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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)
03 初顔合わせの後・元マクスウェル大佐隊(ヴァッサゴ視点)
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書類上、前パラディン大佐隊はすでにコールタン大佐隊に所属していることになっている。
だが、朝になっても、十一班と十二班には、コールタンからの連絡はなかった(他班にはあったことは、ザボエスが電話で確認済み)。
エリゴールは何も言っていなかったが――ヴァッサゴとザボエスが十一班第一号待機室に入室したのを見計らったように第一号から戻ってきた――すでにパラディンとコールタンとの間で転属の話はついているのではないか。
薄々そう思いつつも、ヴァッサゴたちは予定どおり朝一で総務部に転属願を提出した。
なお、十一班はロノウェ、十二班はザボエスが代表して提出した。しかし、二人が乗った移動車を総務部まで運転させられたのはヴァッサゴである。
セイルの件以降、転属願には嫌な思いばかりさせられてきたが、今回に限っては、ある種の爽快感があった。
転属希望理由には、全員、パラディンを護衛するためと書いたのだ。
実際にそう指示したのはレラージュとザボエスだが嘘ではない。エリゴールは苦笑いしながら自分の分の転属願(と委任状)を書いた後、書類上はもうコールタンのものになっているパラディンの執務室に行き、そのまま元ウェーバー大佐隊との初顔合わせに同行した。
そして夕刻、十一班第一号待機室に、疲れた顔で戻ってきたのだった。
「おう、エリゴール。元ウェーバー大佐隊はどうだった?」
いつもの席から、からかうようにロノウェが訊ねると、エリゴールは一瞬考えてから、ぼそぼそと答えた。
「アルスターのせいでおかしくなってた」
「何?」
ロノウェだけでなく、ヴァッサゴもザボエスも驚いて問い返したが、エリゴールは多少投げやりに言葉を続けた。
「まあ、おかげで大佐はやりやすそうだ。……外面よけりゃ腹黒でもいいらしい」
――なるほど。そういう意味でか。
ヴァッサゴたちは安堵したが、またしてもロノウェが口を滑らせた。
「なら、おまえもやりやすいな」
「おまえの趣味、匿名掲示板に書きこんでやろうか?」
「悪かった。本当に俺が悪かった」
「班長たちのそのやりとり。ショートコントのネタですか?」
ロノウェの隣席にいたレラージュが、さすがに呆れたように眉をひそめる。
「単にロノウェに学習能力がねえだけだろ」
近くのテーブルに腕組みをして座っていたザボエスが、にやにやと茶々を入れてくる。
それが面白くなかったのか、レラージュは軽くサボエスを睨みつけた。
「ネタを覚える記憶力はありますよ」
「確かに学習能力はねえがネタじゃねえ」
うんざりしたようにロノウェが否定する。それを聞いてヴァッサゴは思わず呟いた。
「学習能力がないことは認めるのか……相変わらず潔いな」
「ところで、何で十二班がここにいるんだ?」
まだ座らずに立っていたエリゴールが、両腕を組んでヴァッサゴたちを睥睨する。
十一班員たちがそうされていたら間違いなく震え上がっていただろうが、ザボエスはまったく動じず、しれっと返した。
「レラージュに嫌味言われながらレラージュの淹れたコーヒー飲みたかったからだよ」
「変態ですね」
間髪を入れず、レラージュが冷然と評する。ヴァッサゴはあわてて反論した。
「俺は違うからな! 嫌味は言われたくないからな!」
そんな一連のやりとりを、エリゴールは無表情で眺めていたが。
「……ザボエスは元ウェーバー大佐隊と気が合うかもしれねえな」
エリゴールの独り言のような呟きに、一転してロノウェが顔色を変えた。
「え? そういう意味でおかしいのか? 大佐、大丈夫か?」
だが、エリゴールは鼻で笑って肩をすくめた。
「大佐なら大丈夫だろ。俺もできるときは護衛する」
「いや、おまえも危ないんじゃ……」
「昔のうちと比べたら幼稚園だ」
「幼稚園……」
ヴァッサゴはあっけにとられたが、ザボエスは訳知り顔でうなずいた。
「その一言だけで、今の元ウェーバー大佐隊の状態がよくわかる」
「でも、レラージュは一人で外は出歩くな。大佐じゃなかったら、たぶんあいつらも遠慮はしねえ」
真顔で忠告したエリゴールに、同じく真顔で応えたのはレラージュではなくロノウェだった。
「今も歩かせてねえが、わかった。強面なの、必ず二、三人つけておく」
ヴァッサゴとザボエスは、ロノウェを見て感嘆した。
「〝強面なの〟ってところが馬鹿じゃない」
「〝二、三人〟ってところも馬鹿じゃねえ」
すかさず、レラージュが口を挟む。
「うちの班長、そういう方面では馬鹿ではないので。そういう方面では」
「大事なことみてえに二度言うな」
ロノウェが不満の声を上げたが、それはもちろんレラージュに無視された。
「しかし、ダーナ大佐隊、パラディン大佐隊に続き、あっちでも予備ドック生活か。唯一の救いは、上官がパラディン大佐のままだってことだな」
ヴァッサゴがそうぼやくと、エリゴールは自分の顎に手を添えて、何事か思案しはじめた。
「……元ウェーバー大佐隊も、出来の悪い奴は切り捨ててやるか……余剰人員は二十隻分あるしな……」
