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愛の方舟
4 忍耐と失踪と疾走
艦内時間十八時。
レオに一足早く夕食を与えてからも、食堂に行くか行かないかで迷いつづけてウィルだったが、どうしてもエドとの約束を破る気にはなれず、今日は両腕でレオを抱えこみ、何とかいつもの時間どおりに食堂内へと駆けこんだ。
エドはもちろん厨房にいて、ウィルが来たのに気がつくと、「よう」と気軽に挨拶をしてきた。
確かに、ウィルが望むなら、これからも友達のままでいると言っていた。しかし、告白前と態度があまりにも変わらなすぎる。
やはり、あの告白はエドの冗談だったのではないか。それどころか、自分の白昼夢だったのではないか。実際、そんな白昼夢を見ていたのだとしたら、それはそれで問題だが、ウィルはそう疑わずにはいられなかった。
今日の夕食は、しいて言うなら、中華風イタリアンだった。昼食の残りを再利用したらしい。
気軽に食材を仕入れることができない宇宙の旅では、食べ残しも立派な食料だ。それに、残飯処理料理といえども、ウィルが作るよりはるかにうまい。
エドはいつものとおり、ウィルの向かいの席に座った。だが、今日はそれだけで息苦しく感じてしまう。
「エド……」
勇気を出して名前を呼ぶと、エドはスプーンをくわえたまま、「ん?」とウィルを見た。
「その……あくまでも、参考として訊きたいことがあるんだけど……いい?」
「何だよ、そんな改まって。いいよ、何だ?」
呆れたようにエドが笑う。ウィルは自分の精神安定剤であるレオを、膝の上で抱きしめなおした。
「訊きたいこと、二つあるんだ」
「二つ? 何だ?」
「一つ。俺のどこを好きになったのか。二つ。いつから恋人にしたいと思ってたのか」
言ってしまってから、急に恥ずかしさがこみあげてきて、ウィルは自分を落ち着かせるために何度もレオを撫でた。
ウィルの変調に気づいているのか、いくら彼にしつこく抱かれても触られても、レオは抗おうとしない。ウィルのために、今は生きたぬいぐるみに徹することにしたようだ。
一方、エドは一瞬目を見張ったが、すぐに「なるほどね」とにやにやした。
「じゃあ、前から順番に答えていくか。一つめは……そうだな、顔と性格が、レオより一億倍かわいいとこかな」
あっけにとられたウィルは、恥ずかしさを忘れてエドに抗議した。
「なんで比較対象がレオなんだよ?」
「レオじゃなくて人間の女とだったら、一京倍差になるぞ」
「そんな位、初めて聞いた……」
「あと、裏表がないとことか、嘘がつけないとことか、クッキー作りだけはうまいとことか……まあ、いちいち挙げていったらきりがないが、とにかく、おまえと一緒にいるとほっとする。だからレオもそうやって、おまえのそばから離れようとしないんだと思うぜ」
褒められているのか、遠回しに馬鹿にされているのか。とりあえず、エドが自分のことをどう見ているのかはよくわかった。
「これで一つめは納得したか?」
「多少引っかかったとこもあったけど、一応」
「それじゃあ、今度は二つめか。こいつは答えるのが難しいな。いつ思い立ったかなんて、記録につけたりしてないから」
「だったら、いつから俺のこと好きになった? その……友達以上に」
「さあ……いつからだろうな。少なくとも、MACを凍結しようと思ったときには、もう好きになってたんだろうな」
エドは気恥ずかしそうに笑って、スプーンを指揮棒のように振った。
「MACがいるかぎり、こんな会話もできそうになかったからな。もちろん、それだけが動機じゃないぞ、念のため」
「うん……わかってる」
赤面したまま、ウィルはうなずいた。
(何か……訊かないほうがよかったかな)
レオより一億倍かわいいと言われて、気持ち悪がるどころか、実はかなり嬉しく思ってしまったとか。
友達以上に好きになったから、MACを凍結しようと思ったと知らされて、自分でも説明のつかない、妙な幸福感を覚えてしまったとか。
