【完結】悪魔の方舟【R18】

有喜多亜里

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悪魔の恋人

2 エデン

 いつもなら、朝食後のウィルは、通称〝エデン〟と呼ばれていた小さな庭園に行き、そこの手入れをしている。
 しかし、今朝はその中になかなか足を踏み入れることができなかった。

(昨日……いや、もう今日だったけど、ここでしたんだよな……)

 エデンの中央にある大きな常緑樹――通称〝生命の木〟の下で、エドとキスからセックスまでフルコースでしてしまった。
 男同士のセックスは、ウィルの想像を超えていた。相手がエドだったからだろうが、あんなに強烈に気持ちのいいものだとは思わなかった。
 後始末は全部エドがしてくれた。赤ん坊みたいで恥ずかしかったが、あまりの快楽に腰が抜けてしまっていたので、エドにまかせるしかなかった。
 エドはずいぶんウィルの体を気遣ってくれたが、正直、あの場所の痛みよりも、今までしたことがない体勢のほうがきつかった。朝起きたら筋肉痛になっていたくらいに。

(でも、行かないわけにもいかないし)

 ウィルは覚悟を決めると、エデンの自動ドアを開けた。

 * * *

 ウィルの覚悟は、わずか一分ほどで潰えた。

(駄目だ。今日は全然やる気がしない)

 体もだるい。ウィルは例の〝生命の木〟の下で、だらしなく横になった。
 それに気づいたレオが、ウィルのそばに戻ってきて、彼に寄り添うように寝転がった。

「レオ……おまえ、ほんとに付き合いいいよなあ……」

 ウィルは苦笑いして、レオの小さな体を撫でた。
 もし、自分のこの怠惰の原因がエドだと知ったら、この賢いキツネネコはエドにどんな報復をするだろうか。

(でも、今朝はそのエドから餌もらってたんだよな。まだ眠くて、エドに何言われたかよく覚えてないんだけど)

 ふと思い出して、ウィルはようやくある事実に気がついた。

(個室には原則本人しか入れないはずなのに……エド、どうやって俺の部屋に入ったんだろ?)

 コンピュータにも詳しい男だから、他人の部屋にも簡単に入ることができるのだろうか。

(油断ならないな……あ、日誌! 勝手に見たりはしないと思うけど、今度から引き出しの中に隠しておかなくちゃ)

 今日もエデンの中は快晴だ。木漏れ日の下で、ウィルは眠気を催した。

(そういえば、昨日のレオはよく寝てたなあ。今日は俺が眠いや)

 ウィルはレオを懐に抱いたまま、真夜中にエドと愛しあった場所で、今は睡魔に身を委ねた。

 * * *

 ウィルが目覚めたとき、体には駱駝色をした毛布が掛かっていて、その上でレオが丸くなっていた。

(俺の部屋……?)

 まだ寝ぼけたまま周囲を見回したウィルは、自分のすぐ近くにある大木を見て、ここがエデンであることを思い出し、あわてて腕時計を見た。
 ――十六時十二分。

(え、嘘、もう夕方? っていうか、今日は俺が食事当番だったのに!)

 一気に眠気が覚めて跳ね起きたが、そのときになって、毛布のそばに保存容器と保温機能付きの水筒が置かれているのに気がついた。
 保存容器の中身はサンドイッチで、蓋には付箋紙が貼りつけられていた。

 ――集合時間二十一時に変更。今のうちにしっかり寝ておけ。E

(エド、ここに来たんだ)

 たぶん、昼になってもウィルが食堂に来ないので、心配になってここまで見にきてくれたのだろう。だが、それにも気づかないほど熟睡していた自分を起こさずに、毛布を掛けて軽食を置いていってくれた。

(うっ……エド、やっぱり優しい)

 残されたメモは不穏な空気を漂わせているが、毛布もサンドイッチもウィルの心を鷲づかみである。

(でも、今これ食べたら、夕食食べられなくなるな。……ま、いいか。俺だけ食べなきゃいいんだし)

 水筒の中身は紅茶だった。ウィルは〝恋人〟の心遣いに感謝しながら、遅すぎる昼食を済ませた。
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