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愛の方舟
1 二人と一匹と一体
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艦内時間七時。
途中、何度も通路で横になりたい衝動に駆られながら、何とかウィルが食堂にたどりつくと、やはりエドはもう厨房の中にいた。
エドの起床時間が何時なのか、訊いたことがないので知らないが、常にウィルより先に食堂に来ていて、彼の分の朝食も一緒に作ってくれている。
今、この宇宙軍艦〈レイヴン〉の中で生きている哺乳類は、ウィルとこのエドことエドワード・リーと、ウィルの右肩に乗っているキツネネコのレオしかいない。
数週間前、大破した宇宙船の中からウィルたちによって救助されたこの男は、もぐりの運び屋をしていたということ以外、自らの過去をほとんど語らない。だが、東洋系で、ウィルより若干年上で、身長も知能も高いのは確実である。
「おはよう……」
そう挨拶すると、エドは切れ長の黒い目でウィルを一瞥した。
「おはよう。いつにもまして眠そうだな。夜ふかしでもしたのか?」
この男の声は心地のいい低音でよく響く。眠いときに聞かされると、さらに眠気が倍増するような気がする。
「いつもどおり、十二時前には寝たんだけど……何でか今朝は、眠くて眠くて……」
うなだれて嘆いていると、エドがコーヒーの入った白いマグカップを差し出してきた。
「座って飲んでろ。すぐできる」
「ありがとう……」
マグカップを持ったまま、ウィルは厨房の前のテーブルにふらふらと着席し、両手でマグカップを持ってコーヒーを飲んだ。まだウィルの肩の上にいるレオがくんくん鼻を鳴らしていたが、主人の邪魔をするようなことはしなかった。
三分の一ほど飲んだところで、エドが両手にトレーを一つずつ持って、ウィルの向かいの席に腰を下ろした。
朝食はいつもトースト中心で、それほど凝ったものは作らないが、本当は朝食をとるより部屋で眠っていたいウィルにとっては、作ってもらえるだけで大変ありがたい。
ちなみに、昼食と夕食は一日交替で作っている。今日はエドが担当の日だ。自分じゃなくてよかったとウィルは心から思った。
「そんなに眠いなら、部屋で好きなだけ寝てればいいのに。別に急ぎの仕事があるわけでもないだろ」
見かねたようにエドが言った。確かにそのとおりだ。でも。
「だからって、そんなだらけた生活してたら、みんなに申し訳ないような気がして……」
「みんな?」
「死んだみんな……俺のせいで、殺されたようなもんだから……」
エドはコーヒーを飲む手を止めると、眉をひそめてウィルを見やった。
「どうしておまえのせいになるんだ? あいつが勝手におまえを気に入って、勝手におまえ以外の人間を殺しちまったんだろうが。悪いのはMACでおまえじゃない。そう自分を責めるな。好かれるのも嫌われるのも、自分の意志じゃどうにもならない」
この男はいつも理路整然と話をする。おまけに声がいいので、思わず聴き入ってしまう。顔も端整で、少し気を抜くと見とれてしまうときもある。もしも今、女性たちが生きていたら、さぞかしもてていたことだろう。
彼女たちを含む全乗組員の遺体は、現在、保冷庫で保存されている。本当は一刻も早く火星に戻してやりたいのだが、火星に引き返したはずが引き返していなかったため、仕方なく本来の目的地である惑星エリンをめざして航行している。何も問題が起こらなければ、ほぼ一年後に到着する予定だ。
「それは確かにそうなんだけど……どうしても考えちまうんだ。もしこの軍艦に俺がいなかったら、みんな殺されずに済んだのかなって。……何で俺、そんなにMACに気に入られちまったんだろ。MACに気に入られるようなこと、特にした覚えはないのに」
「おまえにその気はなくても、向こうはおまえの何かを気に入っちまったんだろうさ。さっき言ったろ。好かれるのも嫌われるのも、自分の意志じゃどうにもならないって。好かれようとしてかえって嫌われることもあるし、嫌われたいのにますます好かれることもある。もうそんなことで悩むのはやめとけよ……って俺が言っても、おまえは悩みつづけるんだろうな」
