いいの?『三虎観』のみんなに文句を言われるかもしれないよ」

修良は幸一の耳元で囁いた。

「大丈夫だ。依頼人は大変困っているから、早く助けてあげたい。後でちゃんと『三虎観』の手柄にするよう言っておけばいいんだ」

小さい声で修良に返事したら、幸一は太陽のような笑顔を徐執事たちに向けた。

「もちろんいいです!みんなを助けるのは仙道……玄天派の一員の義務ですから!」

「おお、助かります!」

親切で輝かしい美少年を目の前にして、徐執事と徐方がひどい眩暈がした。



村を歩きながら、徐執事と徐方は幸一たちに依頼の内容を説明した。

「地震と喚き?」

「そうです。先月から、夜中になったら、旦那様と奥様の部屋で、時々変な喚きが響いています。そして、屋敷のあちこちにも、時々、地面が小さく震えています。でも、村中で聞いてみたけど、うち以外のところで地震を感じなかったそうです……」

怖がっているのか、徐執事は冷たい息を飲んだ。

徐執事の引いた様子を見て、徐方は話を続けた。

「調べるために、俺とほかの三人の使用人は旦那様の部屋で一夜を過ごしました。この耳で確かに、遠い喚きのような声を聞きました」

「どんな内容ですか?」

「えっと……」

あの夜のことを思い出すと、徐方の健康そうな顔色が少し暗くなった。

「悪鬼、悪鬼はくる……ああ、恐ろしい……不幸、逃れない……永遠に苦しむ……って、ずっと繰り返していました。そして、泣き声のような声もしました……」

「悪鬼!?その部屋に、悪鬼がいる!?」

幸一は「悪鬼」という言葉に反応して、思わず修良に一目をした。

「分かりません。声だけだったので……」

「ほかに異常なことはありませんか?例えば、お宅の誰かさんが体調が崩れて、病気になった、とか。それと、喚きと地震が発生する前に、何か気になることはありましたか?」

幸一は質問を追加した。

「体調崩れというか、みんなはかなり不安になっていて、ビクビクしています。ほかの異常は……なさそうですね」

徐方は執事に確認を求めた。

徐執事は一度頷いて、補足した。

「ええ。今年は豊年になりそうで、うちは倉を増やして、屋敷の修繕も入れて、みんな、張り切って楽しく働いたんです。雰囲気が変わったのは、その件があってからです……旦那様と奥様はもう一か月も安眠できませんでした……」

徐執事の今の話を聞いたら、修良の目に一点の光が煌めいた。

すると、修良は穏かな笑顔で徐家の二人を慰めた。

「聞いたところで、普通の怨霊か、妖怪の仕業のようですね。心配する必要はありません。こちらの玄幸一はとても優秀な仙道の弟子で、きっとこの一件をうまく解決してあげます」

名指しされた幸一はまた眩しいほどの笑顔を見せた。

「ああ、そうですね!鎮煞と浄化をかければすぐ元の戻れます!」

「!!」

もう一度幸一の笑顔に魅了されて、徐家の二人は危うく気絶した。

「ぜ、ぜひ、よ、よろしく頼みます!!」

修良は少々不機嫌そうに、幸一の耳元で注意した。

「幸一、あの自己惚れ狐をまねしていない?」

「……今は印象づくりが大事な時期だから!」

幸一は珍しく修良の指摘に反発した。

「……」



徐家は土龍村の最大な地主。

敷地内でも倉をたくさん持っている。

事件が発生する旦那様と奥様の部屋は、倉のすぐ隣にある。

幸一と修良は部屋に入ったすぐ、微かな妖怪の気配を感じた。

でも、その気配が弱すぎで、出所が掴めない。

「俺はこの部屋を中心に鎮煞の陣を描いて、妖怪を追い出す。先輩は外で見張ってくれ」

「その前に――」

修良は徐執事に向けた。

「部屋からすべて家具を出して、陽射しのある空地に移動してください」

「あっ、はい!」

徐執事と使用人たちはすぐ動き出した。

「先輩は、やつが家具に付着していると考えいるの?」

「いいえ、ここの家具はかなりいいものだから、幸一にうっかり破壊されないように保険を取っただけだ」

「ひどいな先輩!妖怪と家具の区別はできる!」

「さあ、どうかな」

修良は軽い笑い声で誤魔化した。
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