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Ally-15:昇天なる★ARAI(あるいは、2025年:天下○れ目の/久里浜初夏の陣)
しおりを挟む揺蕩っていた場は、いまやどこに出しても恥ずかしくないほどの混沌という名のカオスに、隅々まで余すところなく支配されていたのであった……
いちばんの女神に思えていたヒトが、自分と同じ姿をした他のふたりの片腕を極め上げつつ、さらに前かがみにさせて二つ並ばせた背中に乗って双方の極めてない方の肩にそのおみ足をそれぞれ掛け、さらに体重という名の負荷をかけていっているよ怖いよ……
仲間割れ……というよりはリコ御姉様の踏んではいけない地雷に面白半分で近づいたアオイさんが、それが自走して吸着してくる型の危険極まりないものだったという認識に及んでおらず、自らの姉(のちに聞いたところによる。一応、朱→蒼→碧の順番だそう。どうでもいいんだけど)をも巻き込み、ダブルパロスペシャルと形容したらよいか(よいか?)、逆トライアングルドリーマーと形容したらよいか(だからよいか?)、とにかく脱出不能と思われる必殺技を喰らって悶絶しているという、なまじの悪夢よりもナイトメア度が高い系の光景が、僕の網膜を可視化された刺激臭が如く苛んできている……
その僕の視界の右隅辺りで、腰が抜けたかのようなおねえ座りの天使さんも、その両隣の弟らと共に、お互いの服を握りしめてガタガタ震え怯え切っている。しかし脇のふたりは本当に使えんな……
とにかくもうここまで阿鼻叫喚になったのだから、もううやむやにして逃げるのが最上策なんじゃないかと思って、傍らのアライくんが羽織ったスタジャンの袖を引いてみるけど。
「……」
先ほどからの、何かを達観したか高僧のようにも、獲物を耽々と狙う猛禽のようにもイメージを抱かせる、その厳然たる顔貌は微動だにしない。どうしちゃったっていうの? キャパを超えてフリーズしちゃったの? と、
アライくんがおもむろに懐に左手をやる。そしてそのまま、奇妙な騎馬戦のような態勢で辺りを闊歩し始めた三ツ輪×3達に向かって、静かに、しかして迷いなく真っすぐに向かっていく……ほんとにどうしたというのだろう……
「……お前とオ前が、今度は八方に尻ヲ振ル番ダヨォォォォォォ……っ!!」
御姉様の感情の抜け落ちた機械音が響き渡る。もはや機械仕掛けの怪物と化して辺りをぐるぐる闊歩し始めたその三位一体獣の背後へと、しゅらり回り込むアライくん。
刹那★だった……
「!!」
その右手が宙で弧を描くように閃いた……と思った瞬間、その手はひと振りで、上・左下・右下と並んだ三姉妹の短いチェック柄のスカートの裾をッ!!
……寸分違わずまくり跳ね上げていたのである……ッ!!
ちょうど僕の眼前に、それはあった。あったのだけれど、大脳がそれが何であるのかを、うまく認識できないほどの非日常な像を孕んでいたわけで。
雪白色……ゥワイトゥ……ワイトァゥ……
脊髄反射のように、思わず流暢な発音にて僕の口から呟き放たれた音節は、時間が止まったかのように思えた空間に、反響しつつ波紋のように広がっていく。
咲いた……不毛の砂漠に、雪割りの花が、三輪……ッ!!
張りのある滑らかな太ももは無論曇りない白みを帯びてむっちりとそこにふるふると存在していたものの、それよりもさらに純白のッ、丸みを帯びてなお張りつめた布が、普段隠されしその谷間に……ひっそりと咲き誇っていた……ッ
ちょっ……なッ……? とか慌てて三ツ輪×3たちは各々捲れ上がった裾を後ろ手に直そうとするけれど、各々が腕を極めたり極められたりで、思うままになっていない。どころか、無理に身体をくねらせるものだから、その三つ並んだ朱音と蒼衣と碧子の逆三角形がまるでこちらを未踏の快楽園へと誘うかのように、うねうねと妖しく艶めかしく、蠢いてくるのであった……
ぐぅッ、とか、ふぁぁぁあ……のようなくぐもった呻き声や声にならない叫びが男衆から腐った響きをもって紡がれ、そしてそれら人影がバタバタと倒れ伏していく中、
「……」
その中心にいるアライくんだけは……ッ!! 極めて冷静に平常心を保ちつつ、そこに立っていた。まるで凪いだ涼風を纏っているかのように……ッ!! のみならず、懐から取り出した、画面がにゃんにゃかに割れた端末を構え、眼前で繰り広げられている、天上のハムラビ(これはもう意味わかんない)とも形容されるであろう眩い光景を、寸分たがわぬ焦点にて冷徹に動画撮影しているのであった……ッ!!
そして久方振りにそのひんまがった唇から、優位を取ったと確信したとき特有の、思わぬ真摯な言葉が放たれていく。けど、
「……伏して申し上げるッ!! 元老院の方々どのッ!! 三ツ輪のの、我が団への参入をお許したもうッ!! そしてどうかこの我ぁらがにッ!! 次なる文化祭にて『1Q85祭』ばを、開くことの許可をくださらんことをぉッ!!」
え?
いや、え? そんなこと考えてたの? ていうか何だそれ。びた一ミリたりとも聞かされていなかった僕は、またしてもアライくんとの間に流れる溝のようなものを感じてしまうのだけれど。ていうか一ミリたりとも伏してはなはぁぁぁぁい……!!
「ふざけるなッ!! 我が校の文化祭に、そんなくだらない出し物などッ!!」
アカネさんがまだ馬乗りになられたまま、必死そうに後ろを振り向きつつ怒鳴るけれど。
「……まさか女神と邪神が共存したるとんだ薄愛主義者だり、クール決め込んだ四十路お局的メンタリック女史だり、似非い上方寄りで斜に構えよったりしちょるキャラ作りめっさ御苦労さんだりの三姉妹がば、揃いも揃ぉての『白一色』っちゃば、こらぁ、全校騒然たばたるビッグニュースざばいねえ……他の奴のんと穿き間違えたりせんずりのんかいなぁ……くっく、そじゃが。その『我が校』がちょぱを飛び越えでぎ、ソーシャルネットが全域に爆散しちょばりおんもまた一興……」
絶対に敵に回してはいけない修羅が、そこには立っていた。
「あ、アホぉッ!! ここのんがいちばん包み込むようにそして柔らかくフィットするんや!! ほんでみんな体型もあんま変わらへんから、全員ここのに落ち着いた!! 『穿き間違え』? ちゃんと正面に付いてるリボンの色で誰のかは簡単に区別できるっちゅうねん、どあほがッ!!」
それでもアオイさんが必死で言い返すものの、ば、ばか蒼衣ッ!! とのハモった叱責が、他のふたりからぶつけられる。
しかし時遅く、場を取り巻く男衆達からは、ウォォォォォオンッというような時ならぬ喝采と歓喜の叫びが、薄暗い食堂の低い天井を突き破らんばかりにして、天高く打ち上がっていくのであった。
その狂騒の中、さらに途轍もなく、にちゃあ、と音が出そうな汚い笑顔を見せたアライくんが完全勝利の体で体を揺らす。
「音声ばも、勿論録ってあるがにに、くっく、映えよる映えよる……」
のちに「伝説」と語り継がれることとなる、名高き「アライ初夏の陣」の一幕でございました……(何このヒキ)。
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