ウィルは苦く笑って、うつむくしかなかった。
その様子を見て、レオはエドがウィルをいじめていると誤解したようだ。ウィルの肩からテーブルの上に飛び降りると、いきなりエドを威嚇しはじめた。
「レオ、違うよ。エドは俺を慰めてくれてたんだよ」
一見、虎縞の子猫のようなキツネネコの知能レベルについては、生息数の少なさと人に馴れない性質のため、研究者によって見解は様々だが、少なくともこのレオはウィルの言葉を完全に理解できるようだ。すぐに威嚇するのをやめると、不承不承といった風情でウィルの元に戻り、彼のトレーの横にうずくまった。
「たいした忠犬……いや、忠猫だな」
感心したようにエドはレオを見たが、レオは目を合わせるのも嫌だと言わんばかりにそっぽを向いてしまった。
「うん。外見は可愛い子猫みたいだから、みんな触りたがったけど、今みたいに威嚇するから、誰も触れなかった。俺には普通の猫なんだけど」
そう言いながら、レオの小さな頭を人差指でつつくと、それでもう機嫌が直ってしまったのか、レオはウィルのほうを向き、その指先に顔をすり寄せた。
「ウィル。おまえ、もしかして、子供のときから異常に動物に好かれてなかったか?」
「うーん。異常かどうかはわかんないけど、人んちの犬でも猫でもすぐに触れてたな。俺も動物は嫌いじゃないから、一時期、動物園の飼育員になろうかと真剣に考えたこともある」
「ああ、そりゃ天職かもな。何でならなかったんだ?」
「早起きが死ぬほど苦手だから」
「なるほど」
エドは何度も深くうなずいた。
「レオの面倒見はじめる前は、目覚まし時計三個使って、毎朝何とか起きてたよ。それでも遅刻しかけたことが何度かある。レオのおかげで遅刻はしなくなったけど、非番でも朝寝坊はできなくなった」
「まあ、いくらレオが頭のいい猫でも、自分でパッ缶は開けられないからな」
「でも、なんでその時間が六時かな。七時だったらここで一緒に食えるのに。六時に目覚ましのアラームセットしてたせいかな」
いま自分が責められていることもわかったのか、レオは小さな前足をウィルの腕に乗せた。そんな話はもういいから、さっさと朝食を済ませなさいとでもいうように。
* * *
艦内時間十時三十分。
食堂からブリッジに戻ってきたエドは、医務室から持ちこんだベッドの上に怠惰に寝転がり、まるで壁に張られたポスターのようにスクリーンを埋めつくしている監視カメラの映像を眺めていた。
〈レイヴン〉からノン・オペレータ・システムの根幹だった人工知能・MACを完全に切り離して凍結したと嘘をついた日以降、このブリッジがエドの新たな根城となっている。
ウィルには自動操縦機能を監視するためだと説明したが、本当の理由はここに彼を立ち入らせないようにするためだ。
――否。自分が在室しているときにならいくら来てもかまわない。いつだって大歓迎する。
だが、MACがこの軍艦の支配権を失ったことになっている以上、ウィルもまたこのブリッジに自由に出入りできることになる。それはまずい。そうさせないために、エドはブリッジを実質自分の私室とした。他人の部屋なら、ウィルは勝手に踏みこんだりはしない。自分には入室できないままになっていることにも気づかないはずだ。
【俺も指名手配されてる身だから、人のことは言えないが、あんたも罪深いことをしたよな、MAC】
頭の中のエドは言った。
「ウィル以外の人間を殺したことか?」
エドの声はそう応じた。
【まあそうだが、ウィル以外全員を殺したのはまずかった。せめて無害そうなのを二、三人、一緒に生かしておくべきだった】
「なぜだ? 下手に何人か生かしておいたら、ウィルはそいつらを頼るようになるだろう」
無表情にエドが問う。その視線の先にあるスクリーンには、エデンで農作業をしているウィルの姿が小さく映っていた。
