“ゲスな男”は異世界の王道を歩む

三流フラグ設計士 mako17

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第9節 ~受付嬢の慣れたくない現実~

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今日も退屈な1日が始まった。
私はそう思いながら職場へと向かう。

冒険者ギルドで働き始めて3年。
最初の頃は楽しいと思ったが、慣れて来てしまうと面白味は半減する。
それに、最近はやたら冒険者の人達が私を食事に誘ってくる。
正直言って面倒くさい。
下心があるのは分かるが、もう少し隠そうとしてほしいものだ。

「はぁ」

今日で何回目かもわからないため息を私はついた。
もちろん、誰にも見られない様に、だ。

いつも通りに淡々と午前の業務が終わり、午後が始まる。
午後もどうせいつも通り淡々と終わる。

しかし、今日に限ってはそうにもいかなかった。
親友のフィリアが知らない男を連れてきたからだ。
フィリアの登場にギルド内(特に男)の空気が変わるのが分かった。

「スイナ、今少しいいかしら?」

フィリアはいつも通りだったが、隣の男は見るだけで普通じゃない。
見たことの無い服装に身を包み、何も気に留めない様にフィリアの隣に立っている。
まるで、この街におけるフィリアの隣に立つと言う事がどれだけ凄い事なのかを知ら無い様だ。

「フィリアじゃない、どうしたの?」
「ちょっと、この人のステータスチェックして欲しいんだけど、頼めるかしら」

私は少しだけ目線を上下させて、その男を確認する。
やっぱり見たことの無い男だ。

「見かけない人ね。新しく街に来たの?」
「そんなところ」
「色々気になるけど、わかったわ。ちょっと待ってて、準備してくるから」

フィリアの依頼だとギルド長に告げ、専用の部屋を開ける。

「では、魔法陣の中央にある紙に自分の血液を垂らしてください」

フィリアが連れてきたという事は何かしら凄い逸材なのか、騎士団に入団した新米騎士なのか。
どちらにしろ、未来有望な戦力に違いない。

「その紙には自身のステータスが書かれています。個人情報になりますので公開は本人の自由ですが、もし冒険者に登録される場合は紙の下半分を切り取っていただき、上半分の基本ステータスのみ受付で提示していただく必要があります」

マニュアル通りに私が説明を終えると、その男は何の警戒も無しにステータスカードの半分を私に渡してくる。
普通、初めての場合個人情報を提示することに抵抗を憶えるはずなのだが、この男はそれがなかった。

私は2人に待合室で待っていてと伝えると、受付へと戻る。

名前  : タチバナ ユウト
性別  : 男
職業  : 旅人
レベル : 1
HP   : 100/100
MP   : 20/20
ATK  : 20
DFN  : 30
MAT  : 10
MDF  : 20
INT  : 80
AGI  : 30

正直言って弱い。
私より弱い。

こんな男をどうしてフィリアは連れてきたのだろうか。
不思議だ。

「ユウトさん、手続きが完了しましたので、こちらに来ていただいてもよろしいでしょうか?」

私が呼ぶと、素直にその男はこちらへと近づいてきた。
そして、フィリアと別れのあいさつを交わす。

んー?少しフィリアに気があるような感じかな?
私の直感がそんな風に感じた。

「ユウトさん、最終手続きを再開してもいいですか?」

慌てて振り返る男をの様子を見て、私は少し意地悪をしてみる。

「あの子可愛いですから見惚れるのは仕方ないですが、あんまりオススメはしませんよ?ライバル多いですし」
「・・・・・・べ、別にそう言う訳では」

今後面白い展開になりそうだなぁ。
そんな風に思いながら私は少しだけ楽しんで仕事が出来た。

『鉄壁の女』フィリアを崩せる男候補の今後を楽しみに思いながら今日も1日が終わっていった。

―――――――――◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆―――――――――
次の日。
昼を過ぎた頃だろうか。

いつも通り仕事をしていたら常連の冒険者が1枚の冒険者タグを持ってやってきた。
街の外の森で発見したらしい。

このタグを受け取る時はいつも嫌な気分にさせられる。
タグが届けられたという事は冒険者の行方不明及び死亡証明だ。
1人のはかない命が散った証明。

私にはどうしようもないが、気は滅入る。

「お疲れ様でした。ご協力ありがとうございます。ではこちらで引き取らせていただきますので、この紙を持って換金フロアへお願いいたします」

マニュアル通りの言葉を並べ、冒険者からタグを受け取る。
タグには少し血がついていたが、こんなのはいつもの事。
私は専用の布でタグを包もうと持ち上げる。

『タチバナ ユウト』

「え?」

タグに書かれた名前を見て、私は思わずタグを落としてしまった。

知っている名前だった。
昨日自分が作ったタグだ。

フィリアはこの事を知っているのだろうか。
教えてあげた方がいいのだろうか。

私はタグを布にくるみ、胸の前で抱えながら涙を我慢する。

こうだから私はこの仕事が嫌いなんだ。
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