結局、この二つの質問をしてウィルが思い知らされたのは、もう男同士だということは、エドの思いを拒む理由にはならなくなってしまっているという現実だった。
「訊きたかったことはそれだけか?」
そう確認されて、ウィルは現実に引き戻された。
「うん、そう……突然、変なこと訊いてごめん」
「いや、俺はちっとも変なことだとは思わなかったよ。むしろ、気にして当然のことだろ。ただ、何の参考にするつもりなのか、不思議には思ったけどな」
からかうようにエドに笑われて、いたたまれなくなったウィルは、膝の上のレオを抱き上げて立ち上がった。
「ごちそうさま。いつものことだけど、とってもうまかった。おやすみ」
「おい、まだデザートとコーヒーが残ってるぞ」
今までだらしなく椅子に座っていたエドが、驚いたように身を起こす。
「今日はもういらない。デザートは明日の朝食べるから」
口早に答えると、ウィルはレオを抱きしめたまま、小走りに食堂を出た。
そのまま、しばらく走りつづけて、やがて足を止めた。
(これから、食事のたびに、こんな思いをするのか)
ウィルは憂鬱になって溜め息をついたが、その気になれば、エドと顔を合わせるのは、朝・昼・夕の三度だけで済ませられる。
(でも、それって寂しい……)
そう思いかけてウィルは赤くなり、腕の中のレオをさらに強く抱きしめた。
それでも、レオは暴れなかった。今日の午後、ウィルがブリッジから自室に戻ってきて以降、レオはたぶん宇宙一忍耐強いキツネネコになっていた。
「レオ……ちょっと寄り道していってもいいかな?」
もちろん、レオがウィルから逃げ出そうとするはずもなく、肯定なのか嘆息なのか、一声だけ小さくキューと鳴いた。
* * *
食堂を出ていくウィルの後ろ姿を、エドは唖然として見送っていた。が。
「逃げられたぞ」
空中に向かって、苛立ったようにエドは言った。
【ああ、逃げられたな。どうやら俺は、俺が思ってた以上に、ウィルに好かれていたらしい】
今度は、怪訝そうに眉をひそめる。
「なぜそうなる?」
【俺は約束どおり、友達のままでいたのに、あいつのほうから、わざわざあの話題を蒸し返してきたからさ。その気がないなら、俺の告白自体、なかったことにしちまえばいいだけだろうが。それより俺は、ウィルがいつレオを解放するかとずっとひやひやしてたね。ウィルに抱かれてさえいなかったら、あいつは確実に俺に襲いかかってきてたはずだ。きっと今頃は、今日の午後に昼寝をしちまったことを、一生の不覚と後悔してるだろうよ】
「何を馬鹿な。相手はただのキツネネコだぞ。ウィルとの話の内容がわかるはずがない」
【甘いな、MAC。他のキツネネコは知らないが、あいつはちゃんと全部わかってる。わかった上で、今はウィルのぬいぐるみでいたほうがいいと判断して、あんなにおとなしくしてたのさ】
「それはおまえの邪推だと思うが。とにかく、これからどうする気だ。ウィルに避けられては元も子もないぞ」
【避けるったって、同じ軍艦の中だ。限度ってもんがあるだろ】
エドは自分とウィルの分のトレーを回収すると、洗い物をするため厨房に入った。
食器洗浄機もあるのだが、二人分の食器を洗うにはあまりにも大きすぎるので、エドもウィルもいつも食器を手洗いしている。
【それに、あれだけ俺が念を押したんだ、最悪、朝・昼・夕の三回はここで会える。ところで、そのウィルは今どこにいる? 今日はまっすぐ部屋に帰ると思ってたんだが、監視カメラに映ってない】
「もしかしたら、エデンに行ったのかもしれない。一人きりになったあと、時々、エデンで夜を明かしていたことがあった。あそこはただでさえ監視カメラの数が少ない上、木が植えられているので、昼間でもわかりにくい」
【そうだった。だから俺が直接様子を見にいってたんだった。でも、エデンに行くなら、必ず通るはずの通路の監視カメラにも映ってない。……おや。レオが通路を全力疾走しているぞ。あいつが走ってる姿なんて初めて見た……】
エドは食器を洗う手を止めると、おざなりにタオルで拭い、厨房を飛び出した。
【MAC、さっきウィルが食堂を出ていってから、この艦内で作動した自動ドアがあったか?】