【でも、自分以外に生き残った人間が一人でもいたら、ウィルは後ろめたさを感じなくて済んだだろう。たった一人、自分だけが生き残っちまったという後ろめたさだけは。
さっき、食堂で言ってただろう? 自分があんたに異常に気に入られたせいで、みんなを死なせることになっちまったって。そんなのは全然あいつのせいじゃないし、俺もそう言ったんだが――ん? じゃあ、あれは俺の言葉だったのか? ――とにかく、あいつが自分でそう思いこんじまっている以上、こっちは何もしてやれない。
だから罪深いっていうのさ、MAC。ウィルを好きだと言いながら、そのウィルに余計な苦しみを与えた。あいつのためを思うなら、何人か生かしておいて、そいつらに今の俺みたいにチップを埋めこんでやればよかったんだ。全員殺してからこの方法を思いついたのか? 迂闊すぎたな】
「確かに。おまえとこうして話すようになってから、そのことを痛感するようになった。船員を全員殺す前に気づいていれば……」
【まあ、それをウィルにバラしたのは俺なんだけどな。この軍艦に俺を乗せたのが、あんたの運の尽きはじめだよ、MAC】
「仕方あるまい。〝覆水盆に返らず〟だ」
【じゃあ、そのひっくり返しちまった盆に、少しでもまた水を溜める努力をしにいくか】
エドは勢いをつけてベッドから起き上がると、ブリッジの出入口に向かって歩きはじめた。
「どこへ行く?」
【厨房。中華料理のレシピをくれ。もちろん、ウィルの好物限定で】
* * *
艦内時間十一時四十五分。
ウィルは畑仕事の手を止めて、自分の腕時計を見た。
(あと十五分で昼だな)
この軍艦の乗組員が自分一人だったときには、食堂は朝と夜にしか利用しなかった。朝食を作ったときに昼の分も用意して――たいていは缶詰と乾パンだった――この小さな庭園〝エデン〟に持ちこんでいたのだ。
しかし、エドと一日交替で食事を作るようになってからは、そうもいかなくなった。
正直、一日三回、決まった時間に食堂へ行かなければならないのを面倒に思うときもある。
だが、エドが食事当番の日だけは別だ。食事の時間を心待ちにしてしまう。顔や声がいいだけでなく、料理もうまいのだ、あの男は。そのうえ、レパートリーも広いので、今日はどんなものが出されるのだろうと楽しみに思ってしまう。
しかし、それと同時に、毎回同じようなものしか作れない自分を不甲斐なく感じている。
もちろん、エドは優しい男だから、それについては文句はいっさい言わず、出されたものは残さず平らげる。たまに『うまかった』と褒めてくれるときもあるが、エドがそう言ってくれたものは、ウィル自身も奇跡的に今日はうまくいったと思ったものと一致している。彼は世辞の言えない性格をしているのだろう。そこもまたウィルには好ましく思えた。
食堂への移動時間を考えて、十一時五十五分になったらここを出ようと考えたとき、ウィルから離れた芝生の上で寝そべっていたレオが急に起き上がり、自動ドアのほうを向いた。
つられて、レオの視線の先を追うと、それを待っていたかのように自動ドアが開いた。
「よう」
自動ドアが開ききらないうちに、来訪者は大股に中へと進入してきた。
レオは威嚇はしなかったが、まるでウィルを守るかのように、彼の前に立ちふさがった。
「エド……どうしたの?」
畑の中でしゃがみこんだまま、ウィルはあっけにとられてエドを見上げた。
エドがここへ来たのはこれが初めてではない。すでに何度か来ていて、ウィルの手伝いをしてくれたこともある。だが、MACが凍結されてからは、午後にしか来ていなかった。
「それに、その荷物……」
やたらとにやにやしているエドの両手には、大きな紙袋が一つずつ提げられていた。
「本日は特別に、デリバリーサービスを提供いたします」
慇懃に頭を下げた後、「どこで食べたい?」とエドは言った。
「え……じゃあ、あの木の下で……」
ウィルは反射的に庭園の中央にある常緑樹――〝生命の木〟を指さした。
「了解。一応、ウェットティッシュは持ってきたが、まずはその手を洗ってこい。その間に用意しておくから」
「う、うん……」
