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プロローグ
四話
しおりを挟む《白城晴人side》
スリッパを飛ばし走り出す俺の親友、山中祐樹。
スリッパ履いてたら廊下を思いっきり走れねぇからな。
でも靴下で滑るんじゃないぞ!?
ってそんなこと考えてる暇ないな。
取り敢えず安藤先生に説明すべきか...?
...辞めておこう、どうせ放送で伝えるんだ。
時間短縮だな。
よし、今安藤先生は祐樹を見ているから抜け出すならチャンスだ。行くぞ俺!!
そう思うと晴人もスリッパを飛ばして放送室に走って行く。
「放送室...放送室...此処か!」
晴人は放送室と書かれた扉を開ける。
鍵が閉まっていなくて助かった。
そう思い中に入る。
中に入ると誰もいない空間にデカイ機械が置いてあった。その機械にはボタンやスイッチ、レバーなど沢山の部品が付いている。
「こりゃ...参ったな。マニュアルとか見てる暇ねぇし、勘でいくか!
全ての神よ!!俺の持てる運全てを使っても良いから電源ボタンを教えてくれ!!」
結果から言うと分かった。
のだが、勘もクソも関係なく、『電源』と書かれていたスイッチがあったのだ。
「よし、ってかなんて言えばいいんだ...
祐樹は不安を取り除く事に専念しろ!期待してるぞ!!イケメン晴人カッコいい!!
とか言ってたけどさ...。ま、何とかなるよな!」
そう呟くと晴人は電源のスイッチをオンに合わせる。キュイーンと赤く横のランプが光る。『放送中』と表示されていた。
〈あー、あー。マイクテストゥ、マイクテストゥ。聞こえるか?〉
暫く待つが返事がない。ま、当然だが。
此処は放送室。外の声など聞こえないのだから。
〈ったく、返事してくれよ、寂しいだろうが!!〉
晴人は深呼吸をゆっくりと一回行うと、声を出した。
〈俺は2年の白城晴人。今の状況を説明させてもらうぜ。一言で言えば『ピンチ』だ。
...第三次世界大戦が起こる。
おっと、冗談じゃないから笑うなよ?
けどだからってメソメソ泣いてもらっても困る。これから言う事は全て真実だ。
いいか。
来夏山が噴火する可能性が高い〉
そして少しの間を開ける。
〈さっきテレビで全世界同時中継ってのが流れた。そこにジェルミ大統領がアメリカと中国、手を組んで他の国を核兵器で攻撃する。
とか言ってた。俺も冗談だと思ったぜ。
けど窓の外の来夏山 上空を見て確信した。
みんなも見てみな。何が見えた??
見えなかった奴のために教えてやるよ、
あれは核兵器を積んだアメリカ・中国軍の戦闘機かヘリだ。
恐らく日本の首都に向かう感じだと思う。
んで、俺がどうしてあれが日本のじゃないと分かったかと言うと、彼処を飛ぶ飛行機やヘリは来夏山の強力な磁気で墜落するのさ。
そんな事は日本の自衛隊や日本航空は分かってる。
つまり、分かってない日本以外の国の物だって分かるのさ。
---なぁ、怖いか?恐ろしいか?
正直に言うと俺は怖い。めっちゃ恐ろしいよ...。今にも泣き出しそうなくらいさ。
けどこんな俺を信頼してくれる親友がいる。
大切に思う家族がいる。
共に暮らしてきた仲間がいる。
だからみんなにお願いがあるんだ。
住民達を来夏山の逆方向へ避難誘導してくれないか?
俺はみんなに死んでほしくない。
だから此処からは自分でよく考えて行動してほしい。家族の所に行ってもいい。
素直に自分だけ逃げ出してもいい。
文句なんて言えないからな。
けど、お願いだ。この街のヒーローってのに俺と一緒になってくれ...!!
