異世界に勇気と未来は必要なのだろうか

めると

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プロローグ

一話

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俺の母さんは戦争で死んだ。
第三次世界大戦の中、食料が尽き飢え苦しむ僕たちを見兼ねて、地下から飛び出し中国軍に射殺された。

俺の父さんは戦争で死んだ。
元 自衛隊大隊長、現 新日本軍の大佐であった父は関東アメリカ基地の破壊を命じられ、その命を犠牲にして自爆し破壊したのだ。


これは残された二人の兄妹、祐樹と未来の物語である。






それは突然な始まりだった。
いつも通り俺と未来は学校に行っていた。
俺は高校2年、未来は中学2年で3歳差の兄妹だ。

俺のクラスの4時間目は英語。
次は昼休みなので購買に走って行き、
380円の1日30個限定スペシャル焼きそばパンを購入しよう、そう考えながら英会話を写しているテレビを見る。
この高校の授業は色々とテレビやパソコンを使用する授業が多いことで有名だ。
まぁノートを取らずにパソコンで纏めるのは慣れれば楽だからな、と俺は思っている。




---そんな平和が終わりを告げる。


突如 英会話を写していたテレビにノイズが走る。暫くして治ったと思うと、そこに移されて居たのはある男性の顔だった。

クラス中が騒めく。

その男性がアメリカのジェルミ・ベルゼルート大統領と分かったのはそう時間はかからなかった。
ジェルミ大統領の目は光を失っているように見える。
そしてその目からは何も感じられない。

ただ絶望と支配の真っ黒な色をしている。
そして--


「これは全世界同時中継である。
我々アメリカ軍は中国軍と共に、
他すべての国に核兵器の投下を開始する。

そう、第三次世界大戦の始まりだ。

降伏してもいいがその国は今後 奴隷国として扱う。

力無きものは力ある者に怯え、そして殺されるのがいい。ふはははっ!」


クラス中の皆が更に騒めく。
それを必死に止めようとしているのは大人である安藤先生だ。

しかし収まることはない。


「なぁこれどう言うことだよ?なんかのドッキリ番組か何かか?」

俺の唯一の親友、白城晴人が前席から俺に顔を向ける。
俺の父とこいつの父親は同じ自衛隊の部隊に所属されてるため、小さい頃からの付き合いという訳だ。

「馬鹿か、そんな事しても授業を打ち切ってまでするメリット無いだろ。
それに安藤先生を見てみろ、あの冷静な先生がここまで取り乱すのは可笑しい」

「確かに。っておい...ッ!! 来夏山を見てみろ祐樹!!」

来夏山。この高校からそこそこ距離がある火山だ。
天気がいい日に少し見える程度の山であるため何を言い出したのかと思い窓を覗く。
その山の上には飛行機のような物が飛んでいた。

「ん?飛行機か?」

「ぜってー違う!来夏山は火山の中でも、
かなり強力な磁気を放ってるから日本の航空会社、自衛隊なんかは彼処を通らないんだ。
つまりこの事を知らない奴ら、
アメリカ軍か中国軍が攻めてきたんじゃ無いか!?」