言われるままウィルはうなずくと、庭園の隅にある水場へ行き、手についていた泥を丁寧に洗い流した。レオは言うまでもなくウィルの後を追いかけてきていて、ウィルが手を洗っている間に、自分の水飲み用皿から水を飲んでいた。
ウィルたちが水場から戻ってくると、いったいどこから探し出してきたのか、エドは赤いレジャーシートの上であぐらをかいていた。紙袋の中から次々と密閉容器を取り出しては、蓋を外して並べていく。
「今日は何?」
タオルで手を拭きながら訊くと、エドは「エセ中華料理」と答えた。
「なんでエセ? 俺にはしっかり中華料理に見えるけど?」
靴を脱いでシートの上に座りこんだウィルは、二人分にしては多い料理の数々を瞳を輝かせて眺め回した。
「俺流にアレンジしてあるから」
ウィルの好みに合わせるため――とは、エドは決して明かさないのだった。
「箸は使えたよな? でも、フォークとスプーンもあるから、使いづらかったらそっちを使え」
エドは紙皿と箸をウィルに手渡すと、今度は保温機能つきの水筒を取り出してその蓋に温かい烏龍茶を注ぎ、ウィルの前に置いた。
「前から思ってたけど……エドって何でも器用にこなすよね……」
皿と箸を持ったまま、ウィルは嫉妬まじりに言った。もぐりの運び屋とは、何でも屋でもあるのだろうか。
「何でもってわけじゃない。俺にだって苦手なものはある。特に連邦警察は天敵だ」
「そりゃそうだろうけど……俺が言いたいのはそういうんじゃなくて……」
「とりあえず、俺の苦手論議は後にして、俺の力作を冷めないうちに食ってくれないか。時間計算して作ってきたんだから」
「何時から作ってたの?」
「十時半過ぎくらいからだな。中華料理は仕込みに時間がかかるんだ。心して食え」
「はい。いただきます」
内心、どうして今日の昼食はこんなに豪華にしたんだろうと首を傾げつつも、ウィルは中華料理の中でいちばん自分が好きなエビチリに箸を伸ばした。
うまいものを食べていると、人は自然と無口になる。
ウィルの足に寄りかかって横になっていたレオが、暇をもてあまして大あくびをするまで、二人は何も言わずに料理を食べつづけた。
「何か……ここでこうして飯食ってると、自分がいま宇宙船の中にいるなんて、とても信じられないな……」
烏龍茶を飲んで、ウィルが満足の溜め息を吐き出したときには、料理の三分の二が二人の胃袋の中に消えていた。
「早く火星に戻りたいか?」
「うん。俺はいいけど、みんなが……家族はエリンにはいないだろうし。せめて、どこかと連絡がとれればな……通信機器の復旧はやっぱり無理?」
「エセ中華料理は作れても、こんな大規模な軍艦の修理となると、俺の手には余るな。MACなら何とかできたかもしれないが……今さらあいつを復活させて修理させるわけにもいかないだろ? ちゃんと修理してくれるかどうかもわからんし」
「そうか……そうだよな……今さらMACに頼るわけにはいかないよな……」
何も知らないウィルは、烏龍茶を見つめながら、自らに言い聞かせるように呟いた。
エドはウィルにはわからないように、彼に哀れみの眼差しを向けた。
本当は、通信機器は壊れてなどいない。使っていないだけだ。
今のワープの成功率はほぼ百パーセントに近いが、MACはそのワープに失敗したふうを装い、この軍艦〈レイヴン〉を意図的にロストさせた。〈レイヴン〉を造船したトリニティ社社長エドマンド・ナイトリーの指示どおりに。
「もう腹はいっぱいになったか?」
エドにそう声をかけられて、ウィルはあわてて我に返った。
「うん、もういっぱい。とってもうまかった、ありがとう。でも、なんで今日はわざわざ届けにきてくれたの? しかもこんなに豪勢なのを?」
「別にこれといった理由はない。ただ単に俺の気が向いただけだ」
エドはにやりと笑うと、口が汚れてるぞと言って、ウィルにウェットティッシュを渡した。
途中、何度も通路で横になりたい衝動に駆られながら、何とかウィルが食堂にたどりつくと、やはりエドはもう厨房の中にいた。