この事を知ってるのは恐らくお前らだけだ。
俺は今から避難誘導に行く。
...兎に角、生きてくれみんな。
また会おうぜ!!〉
そしてスイッチを切って外に出た。
その後晴人は思った。
...あれ、最後の感じ、俺一人じゃないか?と。
だがそんな不安を打ち消す音が聞こえてくる。どんどん、どんどん大きくなるその音はは勇ましく、そして暖かい音だった。
「晴人にだけカッコつけされる訳には行かねーぜ!!」
「ヒーローになるぜ俺ええええ!!!」
「俺ってさぁ!!いい奴だから人助けしてやるぜ!!不良やってたけどなぁ!」
「おいみんな!靴下で滑るの楽しいぜ!」
「行くぞみんな!!一人残らず住民を避難させるんだ!!」
「「「「「「おおおおお!!」」」」」」
物凄い人の波が生徒玄関から飛び出して行く。
「一体これは...」
「貴方がさせたんですよ、晴人くん」
振り向くと笑顔を見せる安藤先生がいた。
「俺が...?」
「そうですよ、白城晴人くん、貴方です。
中々カッコいいスピーチでしたよ、先生尊敬しちゃいますっ」
「ははっ...」
自分がやってのけたと言う達成感を感じる晴人。
「祐樹、やってやったぜ!」
と言うとすぐさま生徒玄関に向かい走り出す。
「安藤先生!!これから自分も避難誘導させてきますっ!!」
後ろを見ながら走る晴人に安藤先生は手を振りながら答える。
「気をつけて下さいね!?」
「はいっ!!」
「そうじゃなくて靴下で走ると滑りますよ...!!」
「...あっ..」
晴人は派手に転ぶ。
そして余りの激痛 故にズボンの裾をめくると
左足の関節は変な方向に曲がっていたのだった。
「マジかよ...」
「晴人くん!大丈夫ですか!!??先生職員室に行ってから教員玄関から出ますけど、一人で行けそうですか!?」
丁度曲がった足は晴人の背中に隠れていて、
安藤先生にはバレていなかったようだ。
こんなことバレたら恥ずかしいしな...
中々カッコいいとか言ってくれたしさ。
「だ、大丈夫です!お気をつけて!!」
うん、と頷くと安藤先生は職員室に向かって走って行った。
さてと。不味いな。俺だけ取り残されちゃったよ祐樹くん?どうするんだい?
「クシュんっ!!誰かに噂されたか?
祐樹が何か安らかに眠れとか思ってんのかな。兎に角、保健室に行こうかな...」
そう言うと左足で立ち上がり、ジャンプしながら保健室に向かうのだった。
それから少し経って保健室に辿り着いた。
「誰もいないな、何か使えそうなのは...おっ」
晴人は松葉杖を発見した。
それを自分の脇に当て高さを確認する。
「...うん、丁度いいな。うちにも木の杖があるからそれを使いてェけど、これも悪くない」
そして保健室を出ると廊下の時計を確認する。
「あれから30分くらい経ったかな?この足じゃ自衛隊に行くだけで20分はかかるぞ...。
避難誘導は出来そうにないが今頃みんながしてくれてるかな...。ふっ、本当にみんなヒーローだな。カッコいいぜ」
一歩、一歩松葉杖で自衛隊に向かう晴人は何故か笑っていた。
間に合ってくれよ、俺の足。
自衛隊に行って間に合わなかったらそこからもう逃げれない。つまりは死ぬんだ。
それなのに笑えてるのはどうしてなんだ?
いや、それはもう分かってるんじゃないか。
自分を信頼してくれる親友、格好付けるヒーローのみんなの存在。
今の俺は絶望にいるんじゃない、希望の中にいるんだ!
そして自衛隊に着いた晴人は、
静かに膝から崩れ落ちた。
「...誰もいない...?
そうか、間に合わなかったんだ俺」
自衛隊はもぬけの殻だった。
ポロリポロリと大粒の涙が零れ落ちていく。
その目は絶望に染まっている。
死んだ魚のような、いや。それ以上に光を失っている。
「なぁ神様、本当にいるのか?
俺がさっき全ての運を使い切るとか言ったから、本当に使わせたのか?
...なら最後にもう1つだけ願いを聞いてくれ、神。この命と引き換えに。
---祐樹達のことを守ってやってくれ」
そして晴人は目を瞑る。死を受け入れたのだ。頭に浮かぶ真っ黒な空間に何処かで聞いたことのある声が聞こえてくる...。
「...晴人くん。晴人くん」
...いや、違う。
これは頭の中の事じゃない。
晴人は慌てて目を開けるとその聞いたのは元担任のイケメン国語教師事、上原先生だった。
「どうして此処に...!?」
「祐樹くんに頼まれごとをされましてね。それが全部終わったので教え子達の避難確認に来たんですよ」
「ははっ、祐樹の奴スゲぇよ。
こんなに人を動かせるなんて、お前は最高のダチだぜ...」
そして意識を失う晴人。
足の痛み、絶望の中の絶望を感じた晴人は上原先生と言う希望を見つけ安心したのか気を失ってしまった。
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