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第弐章:ムロトー/ナイトフィーバー/レリGO
#072:虚飾な(あるいは、七転八倒起)
しおりを挟む僕らが必死こいて漕ぎ続けているこの巨大な装置……何というのかは不明だが、何故か対局開始と共に、ゆっくりと反時計周りに回転を始めていた。要るの? その要素。とそこにつっこんでいる場合ではないのはわかっているけど。
「くっ、上がらない!!」
思わずそんな叫びというか呻きが喉奥から迸り出てしまうけれど。
開始直後から、僕らチームの平均速度は未だ10kmになったり落ちたりと安定しない。脚力で圧倒的な差がある分、チーム力でカバーしないと!! と思う僕だが、そもそもチームの団結力が希薄なことこの上ない3人だよね……両隣でひいっひいっと喉を鳴らしている我がチームメンバーを視界の端で捉えながら、僕はとりあえずは相手の出方を見るしかなさそうな状況に追い込まれていることを察する。
「聞こえる? ……桂馬、GPSの信号が無い」
「無いだろうな、結構な地下だし。あっても意味ないしな」
向こうチームはとっくに規定速度に達しているというのに、DEPを撃って来ない……? 何やら余裕で会話のやり取りをしているぞ。どうして? 先手圧倒的有利でしょ?
「少年、向こうは、待ちの、姿勢だぞ? こっちから仕掛ける、チャンスじゃ、ねえか?」
アオナギはそう言いつつ早くも漕ぐスピードを緩めている。でも言ってることは確かに。
「桂馬ぁ、相手へばらせて勝つって作戦だが、一発くらい撃っておいた方がいいんじゃないか?」
向こうチームのリーダー、忠村寺がぽろりとそんなことを漏らし、その横の桂馬が渋い顔になる。リーダー……結構天然ですな。
「黙って漕いでろ」
レーゼさんも低い声でそう一喝する。なるほどねー体力勝負で潰そうという腹ですか。だったら行かないとジリ貧だ!! 珍しく僕とアオナギはアイコンタクトで意思を疎通し合うと、脚の回転を上げ始める。と、その時だった。
「いや、一回くらい行っておこうぜ。ガベッジノーツだろっ!?」
いきなりそう忠村寺が一発気合をかましたかと思うや、猛然とペダルを踏み込み始めたのであった。ええー15km以上は無駄~
「ま、待て!! お前から行って……」
どうする、と言いかけた桂馬の制止も聞かず、忠村寺の「着手」ボタンが押された事がディズプレイ上に赤いアイコンの点滅により示された。そして、
「……お、俺の名前、達磨って、へへ、そう言うんだけど、実はこれ、『ダルマ』とも読めるって、結構なんていうか、意外じゃね? っとか、そういう話」
下手ー!! あまりの出来に、相手チームの他二人も急速に脱力していくのが見て取れる。
「先手ナンバー29!! 後手っ30秒以内に着手してくださいっ!!」
実況少女リアちゃんも、今の忠村寺のDEPに、心無しか、えー、という表情を隠しきれていない。でもチャンスだ!! 12kmに達しさえすれば、相手を上回るDEPが撃てるはず!!
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