「……ない。少なくとも、私の支配圏内では一箇所もない」
【ということは、当然エデンにも行ってないし、自動ドアがある場所にも行ってないってことだな。……MAC、監視カメラでも盗撮カメラでも何でも使って、大至急、ウィルを捜し出してくれ。閉鎖した区域も含めて、艦内全部だ。それと、集音マイクでどんな小さな物音も拾い集めて、何の音か分析してくれ。その間に俺はレオを回収しにいく】
「ウィルの身に何かあったというのか?」
【まだわからん。だが、レオが単独で通路を疾走してるってこと自体、すでにおかしい。二十四時間体制でストーカーしてたあんたなら知ってるだろ。この艦内でレオがウィルのそばにいないのは、エデンにいるときくらいだ。通路に一匹だけでいたことなんて、今まで一度だってなかった。……どうだ? 見つかったか?】
「駄目だ、見つからん。音のほうも、それらしいものは拾えていない」
【じゃあ、ウィルが最後に監視カメラに映った場所と時間は?】
「E―二五七。十八時三十八分。今から十分ほど前だ」
【十分? たった十分で行方不明かよ】
レオがどの通路を走っているかは、MACに確認するまでもなくわかっていた。エドは立ち止まると、自分の前方から駆けてくるレオの到着を待った。
レオはエドのきっちり一メートル手前で急停止し、上目使いで彼を睨みつけたが、威嚇も攻撃もしてこなかった。
「俺に威嚇しないってことは、おまえが捜してたのはウィルじゃなくて、やっぱり俺なんだな?」
返事のかわりに、レオはふさふさとした尻尾を左右に振った。
【E―二五七っていうと、最後尾に近いな。あの先は確かにあんたの支配圏外だ。監視カメラも集音マイクも設置されてない。――くそ、今までカメラとマイクに頼りすぎてたな。今度からあいつに発信器つけとくか。MAC、あの付近の詳細な図面を見せてくれ】
「おまえはウィルのために俺を呼びにきたんだろ? なら、今すぐそこに案内してくれ。天国だろうが地獄だろうが、どこにでも行ってやる」
レオはエドの言葉を聞き終えたと同時に回れ右をすると、自分が元来た方向へと走り出した。
レオに一足早く夕食を与えてからも、食堂に行くか行かないかで迷いつづけてウィルだったが、どうしてもエドとの約束を破る気にはなれず、今日は両腕でレオを抱えこみ、何とかいつもの時間どおりに食堂内へと駆けこんだ。
エドはもちろん厨房にいて、ウィルが来たのに気がつくと、「よう」と気軽に挨拶をしてきた。
確かに、ウィルが望むなら、これからも友達のままでいると言っていた。しかし、告白前と態度があまりにも変わらなすぎる。
やはり、あの告白はエドの冗談だったのではないか。それどころか、自分の白昼夢だったのではないか。実際、そんな白昼夢を見ていたのだとしたら、それはそれで問題だが、ウィルはそう疑わずにはいられなかった。
今日の夕食は、しいて言うなら、中華風イタリアンだった。昼食の残りを再利用したらしい。
気軽に食材を仕入れることができない宇宙の旅では、食べ残しも立派な食料だ。それに、残飯処理料理といえども、ウィルが作るよりはるかにうまい。
エドはいつものとおり、ウィルの向かいの席に座った。だが、今日はそれだけで息苦しく感じてしまう。
「エド……」
勇気を出して名前を呼ぶと、エドはスプーンをくわえたまま、「ん?」とウィルを見た。
「その……あくまでも、参考として訊きたいことがあるんだけど……いい?」
「何だよ、そんな改まって。いいよ、何だ?」
呆れたようにエドが笑う。ウィルは自分の精神安定剤であるレオを、膝の上で抱きしめなおした。
「訊きたいこと、二つあるんだ」
「二つ? 何だ?」
「一つ。俺のどこを好きになったのか。二つ。いつから恋人にしたいと思ってたのか」
言ってしまってから、急に恥ずかしさがこみあげてきて、ウィルは自分を落ち着かせるために何度もレオを撫でた。
ウィルの変調に気づいているのか、いくら彼にしつこく抱かれても触られても、レオは抗おうとしない。ウィルのために、今は生きたぬいぐるみに徹することにしたようだ。
