上 下
71 / 100
第弐章:ムロトー/ナイトフィーバー/レリGO

#071:窮地な(あるいは、ボディ&ブレインスペシャルⅡ)

しおりを挟む

 ついに告げられたスタート。と同時に、両チーム6名が一斉にペダルを漕ぎ始める。

「飛ばすぞ少年、相棒っ!! 長期戦に持ち込まれたらまず勝ち目はねえ!!」

 アオナギが左隣からそう告げるが、まさに僕もそれは考えていた。もらった「12km以上」というアドバンテージを活かすためにも短期決戦で決めるしかない。しかし、

「……」

 相手チームはほぼほぼ息を乱さず、いきなりトップスピードに近いところまで加速してきた。恐るべき脚力。やっぱり、ことこの漕ぎに関しては、長期だろうと短期だろうと勝負になりそうもない。

「チーム29、時速15km突破ぁっ!! 言い忘れましたけど、『着手』する際には左ハンドルにある『着手ボタン』を押してくださいね!! ただし5秒押し続けるごとに必要とされる時速が『1km』ずつ加算されますから、なるべく手短かの方がいいですよっ」

 実況のリアちゃんがそう説明してくれるが、そういうの先に言わないとよ!!

「実況っ!! 先手が、撃って、きたら、後手は何秒以内に、それを、相殺しね、えといけ、ねえ、んだっ!?」

 早くも息が上がってきているアオナギが、絶えだえにそう問いかける。相殺……そうか、一方が一手指したら、相手も一手指すのが通常ルールだ。そしてその評価差がイコール電気ショックの強さへと換算される。でも今回、規定の時速に満ちてないと、着手すらままならないわけで。もし後手がへばって着手出来なかったとしたら……?

「一手30秒未満でお願いしますっ。着手が無い場合、先手の評価ポイントがそのままボルティックへと換算されてチームの皆様に分配されますので、お気をつけを!!」

 ええー、そりゃあかんでしょうよ。僕の少ない経験上でも、「10,000ボルティック」以上受けた人は皆散っていってる……そして「30,000」以上の評点が結構出やすいってことも、僕は身をもって体験しているわけで。そんなの素で食らったら、チーム3人即飛びだ。

 ということは……ということは? 後手を引いてしまったら、何が何でも12kmに持って行って、相殺するネタを撃ち返す必要があるってことだ。しかし……これも問題のひとつだけど、相手はよほどの事がない限り規定の「15km以上」を軽く維持してくるということ。すなわち先手で様子見のDEPを撃ってみるも、後手で相手の出方を見つつ臨機応変なDEPを選んで撃ち返すも可能ってことだ。

 何たる不利。時速3km分のアドバンテージ、実は何も意味を為していなかったりして……どうする!?

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

鐘崎くんはセフレをご所望です。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:243

ボッチで引きこもりの自称スマホ心理カウンセラー

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

終末のダンジョンアカデミア

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:121

王太子さま、側室さまがご懐妊です

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:555

目隠しは赤い糸

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:14

保健委員は魔女っ子なのです

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

神城物語

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

無口な狼は魔王様の言いなりにならない

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:7

真珠の力:冒険と成長の物語

O.K
エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

狂った恋心

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

処理中です...