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プロローグ
三話
しおりを挟む真っ黒な闇の中。そこには何もなくただ時間と空間が存在しているだけだ。
そんな暗闇に光が差し込む。
祐樹は手を伸ばす。
しかし届く事はない。
走っても走っても決して届かない。
その光はまるで運命とでも言うように自分を嘲笑っている。
そんな中で確かに聞こえる声がある---。
「祐樹...祐樹、起きなさい」
祐樹が目を覚ますとそこは大きなテントの中だった。眠い目を擦りながら辺りを見渡す。
自分の様に寝ている人もいれば俯く人、そして心配そうにしている人もいる。
「ここは...」
「風見山国立公園よ」
そう答えた母さんは水の入ったペットボトル祐樹に渡すとインスタントラーメンにポットのお湯を注ぐ。
祐樹は渡された水をゴクッゴクッと半分ほど喉に入れると、晴人達のことを思い出す。
「ぷはっ~...。母さん、みんなは何処だ?」
「大丈夫、みんな無事よ。お父さんと晴人くんのお父さんは色んな所に通信して情報を集めてるみたいね。未来や晴人くんのお母さんはこのヘリに乗った人達にこれを配ったりしてるわ」
そう言うと母さんはインスタントラーメンと箸を祐樹に渡す。
「そっか。晴人達も無事に避難出来たかな」
心配になりつつもインスタントラーメンの蓋を取る。まだお湯を入れて間もないが、
祐樹は手を合わせると食べ始めた。
「晴人くんならきっと大丈夫よ、
よし。お母さんお父さんにインスタントラーメンを届けてくるわね。
祐樹はゆっくり休んでなさい」
そして母さんはテントから出て行った。
インスタントラーメンは意外と美味しい。
こんな中で呑気に食べていて良いのかと思ったが、こんな時だからこそ食べるのだと考え箸を進める。
そして麺や具材を食べ終わると残ったスープを喉に流し込む。
...美味い。やっぱりはらが減っていたからだろうか。手を合わせると祐樹は立ち上がる。
横に置いてあった木の杖で右足を庇いながらテントを出ると、其処にはヘリともう1つのテントがあった。
チラッと覗くがそこはさっきのテントとあまり変わらない。
そこに未来や晴人のお母さんがいたが話しかけなかった。
知らない人や迷彩服を着た人が寝ていたりしたため、ここもあのヘリで一緒に避難した人なのだろうと考えると祐樹は、
あまり覗くのも失礼かと思いヘリに向かう事にした。
「こちら風見山国立公園。山中大隊長であります。現在ヒトヨンゴーマル(14:50)、全42名、我々は避難者と共に行動中であります。
食料があまりない為、受け入れ可能な基地は有りませんか」
俺のお父さんだ。
「こちら自衛隊改め新日本軍浜野少佐であります。我々の本拠地、東天宮駐屯地は受け入れ可能と通達が入りました。
そちらが落ち着き次第速やかに此方に避難してください。風見山付近は中国軍が潜伏しているとの情報が有りますので」
「新日本軍...分かりました、直ぐにでも移動を開始します」
そう言うと通信を切る。そして俺の事に気がつくと安心した表情を見せた。
「無事でよかった祐樹。
聞いていた通り俺たちは東天宮に移動する。
俺と白城でヘリの用意をするからテントの片付けや避難者をヘリに誘導してくれ」
「分かった」
杖をつきながらテントに戻り寝ている人を起こす。そして伝える。
「ここより安全な場所が分かりました。
直ちに移動します。手の空いた方はテントの片付けや荷物の積み込みをお願いします」
2つのテントにこの事を伝えると皆テントを片付け、小さく折りたたむ。
そしてヘリに詰め込むと自分達も乗り込んだ。42人の避難者を確認すると扉が閉まり、ヘリが少し揺れ機体が空を飛ぶ。
出発だ。
「ねぇ父さん、ある人に連絡がしたいんだけど回線が混み合って電話が繋がらない。どうすれば良いかな」
ヘリを操縦しているのは晴人のお父さんなので、父さんは色々書類等を片付けている。
「そこの奥に通信機がある。あれは回線の状況関係なく通信ができるぞ。使って良い」
父さんのさす指の方を見ると迷彩色の大きな通信機があった。
ショルダーフォンだっけ、それに似ている気がする。
祐樹は通信機を外すと、安藤先生の携帯番号を入力する。
昔配られた連絡網に書かれていた番号を何と無く覚えていたのだ。
「繋がってくれ...。...もしもし、もしもし」
「...安藤です、どちら様ですか」
「安藤先生、俺です。山中祐樹です」
「祐樹くん!?無事でよかったです!!生きていると分かっていましたが、教室を飛び出して行ったから心配したんですよ!」
電話越しに伝わる喜びの感情が何故だか懐かしい。
「あの時はごめんなさい。ん?生きていると分かっていた?って晴人は?」
「えぇ。分かっていました。
それと晴人くんですが...。晴人くんは放送で皆さんを動かしました。ですが此処にはいません...」
「えっ」
「さっき放送がありました。
確認が取れなかったのは白城晴人くん、前 私に話していた中学の上原先生、違う学校の東田隆盛くん、高畑美沙さんの4名だと言っていました。
他の地に逃げた避難者も含めて、確認したそうです。なので祐樹くんが生きている事は分かってましたが...。
.........晴人くんと上原先生と言う方は...恐らく逃げ遅れたので...」
「違うっ!!!晴人は逃げ遅れたりしない!