そう言えば昔父さんがそんな事を話していた気がする。晴人が言っていることが正しければ不味い。

「強力な磁気。もしそれがあの飛行物体に悪影響を及ぼし墜落させたとする。
そしてジェルミ大統領が言っていた通り核兵器を積んでいたとすれば...」

祐樹と晴人の額から汗が流れ落ちる。

「火山で核兵器が爆発、そして来夏山が噴火する可能性が高い」

俺が言おうとした事をさきどりして言う晴人。その声はいつもとは違い低く、そして震えていた。

「簡単に考えて噴火による被害がこっちに出るのは恐らく1時間かからないだろう。
こんな時どうするか思い当たるのは1つしかない」


「だな、俺も考えたのは1つだぜ祐樹」


「「逃げるぞ」」


お互い息ぴったりで頷き合い、拳を合わせる。
最悪、火山が噴火し この街が消えると言う絶望がある中。二人の勇敢な少年は覚悟を決める。
--臆病者故の逃げの覚悟を。


「そうと決まれば役割だ。俺は街の様子を確認しつつ未来と母さん、お前のお母さんを連れて自衛隊の父さんの場所に向かう。

晴人はこの学校の放送室に行き状況を説明、学生に住民たちの避難誘導を指示しろ。

いいか、お前の放送次第では最悪 恐怖でとんでもないパニックになる。なるべく皆んなの不安を取り除く事に専念してくれ」


「...中々責任重大だな。俺の放送で住民たちの避難誘導をこの学校の生徒らに頼めるかどうか...。
正直不安な気持ちしかねぇけどやるしかないな!!
よっしゃ、こっちは任せてくれ。
俺も放送で指示を出し、住民を誘導したらそっちに向かう。確か向こうには救助用の運送ヘリがあったとか親父が言ってたからそれで逃げるとするか。

なぁ祐樹、もし俺が50分経っても現れなかったら迷わず行ってくれ。
多分住民達と走って逃げてると思うからよ」


「...分かった。生き残れよ、晴人」

「あぁ、当たり前だ。祐樹、あのお袋と親父を頼んだぜ」


そして祐樹は学校指定のスリッパを投げ出し、教室を飛び出した。
安藤先生が何か自分に言い掛けてるように感じたが振り返る時間などない。

時は一刻を争うから。
生徒玄関に着いた祐樹は靴に急いで履くと先ず 未来のいる中学校に足を進ませる。

「急げ俺...ッ!!」

今までに出したことがない程全力で走り、そして5分ほどで中学校に着いた。
息は切れているが歩いてる暇なんてない。
校門を抜け玄関のドアを開ける。
そして靴のまま未来のいる教室へと走るのであった。

確か未来の教室は2-3。
2年の教室は二階にあったなと中学生時代を思い出し階段を全速力で上がる。


だが--。

ドシッ。と祐樹は音を立てて転んだ。


「痛え...。けど痛がってる暇なんてねぇんだよ俺...ッ!!人の命がかかってんだぞ!!」

そう叫ぶと挫いた足に構わず再び走り出すのだった。アドレナリンが出ていた所為なのか、
不思議と我慢できる程度の痛みだと感じていたがその時既に祐樹の右足首は捻挫していた。


祐樹は2-3と書かれた札がある教室を見つけると扉を勢いよく開く。


「未来---ッ。」

そして静寂の時が流れる。なんと国語の授業が何事もなく行われている教室だったのだ。

そして生徒達が自分に視線を向ける中、妹  未来の声と聞いたことのある国語教師の若い男の声が聞こえる。


「えっ...お兄ちゃん!?」

「君、一体... もしかして祐樹くんかい!
大きくなったね!」

元俺の担任のイケメン国語教師、上原先生が自分が祐樹であると理解した時、祐樹もまた理解していた。
このクラス、いや中学校でらテレビを使った授業をしていなかった為、
ジェルミ大統領の中継を見ていなかったのだと。


「未来、上原先生。大切な話があります。来てください」

「えっ?お兄ちゃん汗凄いけど大丈夫?私タオル持ってるか...」


時間が無いんだ...未来、悪い。


「良いから二人とも早く来いっ!」


突然の祐樹の叫び声で未来は言葉を失う。
いつも優しくしてくれる兄が自分に向けて初めて見せる表情。そして初めて聞く 低く鋭い声に未来はビックリして顔を伏せる。

上原先生は祐樹の焦り、未来の怯えを察したらしく、

「未来さん、ここは祐樹に従いましょう。
はーい、皆さんは暫く教室で待機していてくださいね」

と言うと未来を連れて教室を出て祐樹の後について行く。

階段に着くと祐樹は後ろを振り返り、後について来た二人に頭を下げる。

「さっきは大声出して悪かった。けど急いでいて仕方なかったんだ。
驚かせてごめんな、未来」

顔を伏せていた未来だったが祐樹の謝罪を聞くとすぐさま祐樹に近づき、
頭を下げている祐樹を優しく抱きしめる。

「良いよ、特別に許します」

未来の温もりで今までの走った疲れが吹き飛ぶ祐樹。自分でも「俺はシスコンなのか?」と感じてしまうほど嬉しかった。
祐樹の目は少し潤っていたが、そんな暇は無いとすぐさま目を袖で擦る。


