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プロローグ
二話
しおりを挟む白城と書かれた表札。
晴人の家だ、何度か遊びに来たことがある。
そして晴人のお母さんとも話したことはあるが、晴人のお母さんは少し変わっている。
祐樹はインターホンを鳴らす。
「はーいっ」
ドアがガチャリと音を立て開く。
そこから出て来たのは黒の長髪でエプロン姿、右手にお玉、左手に包丁を持っている美しい女性だった。
「晴人のお母さん!お久しぶりです。
晴人の友達の祐樹です」
「妹の未来です」
「あらあらぁ!晴人くんに未来ちゃん!
よく来たわねぇ!ジュースとお菓子を今から買ってくるから中で待っててねぇ!」
まぁ、見た感じからして分かると思うが。
右手にお玉、左手に包丁を持って今からジュースとお菓子を買いに行こうとしている晴人のお母さんは、超が付くほど天然なのだ。
「晴人のお母さん、晴人くんが転んじゃって怪我をしました。晴人くんのお父さんが治療しているので、この家の大切な物だけを持って僕たちと来てください」
晴人のお母さんには悪いが、この超天然な人に説明しているほど時間はない。
さっきの俺の発言は普通の人からすれば
「なんでお父さんが治療してるの?」とか
「大切な物をどうして持っていくの?」
など思うのだろうがこの人は違う。
「それは大変ね!!分かったわぁ!
晴ちゃんのへその緒と、晴ちゃんの写真を持っていくわぁ!!」
と言い家に戻っていく晴人のお母さん。
まぁこんな感じなのだ。
写真と体の一部を持っていく。
...なるほど、埋めるつもりか。
ーー安らかに眠れ、晴人。
何て冗談を思うくらいこの人を見ていると気持ちが緩んでしまう。
本来なら良いことかもしれないがこの状況での気持ちの緩みはマズイなと思う。
兎に角時間が掛かるかも知れないから母さんは未来に任せるか。
「未来、お前は先に母さんの所に言って二人で自衛隊の父さんのところに向かってくれ。
それと父さんに伝言だ、俺は白城母を連れてそっちに行くから白城父に伝えてくれ。
ってな。任せたぞ」
「...分かった、気をつけてねお兄ちゃんっ。
後から絶対来てね、未来待ってるから!!」
そう言うと未来は家の方向へと走り出して言った。
「...そろそろ良いかな」
そう呟くと祐樹は道路に座り込み、ズボンの裾をめくる。先ほどの階段で転んだ際に挫いた場所だ。見てみると足首が紫色に変色しており、見ているだけで気持ちが悪くなるほど不気味になっていた。
「...くッ!! 流石に無理し過ぎたかな。
けどまだ休む訳には行かないんだよね」
手で地面を押し、立ち上がろうとした祐樹だったが足首の痛みで倒れそうになる。
グラっと身体が揺れたが祐樹は倒れていない。そして自身の右肩を見ると美しい女性が肩を支えてくれていた。
--晴人のお母さんだ。
「無理しちゃダメ。足首を固定するからうちに入りなさい」
「そんな時間は......くッ...!!」
「強がらないで良いの。すぐ終わるから」
「........お邪魔します...」
いつもの晴人のお母さんとは別人かと思うほど頼もしい姿に祐樹は従う事にした。
晴人のお母さんに肩を支えられ、片足で白城家に入る。中は綺麗に片付いており、
美味しそうな料理の匂いがする。
作りかけだったのだろうか。
「待っててね」
そう言うと晴人のお母さんは奥に向かい、暫くして木の杖とバック、タオルと救急箱を持って来た。
そして救急箱の中から消毒液を出して消毒し、タオルで綺麗に拭くと湿布を貼ってくれた。
その後 挫いた右足首を白い板のようなもので足首を固定して包帯でぐるぐる巻きにされた。
「右の靴は履けないだろうから置いていって。晴人のサンダルがあるからそれを履いてねぇ。それと この杖使ってねぇ」
