寂しいからそばにいて(仮)【『無冠の皇帝』スピンオフ】

有喜多亜里

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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

108【交換ついでに合同演習編13】ジェラス大佐

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【パラディン大佐隊・執務室】

モルトヴァン
「大佐、エリゴール中佐から電話です。今から演習の件でコールタン大佐の執務室に行くそうです」

パラディン
「え、また? とにかく出る!」

モルトヴァン
「はいッ!」

パラディン
「エリゴール中佐!」

エリゴール
『あ、大佐殿。お忙しいところ恐れ入ります。演習の件で、早急に打ち合わせしなければならないことができましたので、今からまたコールタン大佐殿の執務室へ行ってまいります』

パラディン
「嘘だろう! 打ち合わせは単なる口実で、本当の目的は、私のさっきの返信をコールタン大佐に渡すことだろう!」

エリゴール
『いえ、本当に打ち合わせが目的です。ただ、せっかくですから、大佐殿の返信もコールタン大佐殿にお渡ししますが』

パラディン
「そんなもの! 誰か人に頼んで届けさせればいいだろう! コールタン大佐との打ち合わせもメールで充分だ!」

エリゴール
『……いえ、自分が引き受けたことですし、メールでは差し障りがありますので。それでは失礼いたします』

パラディン
「あ、エリゴール中佐! ……チッ、切られた!」

モルトヴァン
「大佐……エリゴール中佐を代理にしたのはご自分でしょうに……」

パラディン
「仕方ないだろう! エリゴール中佐しか適任者がいなかったんだ! でも、勝手に会われるのは嫌だ!」

モルトヴァン
「勝手にじゃないでしょう。ちゃんと事前に電話を入れてきたでしょう」

パラディン
「何でここに来て直接私に断ってから行かない!?」

モルトヴァン
「そうやって大佐が怒るからでしょう。たぶん」

パラディン
「くそ! どうしたら妨害できるんだ!」

モルトヴァン
「いや、どうして妨害しようとするんですか? 演習の件でって言ってるじゃないですか」

パラディン
「演習は三日後だ! 別に明日だっていいだろう! きっと、エリゴール中佐のことだから、今日中に私の返信をコールタン大佐に渡そうと思って……キーッ、私のエリゴール中佐にそこまでさせるコールタン大佐が憎い!」

モルトヴァン
「〝キーッ〟って本当に言うんだ……じゃなくて、ついに所有格までつけはじめてしまった!」

パラディン
「エリゴール中佐のことだから、コールタン大佐のところにも事前に電話は入れているはず。……モルトヴァン! コールタン大佐の副官に電話して、エリゴール中佐との打ち合わせの約束が本当に入っているかどうか確認しろ! あると言ったら、エリゴール中佐にすぐに戻って私の執務室に出頭するよう伝言! ないと言ったら適当にごまかせ!」

モルトヴァン
「適当にごまかせって…………駄目です、大佐。出ません」

パラディン
「出ない? じゃあ、携帯のほうにかけてみろ」

モルトヴァン
「はい。…………駄目です。電源を切っているんでしょうか、つながりません」

パラディン
「今のは副官のだったな。じゃあ、コールタン大佐の携帯だ」

モルトヴァン
「ええっ!?」

パラディン
「仕事用のもプライベート用のもわかるだろう」

モルトヴァン
「それはわかりますが……私からはちょっと……大佐、ご自分でお願いします」

パラディン
「しょうがないな……もう二度とかけたくなかったのに…………つながらない?」

モルトヴァン
「コールタン大佐のもですか? じゃあ、何か会議でもしているんでしょうか?」

パラディン
「会議? あの男がか? くそ、仕方がない、今度はプライベートのほうにかけてみるか…………出ない?」

モルトヴァン
「プラベートのほうは電源は入っているんですね」

パラディン
「私を無視しているのか、どこかに放置しているのか……どっちだ?」

モルトヴァン
「無視は絶対にないと思います」

パラディン
「……おまえは引き続き、執務室と副官の携帯にかけつづけろ。私はコールタン大佐に警告メールを送信する」

モルトヴァン
「警告メール!?」

パラディン
「〝もう二度とエリゴール中佐を使って手紙など寄こしてくるな。手紙を送るなら自宅にしろ。ただし、封は切らずに即燃やす〟」

モルトヴァン
「ひいっ! 手紙すらもう受けつけない気だっ!」

パラディン
「…………相変わらず出ないな。こっちはもう諦めるか」

モルトヴァン
「……大佐、執務室、つながりました! ……あ、いえ、すみません、モルトヴァンです、お久しぶりです……」

 ***

【コールタン大佐隊・執務室(本物)】

コールタン
「おまえが大至急、自分の執務室に戻れと言った理由がよくわかったぜ……」

エリゴール
「勘のいいパラディン大佐殿なら、何度かかけてつながらなければ、今度は元パラディン大佐隊の執務室にかけさせます。そこで大佐殿の副官殿が電話に出たら、非常にまずいことになるでしょう」

コールタン
「ああ……非常にどころじゃねえな……」

クルタナ
「……エリゴール中佐。やはり、パラディン大佐の副官から確認の電話がありました。パラディン大佐からの伝言をそのままお伝えします。〝すぐに戻って私の執務室に出頭するように〟」

