上 下
58 / 100
第弐章:ムロトー/ナイトフィーバー/レリGO

#058:限界な(あるいは、フォカヌの王)

しおりを挟む

 第三戦。あまり意識していなかったけれど、僕らは「ベスト16」まで勝ち進んでいたわけで。あと4つ勝てば、6組優勝(=120万円)と相成る。

「準々っじゅんけっしょおおおおおおおおおっ!!」

 今回のブースは「K」。暗黙の内にやはり僕が先鋒らしく、無言でチームメイト達に送り出される。むううと思う間もなく、リングに上がるやいなや、溜めに溜めたハイテンションボイスが僕とその対戦相手を出迎えた。

「さあやるぜ!! ダメコンんんんバロゥっ!! 実況はこのオレっ桜田だっ」

 今回の実況は、黒×赤の何というかスパッツ系のスポーティな衣装で固めた、突っ立てた黒髪が特徴的な褐色肌の長身オレっ娘少女であった。僕らとは対照的に非常にテンションが高い。

「オウフ、褐色元気少女キタコレですなwww」

 対局者は想定の範囲内というか、既出感のあるメガネ長髪の肥満体だ。バンダナなのかランチョンマットかは分からないが、迷彩柄の布を鉢巻きのように締めている。なぜこうまでちょっと前の感じの奴らで溢れている? このダメ業界め。

「!!」

 と、またしてもベルの音が響き渡った。「ランダムバトル」か。何か恣意的なものを感じずにはいられないけど、まあそれ考えても無駄だよね。諦めて僕はさっさと対局シートに腰掛ける。

「おっとっとぉ、来た来た来た来たっランダムぅぅぅバロゥっ!!」

 オレ少女、桜田ちゃんは微妙にメガネに乗っかりつつも、結局は自分のノリたいようにやるようだ。そして明滅していた画面は収まり、今回のバトル形式とやらを表示させる。

「『罵倒×バロゥ』ぅぅぅぅぅっ!!」

 うん、絶対やらせだ。「バロゥ」言いたいだけor言わせたいだけでしょ。まあもう、何か、その辺の事はもはやどうでもいいですわ。

「ルール説明!! 持ち時間2分を費やして、相手をボロクソにこき下ろしてくれいっ!! 装着してもらうヘッドギアとバングルから、各々の体温・心拍数・脳波を読み取る! より『平常心』を保てた方が勝ちの激アツなバロゥ!! だぜっ!! イエアアァ!! みんなノってるかぁぁぁぁぁー!!」

 オーディエンスを煽る桜田ちゃんだが、どんどんダメから逸脱していくな!! しかし、全てを飲み込む構えの僕は、素直に座席に搭載されていたマジックテープで止めるタイプのヘッドギアらしきものを頭に巻き、両手首にも輪っか状の器具をはめて対局準備を整える。

「面白いですねえ、この罵倒とダメの融合……ワタクシ、ダメを哲学として見ている変わり者だったりしますですのでwww つまりはあのアヤ・ハツマの影響がwww ドプフォwww」

 ひとり盛り上がり始める対戦相手だが、これはよく考えたら強敵じゃないか? 何か、何を言っても応えなさそう。確固としたてめえの世界があるから揺らがないんじゃ……どうする?

しおりを挟む

処理中です...