そう言うと祐樹に杖を渡す。
木製の杖は軽い割に上部でとても歩きやすい。それと先ほどまでの痛みが嘘のように消えていた。
「ありがとうございます、でも本当に時間が無いんです。行きましょう」
「分かったわぁ。バックにへその緒とか入れたから忘れ物は無いわよぉ!出発!」
ドアを開けると他の住民達が来夏山の反対方向に向けて走っているのが見えた。
晴人と上原先生はやっぱり頼もしいなと感じつつ、杖をつき外に出る。
そして晴人のお母さんと共に自衛隊へと向かうのだった。
やっとの思いで二人は自衛隊に着いた。
門には自衛隊員がいたので事情を説明するが、証明書がないと入れないらしい。
どうしようと悩んでいたが晴人のお母さんがえっへん!!と言わんばかりの顔で俺を見ると 証明書を門の自衛隊員に見せ、
入ることが許された。
「祐樹くん!祐樹くん!」
笑顔の超天然な親友の母親。
何を言うか想像はつくけどね。
「えっへん!!」
「...ですよね。それより何処に晴人くんのお父さんがいるか分かりますか?」
「うーーんとねぇ、確かこっち!着いて来てぇ!!」
そして案内された建物に着くと 外に父さん、母さん、妹、晴人のお父さんが待っていた。
晴人の姿は見えない。あれからもう40分は経っていると言うのに。
何やってるんだよ晴人。
「「「祐樹、無事でよかった!!」」」
そんな思いの中、父さんと母さんは俺に抱きつく。そして後ろから未来も抱きつく。
く、苦しい、、、。
「待って、まだそんな事してる暇ない。
色々言いたいことあるから取り敢えず聞いて」
そう言うと祐樹は話し出した。
テレビの事、来夏山の事、上原先生の事、この右足の事、それから親友の事...。
晴人のお父さんとお父さんには正直殴られる気でいた。危険だと知りながら晴人に学校を任せたから--いや、置き去りにしたと言うべきだろうか。
なので怒られると思っていたが返された言葉は予想外だった。
「流石、うちの自慢の息子だな。もし祐樹くんの言うことを無視して此処に逃げていたら殴り飛ばしていたさ!!」
「ええ、晴ちゃん立派ですねぇ!
大切な親友を信頼して学校に残り皆んなを纏めてるのですから!此処に来る途中に来夏山から逃げる住民を見ました。
それは晴ちゃんがしっかりと高校生達が誘導してくれたお陰ですねぇ!!」
何て言うか、俺は素直に驚いた。
それは自分の息子を心配してない二人にではなく、信頼している二人にだ。
「無神経だとは分かってますが、後20分もしないうちに此処は危なくなります。
今は曇っててよく見えませんが、もう噴火しててもおかしくないです。今から10分経っても晴人が来なければ住民達と共に避難したと思い自分達もヘリで脱出したいと考えてます」
「分かった、私はヘリの用意をして置く。
手が空いてる者は中に食料や水を入れるのを手伝ってくれ。
母さんは門で晴人を待っていてくれ。
8分で来なければヘリに向かっていい。
それと祐樹君は先にヘリに乗っていてくれないか?
どちみちその足じゃ何も出来ないだろうからな。
それじゃ、行くぞ!」
そう言うと皆んなそれぞれが出来ることをそれぞれが行いだした。
だが祐樹は強い疑問を抱いていた。
自分は何も出来ないのか?と。
考えながらゆっくりとヘリに向かい、着いた。
とても大きなヘリがそこには有り、相撲取りが50人くらい乗っても余裕があるほど大きな機体だった。
そのヘリに乗り込むと、座席の横に杖を置き腰を下ろす。
そうして祐樹は今まで信じていなかった神様に手を合わせ、晴人の無事を祈った。
「神様、どうか親友を守ってくれ、...ください」
そうして祐樹の意識は途絶えた。
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