一方、エドは一瞬目を見張ったが、すぐに「なるほどね」とにやにやした。
「じゃあ、前から順番に答えていくか。一つめは……そうだな、顔と性格が、レオより一億倍かわいいとこかな」
あっけにとられたウィルは、恥ずかしさを忘れてエドに抗議した。
「なんで比較対象がレオなんだよ?」
「レオじゃなくて人間の女とだったら、一京倍差になるぞ」
「そんな位、初めて聞いた……」
「あと、裏表がないとことか、嘘がつけないとことか、クッキー作りだけはうまいとことか……まあ、いちいち挙げていったらきりがないが、とにかく、おまえと一緒にいるとほっとする。だからレオもそうやって、おまえのそばから離れようとしないんだと思うぜ」
褒められているのか、遠回しに馬鹿にされているのか。とりあえず、エドが自分のことをどう見ているのかはよくわかった。
「これで一つめは納得したか?」
「多少引っかかったとこもあったけど、一応」
「それじゃあ、今度は二つめか。こいつは答えるのが難しいな。いつ思い立ったかなんて、記録につけたりしてないから」
「だったら、いつから俺のこと好きになった? その……友達以上に」
「さあ……いつからだろうな。少なくとも、MACを凍結しようと思ったときには、もう好きになってたんだろうな」
エドは気恥ずかしそうに笑って、スプーンを指揮棒のように振った。
「MACがいるかぎり、こんな会話もできそうになかったからな。もちろん、それだけが動機じゃないぞ、念のため」
「うん……わかってる」
赤面したまま、ウィルはうなずいた。
(何か……訊かないほうがよかったかな)
レオより一億倍かわいいと言われて、気持ち悪がるどころか、実はかなり嬉しく思ってしまったとか。
友達以上に好きになったから、MACを凍結しようと思ったと知らされて、自分でも説明のつかない、妙な幸福感を覚えてしまったとか。
結局、この二つの質問をしてウィルが思い知らされたのは、もう男同士だということは、エドの思いを拒む理由にはならなくなってしまっているという現実だった。
「訊きたかったことはそれだけか?」
そう確認されて、ウィルは現実に引き戻された。
「うん、そう……突然、変なこと訊いてごめん」
「いや、俺はちっとも変なことだとは思わなかったよ。むしろ、気にして当然のことだろ。ただ、何の参考にするつもりなのか、不思議には思ったけどな」
からかうようにエドに笑われて、いたたまれなくなったウィルは、膝の上のレオを抱き上げて立ち上がった。
「ごちそうさま。いつものことだけど、とってもうまかった。おやすみ」
「おい、まだデザートとコーヒーが残ってるぞ」
今までだらしなく椅子に座っていたエドが、驚いたように身を起こす。
「今日はもういらない。デザートは明日の朝食べるから」
口早に答えると、ウィルはレオを抱きしめたまま、小走りに食堂を出た。
そのまま、しばらく走りつづけて、やがて足を止めた。
(これから、食事のたびに、こんな思いをするのか)
ウィルは憂鬱になって溜め息をついたが、その気になれば、エドと顔を合わせるのは、朝・昼・夕の三度だけで済ませられる。
(でも、それって寂しい……)
そう思いかけてウィルは赤くなり、腕の中のレオをさらに強く抱きしめた。
それでも、レオは暴れなかった。今日の午後、ウィルがブリッジから自室に戻ってきて以降、レオはたぶん宇宙一忍耐強いキツネネコになっていた。
「レオ……ちょっと寄り道していってもいいかな?」
もちろん、レオがウィルから逃げ出そうとするはずもなく、肯定なのか嘆息なのか、一声だけ小さくキューと鳴いた。
* * *
食堂を出ていくウィルの後ろ姿を、エドは唖然として見送っていた。が。
「逃げられたぞ」
空中に向かって、苛立ったようにエドは言った。
【ああ、逃げられたな。どうやら俺は、俺が思ってた以上に、ウィルに好かれていたらしい】
今度は、怪訝そうに眉をひそめる。
「なぜそうなる?」