エドの起床時間が何時なのか、訊いたことがないので知らないが、常にウィルより先に食堂に来ていて、彼の分の朝食も一緒に作ってくれている。
今、この宇宙軍艦〈レイヴン〉の中で生きている哺乳類は、ウィルとこのエドことエドワード・リーと、ウィルの右肩に乗っているキツネネコのレオしかいない。
数週間前、大破した宇宙船の中からウィルたちによって救助されたこの男は、もぐりの運び屋をしていたということ以外、自らの過去をほとんど語らない。だが、東洋系で、ウィルより若干年上で、身長も知能も高いのは確実である。
「おはよう……」
そう挨拶すると、エドは切れ長の黒い目でウィルを一瞥した。
「おはよう。いつにもまして眠そうだな。夜ふかしでもしたのか?」
この男の声は心地のいい低音でよく響く。眠いときに聞かされると、さらに眠気が倍増するような気がする。
「いつもどおり、十二時前には寝たんだけど……何でか今朝は、眠くて眠くて……」
うなだれて嘆いていると、エドがコーヒーの入った白いマグカップを差し出してきた。
「座って飲んでろ。すぐできる」
「ありがとう……」
マグカップを持ったまま、ウィルは厨房の前のテーブルにふらふらと着席し、両手でマグカップを持ってコーヒーを飲んだ。まだウィルの肩の上にいるレオがくんくん鼻を鳴らしていたが、主人の邪魔をするようなことはしなかった。
三分の一ほど飲んだところで、エドが両手にトレーを一つずつ持って、ウィルの向かいの席に腰を下ろした。
朝食はいつもトースト中心で、それほど凝ったものは作らないが、本当は朝食をとるより部屋で眠っていたいウィルにとっては、作ってもらえるだけで大変ありがたい。
ちなみに、昼食と夕食は一日交替で作っている。今日はエドが担当の日だ。自分じゃなくてよかったとウィルは心から思った。
「そんなに眠いなら、部屋で好きなだけ寝てればいいのに。別に急ぎの仕事があるわけでもないだろ」
見かねたようにエドが言った。確かにそのとおりだ。でも。
「だからって、そんなだらけた生活してたら、みんなに申し訳ないような気がして……」
「みんな?」
「死んだみんな……俺のせいで、殺されたようなもんだから……」
エドはコーヒーを飲む手を止めると、眉をひそめてウィルを見やった。
「どうしておまえのせいになるんだ? あいつが勝手におまえを気に入って、勝手におまえ以外の人間を殺しちまったんだろうが。悪いのはMACでおまえじゃない。そう自分を責めるな。好かれるのも嫌われるのも、自分の意志じゃどうにもならない」
この男はいつも理路整然と話をする。おまけに声がいいので、思わず聴き入ってしまう。顔も端整で、少し気を抜くと見とれてしまうときもある。もしも今、女性たちが生きていたら、さぞかしもてていたことだろう。
彼女たちを含む全乗組員の遺体は、現在、保冷庫で保存されている。本当は一刻も早く火星に戻してやりたいのだが、火星に引き返したはずが引き返していなかったため、仕方なく本来の目的地である惑星エリンをめざして航行している。何も問題が起こらなければ、ほぼ一年後に到着する予定だ。
「それは確かにそうなんだけど……どうしても考えちまうんだ。もしこの軍艦に俺がいなかったら、みんな殺されずに済んだのかなって。……何で俺、そんなにMACに気に入られちまったんだろ。MACに気に入られるようなこと、特にした覚えはないのに」
「おまえにその気はなくても、向こうはおまえの何かを気に入っちまったんだろうさ。さっき言ったろ。好かれるのも嫌われるのも、自分の意志じゃどうにもならないって。好かれようとしてかえって嫌われることもあるし、嫌われたいのにますます好かれることもある。もうそんなことで悩むのはやめとけよ……って俺が言っても、おまえは悩みつづけるんだろうな」
ウィルは苦く笑って、うつむくしかなかった。
その様子を見て、レオはエドがウィルをいじめていると誤解したようだ。ウィルの肩からテーブルの上に飛び降りると、いきなりエドを威嚇しはじめた。
「レオ、違うよ。エドは俺を慰めてくれてたんだよ」