おそらく九割以上本気だ。ロノウェたちは半笑いで聞き流したが、ヴァッサゴは真摯に言った。
「エリゴール……ヴァラクはおまえのそういうとこを嫌ってたが、俺は一種の才能だと思うぞ……」
だが、朝になっても、十一班と十二班には、コールタンからの連絡はなかった(他班にはあったことは、ザボエスが電話で確認済み)。
エリゴールは何も言っていなかったが――ヴァッサゴとザボエスが十一班第一号待機室に入室したのを見計らったように第一号から戻ってきた――すでにパラディンとコールタンとの間で転属の話はついているのではないか。
薄々そう思いつつも、ヴァッサゴたちは予定どおり朝一で総務部に転属願を提出した。
なお、十一班はロノウェ、十二班はザボエスが代表して提出した。しかし、二人が乗った移動車を総務部まで運転させられたのはヴァッサゴである。
セイルの件以降、転属願には嫌な思いばかりさせられてきたが、今回に限っては、ある種の爽快感があった。
転属希望理由には、全員、パラディンを護衛するためと書いたのだ。
実際にそう指示したのはレラージュとザボエスだが嘘ではない。エリゴールは苦笑いしながら自分の分の転属願(と委任状)を書いた後、書類上はもうコールタンのものになっているパラディンの執務室に行き、そのまま元ウェーバー大佐隊との初顔合わせに同行した。
そして夕刻、十一班第一号待機室に、疲れた顔で戻ってきたのだった。
「おう、エリゴール。元ウェーバー大佐隊はどうだった?」
いつもの席から、からかうようにロノウェが訊ねると、エリゴールは一瞬考えてから、ぼそぼそと答えた。
「アルスターのせいでおかしくなってた」
「何?」
ロノウェだけでなく、ヴァッサゴもザボエスも驚いて問い返したが、エリゴールは多少投げやりに言葉を続けた。
「まあ、おかげで大佐はやりやすそうだ。……外面よけりゃ腹黒でもいいらしい」
――なるほど。そういう意味でか。
ヴァッサゴたちは安堵したが、またしてもロノウェが口を滑らせた。
「なら、おまえもやりやすいな」
「おまえの趣味、匿名掲示板に書きこんでやろうか?」
「悪かった。本当に俺が悪かった」
「班長たちのそのやりとり。ショートコントのネタですか?」
ロノウェの隣席にいたレラージュが、さすがに呆れたように眉をひそめる。
「単にロノウェに学習能力がねえだけだろ」
近くのテーブルに腕組みをして座っていたザボエスが、にやにやと茶々を入れてくる。
それが面白くなかったのか、レラージュは軽くサボエスを睨みつけた。
「ネタを覚える記憶力はありますよ」
「確かに学習能力はねえがネタじゃねえ」
うんざりしたようにロノウェが否定する。それを聞いてヴァッサゴは思わず呟いた。
「学習能力がないことは認めるのか……相変わらず潔いな」
「ところで、何で十二班がここにいるんだ?」
まだ座らずに立っていたエリゴールが、両腕を組んでヴァッサゴたちを睥睨する。
十一班員たちがそうされていたら間違いなく震え上がっていただろうが、ザボエスはまったく動じず、しれっと返した。
「レラージュに嫌味言われながらレラージュの淹れたコーヒー飲みたかったからだよ」
「変態ですね」
間髪を入れず、レラージュが冷然と評する。ヴァッサゴはあわてて反論した。
「俺は違うからな! 嫌味は言われたくないからな!」
そんな一連のやりとりを、エリゴールは無表情で眺めていたが。
「……ザボエスは元ウェーバー大佐隊と気が合うかもしれねえな」
エリゴールの独り言のような呟きに、一転してロノウェが顔色を変えた。
「え? そういう意味でおかしいのか? 大佐、大丈夫か?」
だが、エリゴールは鼻で笑って肩をすくめた。
「大佐なら大丈夫だろ。俺もできるときは護衛する」
「いや、おまえも危ないんじゃ……」
「昔のうちと比べたら幼稚園だ」
「幼稚園……」
ヴァッサゴはあっけにとられたが、ザボエスは訳知り顔でうなずいた。
「その一言だけで、今の元ウェーバー大佐隊の状態がよくわかる」
「でも、レラージュは一人で外は出歩くな。大佐じゃなかったら、たぶんあいつらも遠慮はしねえ」
真顔で忠告したエリゴールに、同じく真顔で応えたのはレラージュではなくロノウェだった。
「今も歩かせてねえが、わかった。強面なの、必ず二、三人つけておく」
ヴァッサゴとザボエスは、ロノウェを見て感嘆した。
「〝強面なの〟ってところが馬鹿じゃない」
「〝二、三人〟ってところも馬鹿じゃねえ」
すかさず、レラージュが口を挟む。
「うちの班長、そういう方面では馬鹿ではないので。そういう方面では」
「大事なことみてえに二度言うな」
ロノウェが不満の声を上げたが、それはもちろんレラージュに無視された。
「しかし、ダーナ大佐隊、パラディン大佐隊に続き、あっちでも予備ドック生活か。唯一の救いは、上官がパラディン大佐のままだってことだな」
ヴァッサゴがそうぼやくと、エリゴールは自分の顎に手を添えて、何事か思案しはじめた。
「……元ウェーバー大佐隊も、出来の悪い奴は切り捨ててやるか……余剰人員は二十隻分あるしな……」
おそらく九割以上本気だ。ロノウェたちは半笑いで聞き流したが、ヴァッサゴは真摯に言った。
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