それに上原先生は賢い人だ、きっと晴人を連れて...」
涙をこらえながら晴人について語り続ける。
「晴人は...晴人はいい奴なんだ...。クラスで目立つあいつは寂しそうにする俺に気づいて、いつも一緒にいてくれたんだよ...。
あいつは俺の親友なんだ...」
「...祐樹くん。今あの街はもう有りません。
来夏山の噴火によって地面が割れ、マグマが流れ出し、火山噴出物が落下して火の海となっているでしょう。そんな中で生きてるなんて...先生は...思いません...」
安藤先生は泣いていた。
釣られる用に俺も泣いた。
「...分かりました、俺たちは東天宮駐屯地に避難します。お元気で」
そう告げると通信を切る。
上原先生。晴人。
そして逃げ遅れたもう2人。
祐樹は思う。
この事を誰よりも早く伝えなければならない人がいると。
そして涙をながしながら座席に座る女性の元に行く。そして。
「...晴人のお母さん。今担任の安藤先生と話しました。晴人は...みんなと一緒に逃げてなかったそうです....。俺たちが自衛隊を出てから晴人は自衛隊に着いたんじゃ無いかと思います.....。
だから...晴人は......死にました」
「.......そうなんだ。泣かないで、祐樹くん」
晴人のお母さんは無言でハンカチを取り出し、俺の目に当てる。
だか俺の目から涙は止まらない。
違うだろ...今泣きたいのは晴人のお母さんだ...。何で俺が生きてるんだよ。
学校に残るのは俺で、晴人が家族を自衛隊に連れて行く役をすれば良かったって思われても仕方ないよな...。
「...俺のせいで晴人は死にました。
俺が学校に残ってれば...俺が--」
パチンッ!と音が鳴ると俺の頬はねつをおびていた。
晴人のお母さんに叩かれたのだ。
まぁ、そうだよな。恨まれるのはしかた無---。
「祐樹くんのせいじゃ無いわ。
現に貴方の判断で多くの人が救われているの、他の人の死を抱え込む必要なんてない。
きっと私の自慢の息子、晴人の事だから転んで足でも怪我をしたのよ。
それで間に合わなかった、つまり晴人の死は祐樹くん関係ないの!!
それなのに何でそんな悲しい事言うの?
俺のせいで晴人が死んだ?ふざけないで!
貴方のおかげで私達は救われたのよ
...天国の晴人だって、そう思ってるわ」
目が覚めた。俺は何馬鹿な事を言っていたんだ?俺のせいで死にました?ふざけるのも大概にしろ俺。
こんな辛い顔をしている晴人のお母さんに俺は慰められてて良いのか?
良くないだろ。
何してるんだよ。
「...祐樹くん、泣きたい時は泣いて良いのよ。抱え込む必要なんて無いんだから。
私はトイレに行ってから晴人の事お父さんに伝えるわ。
ヘリの事もあるから着いた時にでも、ね。
いい?祐樹くん。晴人の分まで強く生きて。
これは約束よ」
晴人のお母さんは席を立つとトイレに入る。
その後小さな鳴き声が聞こえた事は絶対に忘れない。それと晴人のお母さんとの約束の事も。
「.....強く、生きよう」
祐樹は心に強い覚悟を決めると、晴人のお母さんのハンカチ握りしめ心臓にを叩く。
そして深呼吸すると自然と涙が止まっていた。
「晴人...こっちは俺に任せろ」
そして腰を下ろし、目を瞑る。
暫く晴人との思い出が頭の中を舞っていたが、今は休もう。そう思いじっと到着を待つのだった。
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