一見、虎縞の子猫のようなキツネネコの知能レベルについては、生息数の少なさと人に馴れない性質のため、研究者によって見解は様々だが、少なくともこのレオはウィルの言葉を完全に理解できるようだ。すぐに威嚇するのをやめると、不承不承といった風情でウィルの元に戻り、彼のトレーの横にうずくまった。
「たいした忠犬……いや、忠猫だな」
感心したようにエドはレオを見たが、レオは目を合わせるのも嫌だと言わんばかりにそっぽを向いてしまった。
「うん。外見は可愛い子猫みたいだから、みんな触りたがったけど、今みたいに威嚇するから、誰も触れなかった。俺には普通の猫なんだけど」
そう言いながら、レオの小さな頭を人差指でつつくと、それでもう機嫌が直ってしまったのか、レオはウィルのほうを向き、その指先に顔をすり寄せた。
「ウィル。おまえ、もしかして、子供のときから異常に動物に好かれてなかったか?」
「うーん。異常かどうかはわかんないけど、人んちの犬でも猫でもすぐに触れてたな。俺も動物は嫌いじゃないから、一時期、動物園の飼育員になろうかと真剣に考えたこともある」
「ああ、そりゃ天職かもな。何でならなかったんだ?」
「早起きが死ぬほど苦手だから」
「なるほど」
エドは何度も深くうなずいた。
「レオの面倒見はじめる前は、目覚まし時計三個使って、毎朝何とか起きてたよ。それでも遅刻しかけたことが何度かある。レオのおかげで遅刻はしなくなったけど、非番でも朝寝坊はできなくなった」
「まあ、いくらレオが頭のいい猫でも、自分でパッ缶は開けられないからな」
「でも、なんでその時間が六時かな。七時だったらここで一緒に食えるのに。六時に目覚ましのアラームセットしてたせいかな」
いま自分が責められていることもわかったのか、レオは小さな前足をウィルの腕に乗せた。そんな話はもういいから、さっさと朝食を済ませなさいとでもいうように。
* * *
艦内時間十時三十分。
食堂からブリッジに戻ってきたエドは、医務室から持ちこんだベッドの上に怠惰に寝転がり、まるで壁に張られたポスターのようにスクリーンを埋めつくしている監視カメラの映像を眺めていた。
〈レイヴン〉からノン・オペレータ・システムの根幹だった人工知能・MACを完全に切り離して凍結したと嘘をついた日以降、このブリッジがエドの新たな根城となっている。
ウィルには自動操縦機能を監視するためだと説明したが、本当の理由はここに彼を立ち入らせないようにするためだ。
――否。自分が在室しているときにならいくら来てもかまわない。いつだって大歓迎する。
だが、MACがこの軍艦の支配権を失ったことになっている以上、ウィルもまたこのブリッジに自由に出入りできることになる。それはまずい。そうさせないために、エドはブリッジを実質自分の私室とした。他人の部屋なら、ウィルは勝手に踏みこんだりはしない。自分には入室できないままになっていることにも気づかないはずだ。
【俺も指名手配されてる身だから、人のことは言えないが、あんたも罪深いことをしたよな、MAC】
頭の中のエドは言った。
「ウィル以外の人間を殺したことか?」
エドの声はそう応じた。
【まあそうだが、ウィル以外全員を殺したのはまずかった。せめて無害そうなのを二、三人、一緒に生かしておくべきだった】
「なぜだ? 下手に何人か生かしておいたら、ウィルはそいつらを頼るようになるだろう」
無表情にエドが問う。その視線の先にあるスクリーンには、エデンで農作業をしているウィルの姿が小さく映っていた。
【でも、自分以外に生き残った人間が一人でもいたら、ウィルは後ろめたさを感じなくて済んだだろう。たった一人、自分だけが生き残っちまったという後ろめたさだけは。
さっき、食堂で言ってただろう? 自分があんたに異常に気に入られたせいで、みんなを死なせることになっちまったって。そんなのは全然あいつのせいじゃないし、俺もそう言ったんだが――ん? じゃあ、あれは俺の言葉だったのか? ――とにかく、あいつが自分でそう思いこんじまっている以上、こっちは何もしてやれない。