「...それで、祐樹くん。君が高校を抜け出してここに来たって事は相当な事があったんだね?」

察しが良すぎる元担任の上原先生。
彼は読心術等を専門とした大学の授業を受け、その後国語教師となったと、いつか聞いた事があった気がする。


「えぇ。全世界同時中継でジェルミ大統領が中国と手を組み、世界各国に核兵器を投下するようです」

「...なにっ!?それは考えても見なかった返答だなぁ。けど私は分かるよ、君が嘘をついてない事をね」

「けどお兄ちゃん、確かに不味い状態だけどさっきみたいに叫ぶほど 此処は危なく無いよね?首都からはそこそこ距離あるし」

自分の言う嘘のようなことを簡単に信じてくれる未来の性格は、長所でもあり短所でもあると感じた祐樹は感じたが、状況説明を優先させる。


「来夏山は強力な磁気を放っている事を日本航空や自衛隊は知っている。
だから彼処周辺は飛ばないんだよ。

けどさっき窓から見えた飛行物体はそこを飛んでいた。恐らく日本以外の国の戦闘機とかヘリとかじゃ無いかな?
それでジェルミ大統領の話の通りなら恐らく核兵器を積んでいる。
だから...」


「なるほど、墜落の衝撃で核兵器が爆発。
そして火山が噴火する可能性があると」

「そう言う事です、上原先生」


予想外に冷静な上原先生とは逆に、未来は慌てているようだ。こちらは予想通りだ。

「ま、まままままずいよねそれ!!??
みんなに伝えてく...」

「待て未来、今お前が伝えてもパニックを起こすだけだ。そこでこの事は上原先生に頼みたいんだ」

上原先生を見る。ふむふむ、と頷いてることから状況は理解しているんだと思われる。

「高校の生徒達には近辺住民の避難を誘導させるよう、信頼できる親友に頼んだ。
その親友と自衛隊で待ち合わせしている。
それで、上原先生には此処や噴火した際に被害が出る地域に色々説明して欲しいんです。

正直に言うと後のことは俺なんかより先生に任せた方が良いと思ってます。
人任せなのは分かってますが...
お願いします」


中学生や、PTAに大人気のイケメン国語教師上原先生。
彼は人望が厚く、容姿端麗、高身長、オマケに頭が物凄く良い。

そんな彼に避難を任せる方が良いと祐樹は高校から出て走ってる時に考えていた。


「...分かりました。
私を頼りに嬉しいですよ、祐樹くん。こっちは任せなさい」

その一言でホッと心が楽になった。
こんな絶望的な状況でも上原先生のような大人は本当に頼りになる。
肩の荷が降りた祐樹は深呼吸をすると未来の手を握る。

「...!?!?」

「上原先生、頼みます」


そう言うと未来と共に階段を走り下りた。
そして未来に靴を履き替えるように言うと晴人の家に向かって走るのだった。




未来の手は先ほどから離していた。
そのせいなのか、未来は少し怒っているように見える。


「もぅ...お兄ちゃんったら。
勝手に手を掴むんなら勝手に離さないでよ...」

「未来、悪いが離してる時間なんて無いんだ!急げ!」

「分かってるよ、もぉ」

仕方ないなぁ、と言わんばかりの顔で兄を見つめるながら走り続けると、
二人は晴人の家の前に着いた。
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