【俺は約束どおり、友達のままでいたのに、あいつのほうから、わざわざあの話題を蒸し返してきたからさ。その気がないなら、俺の告白自体、なかったことにしちまえばいいだけだろうが。それより俺は、ウィルがいつレオを解放するかとずっとひやひやしてたね。ウィルに抱かれてさえいなかったら、あいつは確実に俺に襲いかかってきてたはずだ。きっと今頃は、今日の午後に昼寝をしちまったことを、一生の不覚と後悔してるだろうよ】
「何を馬鹿な。相手はただのキツネネコだぞ。ウィルとの話の内容がわかるはずがない」
【甘いな、MAC。他のキツネネコは知らないが、あいつはちゃんと全部わかってる。わかった上で、今はウィルのぬいぐるみでいたほうがいいと判断して、あんなにおとなしくしてたのさ】
「それはおまえの邪推だと思うが。とにかく、これからどうする気だ。ウィルに避けられては元も子もないぞ」
【避けるったって、同じ軍艦の中だ。限度ってもんがあるだろ】
エドは自分とウィルの分のトレーを回収すると、洗い物をするため厨房に入った。
食器洗浄機もあるのだが、二人分の食器を洗うにはあまりにも大きすぎるので、エドもウィルもいつも食器を手洗いしている。
【それに、あれだけ俺が念を押したんだ、最悪、朝・昼・夕の三回はここで会える。ところで、そのウィルは今どこにいる? 今日はまっすぐ部屋に帰ると思ってたんだが、監視カメラに映ってない】
「もしかしたら、エデンに行ったのかもしれない。一人きりになったあと、時々、エデンで夜を明かしていたことがあった。あそこはただでさえ監視カメラの数が少ない上、木が植えられているので、昼間でもわかりにくい」
【そうだった。だから俺が直接様子を見にいってたんだった。でも、エデンに行くなら、必ず通るはずの通路の監視カメラにも映ってない。……おや。レオが通路を全力疾走しているぞ。あいつが走ってる姿なんて初めて見た……】
エドは食器を洗う手を止めると、おざなりにタオルで拭い、厨房を飛び出した。
【MAC、さっきウィルが食堂を出ていってから、この艦内で作動した自動ドアがあったか?】
「……ない。少なくとも、私の支配圏内では一箇所もない」
【ということは、当然エデンにも行ってないし、自動ドアがある場所にも行ってないってことだな。……MAC、監視カメラでも盗撮カメラでも何でも使って、大至急、ウィルを捜し出してくれ。閉鎖した区域も含めて、艦内全部だ。それと、集音マイクでどんな小さな物音も拾い集めて、何の音か分析してくれ。その間に俺はレオを回収しにいく】
「ウィルの身に何かあったというのか?」
【まだわからん。だが、レオが単独で通路を疾走してるってこと自体、すでにおかしい。二十四時間体制でストーカーしてたあんたなら知ってるだろ。この艦内でレオがウィルのそばにいないのは、エデンにいるときくらいだ。通路に一匹だけでいたことなんて、今まで一度だってなかった。……どうだ? 見つかったか?】
「駄目だ、見つからん。音のほうも、それらしいものは拾えていない」
【じゃあ、ウィルが最後に監視カメラに映った場所と時間は?】
「E―二五七。十八時三十八分。今から十分ほど前だ」
【十分? たった十分で行方不明かよ】
レオがどの通路を走っているかは、MACに確認するまでもなくわかっていた。エドは立ち止まると、自分の前方から駆けてくるレオの到着を待った。
レオはエドのきっちり一メートル手前で急停止し、上目使いで彼を睨みつけたが、威嚇も攻撃もしてこなかった。
「俺に威嚇しないってことは、おまえが捜してたのはウィルじゃなくて、やっぱり俺なんだな?」
返事のかわりに、レオはふさふさとした尻尾を左右に振った。
【E―二五七っていうと、最後尾に近いな。あの先は確かにあんたの支配圏外だ。監視カメラも集音マイクも設置されてない。――くそ、今までカメラとマイクに頼りすぎてたな。今度からあいつに発信器つけとくか。MAC、あの付近の詳細な図面を見せてくれ】
「おまえはウィルのために俺を呼びにきたんだろ? なら、今すぐそこに案内してくれ。天国だろうが地獄だろうが、どこにでも行ってやる」
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