だから罪深いっていうのさ、MAC。ウィルを好きだと言いながら、そのウィルに余計な苦しみを与えた。あいつのためを思うなら、何人か生かしておいて、そいつらに今の俺みたいにチップを埋めこんでやればよかったんだ。全員殺してからこの方法を思いついたのか? 迂闊すぎたな】
「確かに。おまえとこうして話すようになってから、そのことを痛感するようになった。船員を全員殺す前に気づいていれば……」
【まあ、それをウィルにバラしたのは俺なんだけどな。この軍艦に俺を乗せたのが、あんたの運の尽きはじめだよ、MAC】
「仕方あるまい。〝覆水盆に返らず〟だ」
【じゃあ、そのひっくり返しちまった盆に、少しでもまた水を溜める努力をしにいくか】
エドは勢いをつけてベッドから起き上がると、ブリッジの出入口に向かって歩きはじめた。
「どこへ行く?」
【厨房。中華料理のレシピをくれ。もちろん、ウィルの好物限定で】
* * *
艦内時間十一時四十五分。
ウィルは畑仕事の手を止めて、自分の腕時計を見た。
(あと十五分で昼だな)
この軍艦の乗組員が自分一人だったときには、食堂は朝と夜にしか利用しなかった。朝食を作ったときに昼の分も用意して――たいていは缶詰と乾パンだった――この小さな庭園〝エデン〟に持ちこんでいたのだ。
しかし、エドと一日交替で食事を作るようになってからは、そうもいかなくなった。
正直、一日三回、決まった時間に食堂へ行かなければならないのを面倒に思うときもある。
だが、エドが食事当番の日だけは別だ。食事の時間を心待ちにしてしまう。顔や声がいいだけでなく、料理もうまいのだ、あの男は。そのうえ、レパートリーも広いので、今日はどんなものが出されるのだろうと楽しみに思ってしまう。
しかし、それと同時に、毎回同じようなものしか作れない自分を不甲斐なく感じている。
もちろん、エドは優しい男だから、それについては文句はいっさい言わず、出されたものは残さず平らげる。たまに『うまかった』と褒めてくれるときもあるが、エドがそう言ってくれたものは、ウィル自身も奇跡的に今日はうまくいったと思ったものと一致している。彼は世辞の言えない性格をしているのだろう。そこもまたウィルには好ましく思えた。
食堂への移動時間を考えて、十一時五十五分になったらここを出ようと考えたとき、ウィルから離れた芝生の上で寝そべっていたレオが急に起き上がり、自動ドアのほうを向いた。
つられて、レオの視線の先を追うと、それを待っていたかのように自動ドアが開いた。
「よう」
自動ドアが開ききらないうちに、来訪者は大股に中へと進入してきた。
レオは威嚇はしなかったが、まるでウィルを守るかのように、彼の前に立ちふさがった。
「エド……どうしたの?」
畑の中でしゃがみこんだまま、ウィルはあっけにとられてエドを見上げた。
エドがここへ来たのはこれが初めてではない。すでに何度か来ていて、ウィルの手伝いをしてくれたこともある。だが、MACが凍結されてからは、午後にしか来ていなかった。
「それに、その荷物……」
やたらとにやにやしているエドの両手には、大きな紙袋が一つずつ提げられていた。
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慇懃に頭を下げた後、「どこで食べたい?」とエドは言った。
「え……じゃあ、あの木の下で……」
ウィルは反射的に庭園の中央にある常緑樹――〝生命の木〟を指さした。
「了解。一応、ウェットティッシュは持ってきたが、まずはその手を洗ってこい。その間に用意しておくから」
「う、うん……」
言われるままウィルはうなずくと、庭園の隅にある水場へ行き、手についていた泥を丁寧に洗い流した。レオは言うまでもなくウィルの後を追いかけてきていて、ウィルが手を洗っている間に、自分の水飲み用皿から水を飲んでいた。
ウィルたちが水場から戻ってくると、いったいどこから探し出してきたのか、エドは赤いレジャーシートの上であぐらをかいていた。紙袋の中から次々と密閉容器を取り出しては、蓋を外して並べていく。