エリゴール
「出頭……」

コールタン
「悪いな、エリゴール。おまえまで巻きこんじまって……」

エリゴール
「いえ、自分はどうにでもなりますから。とりあえず、パラディン大佐殿の返信をお渡しいたします。もちろん自分は内容はまったく知りませんが、開封前に一言申し上げておきますと、パラディン大佐殿はコールタン大佐殿の手紙に何やら書きこんでそのまま封筒に入れられました」

コールタン
「……何か言ってたか?」

エリゴール
「心の準備はいいですか?」

コールタン
「準備がいるようなこと言ってたのか?」

エリゴール
「自分だったらショックです」

コールタン
「おまえがショックに思うようなこと……いいぞ、準備した。言ってくれ」

エリゴール
「『やっぱりろくなこと書いてない』」

コールタン
「…………確かにショックだ。でも、メールの内容ほどじゃない」

エリゴール
「やはり、電話に出なかったら、メールを送信してきましたか」

コールタン
「ああ……これであいつのプライベートのメアドはゲットできたが……見てくれ」

エリゴール
「自分が見てもいいんですか?」

コールタン
「ああ。ぜひおまえに見てもらいたい」

エリゴール
「……大佐殿。どうしてここまでパラディン大佐殿に嫌われたんですか?」

コールタン
「さあ……どうしてだろうなあ……今回の演習も含めて、俺はあいつのためにいろいろしてやってるつもりでいるんだけどなあ……今はやることなすこと、全部裏目に出ちまってるような……」

エリゴール
「はあ……自分もコールタン大佐殿のためになるよう行動したつもりだったんですが……演習のどさくさにまぎれてお渡ししたほうがよかったでしょうか」

コールタン
「いや、それもまずいな。おまえにこの返信を渡したら、あいつは今度はいつどんなふうに俺に渡したのか、必ず追及してくる。おまえに手紙を託した時点でこうなることは決まってたんだ。俺の完全な計算ミスだ。悪かった」

エリゴール
「いえ、自分もそこまで考えが及ばなくて申し訳ありませんでした。そのお詫びというわけではありませんが、これは我々が推測した演習二日目の『帝国』側の布陣図です。二つありますので、ご参考までに」

コールタン
「おい……こんなもの、俺に渡しちまっていいのか?」

エリゴール
「かまいません。それらはあくまで我々の推測ですから。実際にどう配置するかはコールタン大佐殿のご自由です。ただし、我々がそれをどう攻略しようと考えたかは秘密です」

コールタン
「そりゃそうだ。……そうか、護衛一人だと、こういうのも一人で決めなきゃならねえんだなあ。……パラディン、帰ってきてくれ! ダーナはいらねえ!」

エリゴール
「自分も早くパラディン大佐殿に護衛に戻っていただきたいんですが……こればかりは殿下がその気になってくれないことにはどうにも」

コールタン
「結局、アルスター大佐の限界は一五〇隻までだったな。ドレイク大佐はそこまでわかってて〝実現可能かどうかは別として〟なんて言ったのかね?」

エリゴール
「ドレイク大佐殿は、左翼よりも右翼のほうを心配されていたんじゃないんですか?」

コールタン
「と、俺も思うがね。正直、アルスター大佐があそこまで元ウェーバー大佐隊をガタガタにしちまうとは予想してなかったんじゃねえかなあ。……まったく、できねえことはできねえとドレイク大佐みたいにはっきり言ってもらいたいたかったよな。周りも元ウェーバー大佐隊も大迷惑だ」

エリゴール
「……そうですね。アルスター大佐殿に二〇〇隻は荷が勝ちすぎましたね」

コールタン
「メール一本ってやり方はともかく、パラディンを元ウェーバー大佐隊の指揮官にした殿下の判断は悔しいが正しい。指揮官が替わったとたん、元ウェーバー大佐隊は息を吹き返した。きっとこのままアルスター大佐が変わらなきゃ、殿下はアルスター大佐を〝栄転〟させるな。……決して無能な〝大佐〟じゃなかったのにな。どこで自分を見誤っちまったかな」

エリゴール
「……身につまされる話です」

コールタン
「は?」

エリゴール
「それでは、自分は失礼させていただきます。パラディン大佐殿の執務室に〝出頭〟しなければなりませんので」

コールタン
「あ、ああ……そうだな。……エリゴール、本当に悪かった」

エリゴール
「いえ。こちらこそ、お役に立てず申し訳ありませんでした」




コールタン
「か……開封するのが……こ、こええ……!」

クルタナ
「大佐……パラディン大佐に『やっぱりろくなこと書いてない』と言われるような内容って……いったい何を書かれたんですか?」

コールタン
「……これからは本当に用事のあるときしかかけないから、せめて仕事用の電話には出てくれというのが〝ろくなことじゃない〟のか?」

クルタナ
「えーと。……ノーコメントにさせてください」

コールタン
「でも、もしかしたら、これがパラディンからの最後の手紙になるかもしれないからな……あのメールよりひどい内容じゃないだろ……よし、開封するぞ!」

クルタナ
「今、必死で勇気を振りしぼっていますね……」

コールタン
「………………これだけか」

クルタナ
「パラディン大佐は……何と?」

コールタン
「……『やなこった』」

クルタナ
「え?」

コールタン
「たった一言。『やなこった』。……『やなこった』って……せめて『嫌だ』とか『出たくない』とか、もうちょっと書きようが……」

クルタナ
「そういう問題ではないと思いますが……でも、パラディン大佐がそう書きたくなった気持ちは、何となくわかるような気がします……」
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