「今日は何?」
タオルで手を拭きながら訊くと、エドは「エセ中華料理」と答えた。
「なんでエセ? 俺にはしっかり中華料理に見えるけど?」
靴を脱いでシートの上に座りこんだウィルは、二人分にしては多い料理の数々を瞳を輝かせて眺め回した。
「俺流にアレンジしてあるから」
ウィルの好みに合わせるため――とは、エドは決して明かさないのだった。
「箸は使えたよな? でも、フォークとスプーンもあるから、使いづらかったらそっちを使え」
エドは紙皿と箸をウィルに手渡すと、今度は保温機能つきの水筒を取り出してその蓋に温かい烏龍茶を注ぎ、ウィルの前に置いた。
「前から思ってたけど……エドって何でも器用にこなすよね……」
皿と箸を持ったまま、ウィルは嫉妬まじりに言った。もぐりの運び屋とは、何でも屋でもあるのだろうか。
「何でもってわけじゃない。俺にだって苦手なものはある。特に連邦警察は天敵だ」
「そりゃそうだろうけど……俺が言いたいのはそういうんじゃなくて……」
「とりあえず、俺の苦手論議は後にして、俺の力作を冷めないうちに食ってくれないか。時間計算して作ってきたんだから」
「何時から作ってたの?」
「十時半過ぎくらいからだな。中華料理は仕込みに時間がかかるんだ。心して食え」
「はい。いただきます」
内心、どうして今日の昼食はこんなに豪華にしたんだろうと首を傾げつつも、ウィルは中華料理の中でいちばん自分が好きなエビチリに箸を伸ばした。
うまいものを食べていると、人は自然と無口になる。
ウィルの足に寄りかかって横になっていたレオが、暇をもてあまして大あくびをするまで、二人は何も言わずに料理を食べつづけた。
「何か……ここでこうして飯食ってると、自分がいま宇宙船の中にいるなんて、とても信じられないな……」
烏龍茶を飲んで、ウィルが満足の溜め息を吐き出したときには、料理の三分の二が二人の胃袋の中に消えていた。
「早く火星に戻りたいか?」
「うん。俺はいいけど、みんなが……家族はエリンにはいないだろうし。せめて、どこかと連絡がとれればな……通信機器の復旧はやっぱり無理?」
「エセ中華料理は作れても、こんな大規模な軍艦の修理となると、俺の手には余るな。MACなら何とかできたかもしれないが……今さらあいつを復活させて修理させるわけにもいかないだろ? ちゃんと修理してくれるかどうかもわからんし」
「そうか……そうだよな……今さらMACに頼るわけにはいかないよな……」
何も知らないウィルは、烏龍茶を見つめながら、自らに言い聞かせるように呟いた。
エドはウィルにはわからないように、彼に哀れみの眼差しを向けた。
本当は、通信機器は壊れてなどいない。使っていないだけだ。
今のワープの成功率はほぼ百パーセントに近いが、MACはそのワープに失敗したふうを装い、この軍艦〈レイヴン〉を意図的にロストさせた。〈レイヴン〉を造船したトリニティ社社長エドマンド・ナイトリーの指示どおりに。
「もう腹はいっぱいになったか?」
エドにそう声をかけられて、ウィルはあわてて我に返った。
「うん、もういっぱい。とってもうまかった、ありがとう。でも、なんで今日はわざわざ届けにきてくれたの? しかもこんなに豪勢なのを?」
「別にこれといった理由はない。ただ単に俺の気が向いただけだ」
エドはにやりと笑うと、口が汚れてるぞと言って、ウィルにウェットティッシュを渡した。
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《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
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独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
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